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グループ学習でのピンチを変革学習のチャンスに変える
大人数のグループでファシリテーターを務めるのはとてもやりがいのあることで、時には能力の試されることです。グループ学習における場の流れは予測不能な場合があり、全てをスムーズに進行するためには、臨機応変な対応が求められることも多いものです。
その際、参加者はあなたに専門家としてグループをリードする役割を期待するでしょう。困難だと思われる瞬間も、上手く扱えば、単なる情報がひらめきに変わります。そして、プログラム全体を変革学習の場とすることができるのです。
変革学習には3つの要素があります。理解における変化、信念における変化、行動における変化 の3つです。グループ学習における場の流れが職場での葛藤に似たものとなっている場合、その解決もまた現実に応用可能なものとなり、参加者の信念や行動の変化を促す場合があります。時には、そこまでドラマチックなものではなくて、単に大人しいグループと対峙するようなケースもあるでしょう。いずれにせよ、参加者たちはあなたから、どのようにあるべきか、何を職場に持ち帰るべきかを学ぶのです。
少なくとも今のところは、全ての学習がオンラインに軸足を移していますが、今こそ、事前の準備が大切になっています。教室の場の流れを掴むために今までの方法が使えなくなる一方、チャットやアンケート機能、個別の会議室へのグループ分けなど、新たなツールが使えるようになっています。
私がファシリテーター研修の講師をするときは、参加者に最悪のシナリオを書き出してもらう時間を取るようにしています。そしてそれぞれの問題をやっつけて、対応可能な状態にするのです。以下に、最も一般的な問題を列記します。
グループがとても静かである
これは私にも起きたことです。参加者が積極的に参加しておらず、ともすれば最高のジョークを言ったのに笑ってもらえないなどということがあると居心地が悪くなりますね。時には、単に参加者が準備運動をする時間を必要としている場合もあるのです。一つの戦略は、単に待つことです。その時間は、実際よりも長く感じられることが多いので、とにかく呼吸をしながら頭の中で20まで数えるのです。すると普通は誰かが話し始めます。本当に静かなグループに当たることもあります。その場合には、より参加し易くすれば良いのです。チャットに回答を入力してもらうのもその一つです。これにより、ディスカッションに多様な視点がもたらされます。もう一つの戦略は、ペアや小さなグループになってもらいワークをたくさん行うことです。Zoomなどの会議用プラットフォームにあるブレイクアウト機能は、リモート学習では有効なツールとして使えることでしょう。
誰か一人ばかり話をしている、または個人的なニーズに基づき時間を奪ってしまっている
まず、他の人も参加し易くすることに集中します。小グループに分かれて話をして、各グループからボランティアを募って要点を共有してもらうようにするのが一つの方法です。あるいは、私自身が部屋を回って全員から意見を聴く場合もあります。その人がしつこい場合には、一歩踏み込んで直接的な表現をします。例えば、「あなたの積極的な参加にはとても感謝しています。まだ発言をする機会のない方のためにも時間を取りたいと思います。」と言うのです。そして必要ならば、その人と休憩時間中に個人的に話をして、他の参加者も参加できるように話を控えていただくように丁重にお願いをします。
誰かがグランドルールを破る
イベントのはじめにグランドルールが定まっていると、とても助けになると思います。あなたが決めても良いですし、グループで作っても良いのですが、グランドルールがあることで、全員が参加できる「安全な場」が生まれます。一旦グランドルールが出来たら、それについて全体に対して優しくリマインドする準備をしておきましょう。なぜならあなたは、皆に責任ある参加を促す役目を期待されているからです。ルールを破る行為がなおも続く場合、より直接的に話をするか、必要ならば強い態度で臨みます。
必要以上に挑戦的な参加者がいて、他の参加者に不快な思いをさせている
既に述べた戦略で対応してみて、それでも難しい場合は発言を遮ることも準備しておきましょう。その人が興奮していたり動揺していたりする場合には、休憩を取って、彼らと直接話をして落ち着かせようにします。その人が真に破壊的で、行動を変えようとしない場合には、退去を依頼するか、他のファシリテーターや主催者に介入してもらうことを検討する必要もあるでしょう。
その場の葛藤がグループ全体の体験を乗っ取ってしまっている
多くの参加者に影響を与える対立が起きた場合には、彼らに選択肢を与えるのが良いと思います。この学習プログラムを終えるまでの間、意見の相違を脇に置いておけるか。もしくは皆で一緒に時間を使ってその葛藤を解決するか。この時点で私は、事実上、このセッションを「困難な対話と紛争の解決」のセッションに変えてしまうのです(このトピックは、必要なときにリードできるようにしておくと良いでしょう。多くのワークショップをファシリテートすればするほど、上手になります。なぜならその分だけ多くのコンテンツを自在に扱えるようになり、グループのニーズに一層応えることができるようになるからです)。
もしくはその場を「フリーズ」させて、参加者が新たな視点を得られるようにするのも一つの方法です。私は参加者に会話を止めてもらい、例えばこのようなことを言います。「ちょっと待ちましょう。この部屋では何が起きているのでしょう?どのように異なる視点や意見が議論されているのでしょう?」 対立の渦中にない他の参加者に参加してもらう効果もありますし、参加者が一呼吸おいて落ち着くのにも良い方法です。
ある参加者が、部屋の皆の前で、あなたの扱う内容やあなた自身の資格についてあからさまに苦言を呈する
当然ながら、あなたが自分のコンテンツについてより深く理解していれば、より自信を持って、質問にも落ち着いて答えることができるでしょう。しかしそれでも相手が納得しない場合は、こう言いましょう。「そのように思われることが残念ではあるが、自分には決められた役割を果たす責任がある」。これを優雅に伝えられるとよいですね。
自分が間違いを犯してしてしまう
もしもあなたが間違った情報を伝えてしまったり、とっさに意図しない発言をしてしまったりした場合にはどうすべきでしょうか。私は失言をしたら、それに気づき次第、自分のミスの責任を取って、修正するようにします。後から間違いに気付いた場合には、グループに対してメールを送ります。
どんなことでもそうですが、最も恐れるものに対峙することは、自信を得るチャンスでもあります。それが起きた時に対応できるようになるからです。だからといってそれが楽しいものとは限りませんが、最高のファシリテーターは、ほぼどのような厄介な状況も、落ち着いてプロとして舵取りすることができるものです。
困難な場の流れを変革学習の場に変えられるか否 かは、最良のファシリテーターと凡庸なファシリテーターを分かつものです。オーディエンスの状態を読んで、彼らのニーズに合わせてワークショップを調整することは高度なスキルですが、それによる成果は多大なものです。
この投稿は、書籍”Wired to Grow: harness the power of brain science to learn and master any skill ”から抜粋したものです。
この記事は、Britt Andreatta博士のブログに 2020年6月30日に掲載されたものです。 原文(英語)はこちらからご覧いただけます。