芸術作品の魅力を可視化
欧州委員会が発表した欧州のデジタル変革の構想と施策をまとめた「AI白書 」によると、DXは美術館などの芸術分野でも推進されているようです。
カメラが収集した情報をサーバーに送信・蓄積し、分析する「ShareArtプロジェクト」が、イタリアで開発・運用されています。これは何を意味するのでしょうか?これは美術史上初めて、美術品だけでなく、それを見る来館者が観察され、分析されるということなのです。
作品の近くに設置されたカメラは、作品を見た顔を自動的に検出すると同時に、例えば、作品に近づくまでの道のり、作品を鑑賞した人数、鑑賞時間や距離、鑑賞した人の性別や年齢層、感情など、作品を鑑賞する際の行動に関する一連の情報を収集します。
そしてビッグデータと照らし合わせ、見る人がどこに注目する傾向があるかを判断します。
今回のプロジェクトを通じて、アート作品の平均観察時間は鑑賞者1人あたり約5秒で、15秒以上も鑑賞者を飽きさせない作品はわずかであることも判明しました。
また、このシステムは、コロナ禍での安全衛生上の取り組みとして、会場でのマスク装着やソーシャルディスタンスが守られているかどうかを検知するのにも役立つことがわかりました。
これらの行動データは、コロナ禍による観光や文化活動の低迷からの回帰に向け、展示をより魅力的なものに最適化することで、美術館の来館者数を増やすためのマーケティングツールとして活用されています。
Istituzione Bologna Musei(ボローニャ美術館)の社長であるロベルト・グランディ氏は、「来館者の作品に対するアクセス方法、鑑賞態度、鑑賞時間などは、美術館の学芸員が来館者の行動をより深く理解するのに役立ち、研究者は大量のデータの収集・分析から、鑑賞行動における知覚と行動の関係性についてより深い知識を得ることができる」と述べています。
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