今求められるグローバル人材とは?1,000名以上の経営者やグローバル企業を支援してきた森本千賀子さんインタビュー

公開日:2024年6月13日

株式会社morich代表 森本千賀子さん

転職エージェント・キャリアアドバイザーとして3万名を超える転職希望者と向き合ってきたご経歴を持ち、1,000名を超える経営者へ採用を切り口としたアドバイスを行ってきた株式会社morich代表の森本千賀子さん。グローバル企業や企業のエグゼクティブ層と仕事をしてきた森本さんだからこそ分かる、「今求められるグローバル人材」について、ニーズが高い理由や、求められるスキルについてお伺いしました。
また海外での就労や外資系企業への就職を考える上で重要となる、日本と海外のキャリア形成の考え方の違いについても教えていただきました。

これから必要とされるグローバル人材とは

グローバル人材が求められる今、国や企業はグローバル人材の育成に今まで以上に注力しています。なぜ今、グローバル人材が必要とされているのでしょうか?グローバル人材の定義や、必要なスキル、そして今、グローバル人材が必要とされている理由について、森本さんにお話を伺っていきましょう。

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なぜ、今の時代にグローバル人材が必要とされているのか?

グローバル人材への注目が高まっている背景には、労働人口の減少や少子高齢化といった国内情勢の変化と国内市場の停滞が挙げられます。

まず、1つ目に影響を受けるのは、「労働人口」です。現在日本の労働人口は年々減少を続けており、2030年には644万人の労働人口が追加で必要になると推測されています。そのため、日本人だけの採用では労働力の確保が出来ない企業が労働力確保のため外国人労働者を受け入れることが見込まれます。そうなると、英語を使った仕事をするということは、今やグローバル企業だけが直面する課題ではなく、国内企業であっても多種多様な人材が混ざり合う環境の中で仕事をしていく必要があります。そんな未来がもうそこまで来ているということなのです。

そして、次に影響を受けるもの、それは「国内消費の減少」です。より多くの消費が期待される海外に目を向ける企業や、新しいマーケットを開拓するために海外進出を行う企業がこれからますます増えてくることでしょう。

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グローバル人材の定義とは?

文部科学省では、「グローバル人材」に必要な要素を以下のように定義しています。

  • 要素I:語学力・コミュニケーション能力
  • 要素II:主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感
  • 要素III:異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー

この他、幅広い教養と深い専門性、課題発見・解決能力、チームワークと(異質な者の集団をまとめる)リーダーシップ、公共性・倫理観、メディア・リテラシー等をもった人材。(※)文部科学省:「グローバル人材の育成について」より

これらのスキルはどんな環境でも活かすことが出来る「ポータブルスキル」に含まれるもので、グローバルで活躍されている方々が共通して持っている非常に重要な要素になります。

グローバルなプロジェクトなどでは、多国籍の仲間やチームと一丸となり成果を出す必要があるため、物事を推進するための主体性・積極性、課題に立ち向かうチャレンジ精神や協調性、異なる環境でも力を発揮する柔軟性など、さまざまな要素が求められるのです。

ポータブルスキルの中でも、欠かせないのが語学力・コミュニケーション能力といえます。 特に、数ある言語の中でも、ビジネス界での活躍を目指すとなると、まず身につけるべきは英語と考えています。

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グローバル人材として活躍するために求められる語学力・コミュニケーション能力とは?

では、どういった語学力がもとめられているのでしょうか。英語を正しく理解し、英訳や和訳ができるだけでは「グローバル人材」として活躍はできません。国の文化や商慣行の違いを理解し、英語を使って交渉し、対等に取引ができる英語力とコミュニケーション能力が求められているといえると思います。

職種にもよりますが、グローバル人材として活躍したいのであれば、TOEIC L&Rのスコアが800点以上であるかどうかが目安になることが多いです。ただし、800点未満だから語学力が足りないと判断され、企業に就職できないということではありません。まずは、今持っている語学力をTOEIC L&Rなどで確認し高めていくことが大切だと思います。肌感覚ではありますが、かつては700点というスコアを保有している求職者さんは稀で、企業採用担当の目にも留まりやすかった時期がありましたが、今は750点代のスコア保有者も割と多いなという印象です。

また、多くの企業は英語力を確認する指標としてTOEIC L&Rのスコアを活用しているため、これから就職活動や転職活動をされる場合は、採用する側に明確にご自身の英語力を伝える1つの指標としてスコアを取得しておくと事も有効です。

面接や、その他の能力とのバランスもありますが、一般的には以下のスコアが指標になるかと思いますので、参考にしてみてくださいね。

  • 多くの企業がまず求めるレベル:600点程度
  • 英語を使う職種を希望する場合:700点程度
  • 外資系企業などグローバルな働き方を希望する場合:800点程度

採用面で有利になる、という点もありますが、ビジネスシーンでの実践力を磨くという点でも非常に有効なものだと言われているので、定期的に機会を設け、定期的に勉強の時間を確保するというのは実力アップの面でも有効だと思います。

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TOEIC Testsがおすすめな理由

TOEIC Testsは実践的な英語コミュニケーション能力を測定しています。実際の日常生活やビジネスシーンに即した問題内容になっているため、テストを活用して学習を進めることが、実際のビジネスシーンにおける英語力の向上に直結しています。さらに、TOEIC Testsは多くの企業や団体で活用されているので、就職や転職、昇進昇格など様々な場面で、英語力を証明するのに有効です。英語力向上の指標として活用するのに適したテストです。

多くの方のキャリアアップをサポートしてきましたが、中でも「なりたい未来」を実現した方の例を少し具体的にご紹介しましょう。

私の友人でもあるAさんは、グローバルなポジションで活躍するために以下のようなキャリアの選択を行い、現在は国内でも最高峰と言われるハイブランドのPRとして活躍しています。

転職前:広告代理店勤務

転職1:日本上陸間もない外資系ブランドへの転職からスタート

異業種転職で外資系ブランド企業でのPRの領域へ踏み込む。 今までの経験とは異なる環境の中で成果をだし、PR担当としての実力もしっかり身につけていった。

転職2:PRの最高峰といわれる有名ブランドのマーケティングディレクターにスカウトされ、転職。

Aさんのキャリア形成の中で注目すべきは転職1の選択であったと私は思います。越境転職に果敢に挑戦し、その与えられた環境の中でポータブルスキル・語学力の向上に努め、着実に実績を作ったこと。それが評価され、理想通りのキャリアパスを描くことに成功しています。自身の市場価値を高める選択を意識し、チャンスを逃さないことも非常に大切なことだと思います。

ポータブルスキルは意識的に修得することができるものではありますが、海外と日本の学校教育や、文化面の違いも含め、日本人はより「発信する」「説得する」ことを意識したコミュニケーションやプレゼンテーションを修得する必要があると思います。

最近ではベンチャー企業などを中心に、サービスの3分間ピッチなどの文化も浸透してきています。限られた時間の中で完結に製品やサービスの要点と必要性を伝え、相手を納得させていく力は、数あるポータブルスキルの中でも非常に重要だと思います。

時代や文化背景を理解し、自身に不足したスキル・能力を身につけることの必要性

株式会社morich代表 森本千賀子さん

海外やビジネスシーンでグローバル人材として活躍するためには、グローバルスタンダードなスキル・能力を身につけることが必要だと語る森本さん。ここからは、グローバル人材として活躍するためにどういった点を意識していくべきかをお伺いしていきます。

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日本と海外における雇用形態や文化的な違いについて

日本と海外との雇用形態や社会情勢が生んだ文化的な違いはとても大きいと思います。

日本では、「終身雇用」や「メンバーシップ雇用」が主流です。「終身雇用」はご存知の通り、退職まで1つの企業に勤めるというものです。特に高度経済成長期の日本では、1つの企業の中であっても次々と新しい事業が立ち上がり、企業も成長を遂げる中で、特に他の企業に転職する必要性がないという状況であったこともあり、「勤め上げる」という文化が主流であった時期もありました。

また、「メンバーシップ雇用」も終身雇用を前提とした採用手法として浸透しており、2024年現在でも多くの企業が取り入れている採用手法です。特に業務内容や勤務地を限定せず「総合職」として採用し、終身雇用を前提とし、企業文化にあった人材へと会社が育て上げていくという制度です。これらの制度により採用された社員は退職率が低いとされ、まさに終身雇用を前提とした企業には適した採用方法・制度であるとも言えます。

一方で、海外で一般的な「ジョブ型雇用」とは、求職者が対応する業務内容を明確にした上で雇用契約を結び、職務や役割で評価する雇用システムのことです。

求職者は早期から自身のキャリアパスを考え、初期スキルを構築することが求められます。途中からのキャリアチェンジをするハードルが高いことはデメリットとして挙げられますが、採用要件が合えば恵まれた条件でキャリアをスタートすることができます。また、採用する側も大学での専攻や前職での経歴をベースに職種とスキルが採用条件に合った人材をプロフェッショナルとして採用するため、質の高い即戦力人材を確保することができます

最近は日本国内の大手グローバル企業や一部の スタートアップ企業などを中心に、「ジョブ型雇用」が増えてきている印象では ありますが、これからグローバル人材として活躍を目指していくのであれば、自身のスキル・能力にフォーカスし戦略的にキャリア構築を行い、海外のジョブ型採用人員と対等に戦っていくスキル構築が求められるのではないでしょうか。

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誰にも真似できない唯一無二なキャリアを構築する、その秘訣は?

株式会社morich代表 森本千賀子さん

どのような環境で、どのようなキャリアをこれまで積んできたか。また、これからどのようにキャリアを構築していくかは、この記事を読んでくださっている方それぞれだと思いますが、グローバル人材として活躍するために必要なことは、大きく2つあると思います。それは

  • グローバル人材としての活躍要件と自身のスキル・能力レベルの差を正しく把握し、その差を詰めていくステップを自身で構築していくこと
  • 転職のタイミングを自身の市場価値を高めるためのタイミングと捉え、そこに照準を定めたスキル・能力の開発に注力すること

です。日本では現在、リタイアを迎えるまでに平均して3回程度の転職をしていると言われています。その転職の機会を自身のキャリアアップの1つのタイミングと捉え、自身の市場価値を最大化する選択を続けていくことで、誰にも真似できない、あなただけの魅力的なキャリアを築くことができるのではないでしょうか。

まとめ

これから日本と海外の距離はますます近くなり、英語を活用するシーンも増えてくると予測されます。グローバルで活躍を目指す方は自分の市場価値を高めるという点に意識を向けることが大切です。以下を実践しながら、自身にしかできないオリジナルな就労経験やポータブルスキルを増やしていっていただきたいと思います。

  • 自身の能力・スキルレベルを正しく把握する
  • 語学力・コミュニケーション能力を伸ばす
  • 発信力・プレゼンテーション能力を磨く

外資系企業への転職や、海外で就労するためには、募集要件にある英語力規定がある企業も少なくありません。企業が求める英語力を明確な数値として示せるよう、定期的にTOEIC Testsを活用して英語力を可視化しておくこともおすすめです。

あなたの市場価値を高める能力・スキルは何なのか、是非この機会に考えてみてくださいね。

プロフィール
株式会社morich代表
森本千賀子さん

1970年生まれ。獨協大学外国語学部英語学科卒業後、1993年にリクルート人材センター(現:リクルート)に入社。転職エージェントとして二千名以上の転職を支援し、千名以上の経営者のコンサルティングに携わる。2017年3月株式会社morichを設立。25年在籍したリクルートを2017年9月に卒業し独立。
現在は人材紹介業を中心に、組織や人事に関するサポートも行うオールラウンダーエージェントとしてエグゼクティブ層の支援を行う。その他、TVや雑誌など各メディアでの執筆活動、各地で講演やセミナーなど多岐にわたって活動。

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