ブリット・アンドレアッタ博士のブログから

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研修での学びを明日につなげる

人間は学習するようにできていて、研修の場であろうがなかろうが、毎日学び続けています。研修を行うときには、その場での学びが、参加者の日々の学びにいかにフィットするものとなるかを考えることが重要です。研修が終わった後に、参加者をどのように成功に導くか、そして彼らの生活や職場にいかにして学びをつなげることができるか、考えてみましょう。

参加者を成功に導くために、研修の戦略的な終え方を考える

研修の終え方が始め方と同じくらい重要だということを、人材育成のプロは必ずしも知りません。ですが終了時の内容というものは、それが何であろうと、参加者が最後に覚えていることですから、彼らをモチベーション高く、触発された状態で送り出すことができる良い機会でもあるのです。

研修の終わりは、時間が押してしまった時などは焦って混乱した状態にもなりがちです。アンケートを取るなどの事務的段取りもこなさなくてはなりません。研修の終わりの場面で印象に残る締めくくりができるよう、設計には十分に注意を払いましょう。そして研修当日に留まらず、学びがつながっていくようにしたいものです。

ここに、研修の終え方についてのいくつかのポイントを記します。扱う題材や参加者の特性により、適宜順序は変えて下さい。

1. 重要なポイントはおさらいをしましょう
私はその日のアジェンダや学習目的のスライドを最後に再び表示することで、その日に扱った内容をさっとおさらいするようにしています。これにより学びをしっかりと締めくくることができ、参加者はその研修の道のりを振り返ることができます。
2. 参加者が重要な学びを自分のものにする時間をとりましょう
私はアジェンダをおさらいした後、5分間とって、参加者の主な洞察や学びを書き出してもらいます。これにより参加者は研修の題材を自分のものとして、それを今すぐ生かそうとい気持ちになることができます。
3. 参加者にアクション・プランを作ってもらいましょう
研修後のワークや宿題を課す場合、参加者にアクション・プランを書いてもらう紙を渡しましょう。内容にもよりますが、30日、60日、90日のプランに分けて記載してもらうこともあります。
4. 参加者に、最初に取り組む課題をカレンダーに記入してもらいましょう
これは、研修を終えた後に参加者が学びの勢いを維持するために力強い方法となりえます。スマートフォンを取り出してもらい、カレンダーに、次のアクションに取り掛かる予定、ワークショップの教材を復習する予定、他の参加者とバーチャルなミーティングを行う予定を入れてもらうことができるでしょう。でも気をつけて下さい。参加者がメールを見だしたり、我に返って忙しい仕事のことを思い出したりすると、「心ここにあらず」となってしまいます。参加者に合わせて、そこは判断しましょう
5. 重要な事務的段取りをきちんと終わらせましょう
アンケートを取ったり、研修後の課題を提示したり、連絡先の交換をするといったことを時間内に終わらせましょう。
6. 最後に、参加者に、気分よく終わってもらいましょう
事務的な事柄からポジティブな雰囲気に戻すために、最後にアクティビティや、楽しい動画や、素晴らしい格言を準備しておきます。適切と感じられる時には、参加者に感想やその日の学びについて話してもらって終わりにします。時間があれば、参加者一人一人を周って全員から話を聞くのもよいでしょう(その場合は、簡潔に一言二言で、とお願いをします)。時間がない場合は、最低でも1分間を取って、チャットボックスに記入したり、2人や3人のグループで感想を共有したりといった場面を設けましょう。こうすることで、誰もが何かしらを話す機会を作ることができます。 研修を上手に終えることは、ファシリテーターの重要な役割の一つです。参加者が研修という特別な場を去ってから、学んだことを日常に組み入れられるような形で送り出したいものです。ポジティブで記憶に残るものにすることが、彼らを送り出す上で重要な最後の一工夫となります。

課題を出して、学びの勢いを維持する

研修を上手に終えることができたなら、参加者は学んだことに興奮し、さらに多くの学びを得たいと感じていることでしょう。そのエネルギーを利用して次のステップを明確にしてあげることで、学びの続きを充実したものにしましょう。これは勢いを維持するだけでなく、脳科学的に見ても、学びの設計上好ましい方法なのです。研修後の課題は、学んだ題材を長期の記憶に置き換え、繰り返しにより神経系を太くし、正しい習慣を作り出してくれます。

課題の出し方にはさまざまな方法があります。どの方法が良いかは、どのようなワークショップを行ったか、そしてどのような変化を参加者にもたらそうとしているかで異なります。いくつかの良い例を挙げます。

関係する資料のリストを提供する

これには記事や書籍(抜粋を含む)、動画、ウェブサイト、オンラインコース等が含まれます。その中から興味をひくものを参加者に一つ選んでもらい、2週間のうちにそれに取り組むことを約束してもらいましょう。リストを作るのは比較的簡単です。私はワークショップを作る際に用いたソース資料は公開することが多いです。そうすることで、何か特定の事柄についてより深く学びたいという人の助けになります。批判的、もしくは創造的な思考を喚起したいのであれば、あえてあなたが教えた内容からそれたものや、明らかに対立するような題材も含めましょう。参加者が良いと思った記事や動画があれば、リストに加えてもらってもよいです。私も、この記事に関連する何か良い資料があれば、コメント欄で教えて頂きたいです。(編者注:原文のページにはコメント欄があります。)

練習する機会を作る

物事を上手にできるようになるには、練習しかありません。しかし、学習者が練習する時間を取ったり、正しい練習方法を設定したりするのは困難な場合があります。日常の環境に戻ってもできる具体的な活動を示してあげましょう。ワークシートを完成させたり、オンライン・アセスメントを提出してもらったり、ある行動を一定の回数繰り返してもらったり、学習者に価値ある練習をさせることで、成功へと導くことができるのです。

ペアやグループでの学習の共有を促す

人は一緒に学ぶと、お互いの洞察や経験を利用して学びを増大させることができます。加えて、学んだ内容が人間関係の中に埋め込まれ、後に再会した際に、それはより強固なものになります。研修が終わってからも、ペアやグループでディスカッションしたり練習したりすることを、参加者に促したり義務づけたりすることで学びを深めることができるのです。それはオンラインでのやりとりでも良いですし、対面での会合でも構いません。学習を共有しようとすると、お互いへの責任も伴います。スケジュールが忙しくなっても、パートナーへの約束は守ろうという気持ちが働くからです。

ワークを完了することを課す

学習者が宿題や練習をすればするほど、彼らの現実の行動に変化が見られるようになります。多くのラーニング・プラットフォームで、様々な活動や取り組みが可能となっています。これらを設定し、明確な締め切りを伝え、リマインドするようにしましょう。

課題によって得られる効果は素晴らしいものです。やる気のある、モチベーションの高い学習者に、取り組む題材を与えることができ、誰がやる気のある、モチベーションの高い学習者であるかを知ることもできます。加えて、研修の目標としてどの程度の深さが適切かをより明確に考えることができます。成果が研修の枠組みを超えて出るのはもちろんのことです。是非試してみて、何がうまくいくか、考えてみて下さい。結果は喜ばしいものになるはずです。


この記事は、Britt Andreatta博士のブログに 2020年7月7日に掲載されたものです。 原文(英語)はこちら別ウィンドウで開く/Open the link in a new windowからご覧いただけます。

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