職場における「つながり」の築き方(1)ますます重要になる「つながり」
ハイブリッド型や分散型の職場がうまくいくかどうかは、人間関係と信頼の構築にかかっています。同僚がお互いに「つながっている」と感じられることが必要です。リモートワークによって職場で孤立が起こる機会は非常に多くなったため、つながりを保つことはこれまで以上に難しく、なおかつ重要な課題となっています。
これは人事部門の関係者だけの問題ではありません。従業員同士の関係が良好であることが、健康、生産性、そしてポジティブな就業のために重要であることは、今日、チームを管理するすべてのリーダーにとって明白なことです。しかし、それをどのように構築するかは、あまり明確ではありません。最新の研究では、何が必要で、どのリーダーがどのように実践すればよいかが明瞭に説明されるようになってきました。
従業員間の「つながり」におけるギャップ
今日、従業員が職場で孤独を感じ、あるいは孤立している時、バーチャルワークの技術が個々の取引の実行に重点を置き、人間関係には重点を置いていないことが一因です。
バーチャルで分散した職場において人間関係を構築するのは大変なことです。今日、私たちは時間の30%を会議に費やしていると言われていますが、そのほとんどはビデオ会議によるものです。同じ人と何度も話すことになりがちです。天気や週末について簡単な会話はあるかもしれませんが、すぐに本題に入ることが多いでしょう。私たちは一緒に時間を過ごしてはいるのですが、本当の意味ではつながっていないのです。これでは、メンタルヘルスや帰属意識を高めることができませんし、社員の定着率もよくありません。
このようなつながりの欠如は、私たちが仕事においてサイロ化し、バラバラになり、やる気をなくしてしまう原因となっています。そして、旧来標準的とされてきた職場環境や福利厚生のあり方は、ハイブリッドやリモートの職場においては必ずしも効果のないものとなりつつあります。
私たちが現在用いているバーチャルの職場は、2つのことを目的として構築されたものです。
1. ワークフロー管理を最適化するため
2. 情報を効率よく配信するため
これらは人間関係の摩擦を取り除くことはできても、つながりを構築するものではありません。このような方法でしか人と接しないのであれば、せっかく時間をかけても人と「つながる」ことはできません。スタンフォード大学で教鞭をとるChip Heath氏が兄弟のDan Heath氏との共著『The Power of Moments』で書いているように、つながりとは、温もり、一体感、共感、受容といった感情の上に築かれるものです。ここで大切なのは、「仕事がいかに運ぶか」よりも、「心の交流がいかに行われるか」なのです。
このような、従業員のつながりの根本的な欠如に対処するためには、まず「従業員同士のつながり」とは一体何なのかを定義することから始めましょう。
従業員のつながりとは?
従業員同士のつながりは、人と人との間に形成される信用や信頼であり、企業にとって最も重要な資産の一つです。
従業員のつながりとは、信頼に基づいて人と人との間に築かれる絆のことです。この絆は、他者の最善の利益を考える「思いやり」によって築くことができます。このことは、長い時間を共に過ごす相互依存度の高い職場の中でつながりを築く上では非常に重要です。一方、交流や依存が少ない関係においては、つながりを感じるためにまず相手の能力を重視するようになります。
従業員のつながりの構築は、チーム内でも組織横断的にも行われます。信頼と情報共有のネットワークを構築することで基盤ができるため、グループはより迅速に行動できるようになります。これはスピード感とエンゲージメントを同時に構築するために不可欠なものです。つながりは、高いパフォーマンスをあげる組織にとって最も重要な資産の一つなのです。
経営の視点からの「つながり」
個人のつながりがもたらす恩恵や、それがない場合にどのような結果に結びつくかは、組織レベルでは複合的なものとして現れます。つながりは、従業員のパフォーマンスの発揮、そしてリテンション(人材の保持や確保)に不可欠なものです。
パフォーマンスへの影響
つながりを重視する組織は、従業員同士の高度なコラボレーションや有意義な対話からメリットを得ることができます。つながりのある文化は、社員が切磋琢磨し、多様な視点を共有するための安全な空間を作り出します。異なる思考スタイル、習慣、視点を奨励する環境は、イノベーションと生産性の向上を促進します。
Gartner社の調査によると、第一線の意思決定チームが多様で包括的な文化を有する場合、そういった組織の75%は財務的な目標を上回ることが分かっています。また、性別が多様で包括的なチームは、性別が同質で包括的でないチームを平均で50%上回ることがわかっています。
リテンションへの影響
Rob Cross社が組織のアジリティ(敏捷性)に関する研究で明らかにしたように、従業員が組織レベルで相互につながっていない場合、イノベーション、定着、アジリティが脅かされ、サイロ文化の形成ややる気の喪失につながり、最終的に高い離職率をもたらすことになります。McKinsey社の2022年の調査では、過去6ヶ月間に離職した従業員の半数以上が、組織から評価されていない(54%)、上司から評価されていない(52%)、または帰属意識を感じられない(51%)と回答しています。
やる気の低い組織文化は、生産性と利益にマイナスの影響を与えます。最近のデータでは、1人の従業員が入れ替わると、その従業員の年収の150%がコストとして必要になると推定されています。
この記事の原文(英語)はこちらの記事の前半です。
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この記事は、Imperative社のご厚意により掲載しています。
Imperative社は、職場における人間関係やつながり感を取り戻すことをミッションに掲げる米国のB Corporationです。(B Corporationとは、米国の非営利団体B Labによる国際認証制度で、環境や社会に配慮した公益性の高い企業が認証されるものです)
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