パーパスのつかみ方

これからの従業員リテンション戦略(1)

景気の良しあしにかかわらず、従業員の離職率を低く抑えることは必要です。特に、人員の整理が行われるような状況ではなおさらです。ここでは、優秀な人材を確保するための秘訣を紹介します。

不況になると企業は従業員の離職を心配する必要がなくなるという誤解がよくあります。そのような状況では従業員は自分の仕事にしがみつくようになるであろうと考えるためです。しかし、これは近視眼的な間違いであり、長期的に見れば企業にとってそうした認識は大きな損失となります。ハーバード・ビジネス・スクールの2人の教授が説明するように、「レイオフはコストを下げるための短期的な解決策としてビジネスにおいて当たり前となっており、経営者は、レイオフが解決よりも多くの問題を引き起こすという事実を無視している」のです。

パンデミックは多くの経営者にとって、不況下での大量解雇の危険性に警鐘を鳴らすものとなりました。その後、景気回復が進むと、優秀な人材を雇用し維持することは非常に難しくなり、コストもかかるようになりました。現在では、企業は厳しい状況下でも人を手放すことに慎重になっています。Los Angeles Times紙は、不況下でも従業員を確保し続けた方が将来的に良い結果につながると経営者たちが気づいたのだとしています。

レイオフが必要だと判断する場合はあるとしても、優秀な人材は確保する必要があります。レイオフを行うと、それがさらに難しくなる場合があります。調査によると、レイオフが始まると、多くの従業員が自発的に退職することが分かっています。アデコグループは、「従業員は、雇用が安定していないと感じると、景気の良しあしにかかわらず、企業に留まろうとしなくなる」としています。

これからの企業で従業員の定着率を高く保っていくためには、リーダー達は適正な給与と競争力のある福利厚生にとどまらず、従業員にとって最も重要な要素に投資する必要があります。ここでは、従業員維持の効果が実証されている戦略や取り組みを紹介します。

その1:従業員の職務上の能力開発の機会を確保する
企業が優秀な人材を獲得するために、能力開発の機会が最も重要な要素の1つであることは、長年言われてきました。そうした機会を確保することが従業員の定着に最も重要なステップであることは、調査データからも明らかです。退職した人の63%がPew研究所の調査に対して「成長の機会がなかったから仕事を辞めた」と答え、そのうち33%がこれを「非常に大きな」理由としています。

管理職は、社員とキャリアの機会について話し合うことが重要です。そうすることで、社員は自分がどのように組織の階段を上っていけるかを知ることができます。経験を広げるために横の異動を検討するなど、考えられる道筋について話し合ってください。一方、Gallup社によると、組織が「従業員開発への戦略的投資」を行った場合、「収益性は11%向上し、従業員を維持できる可能性は2倍になる」そうです。

従業員が自分のスキルを開発し磨くための時間と資源が与えられていることも重要です。従業員は、永続的なキャリアを築くためにはリスキリングとアップスキリングが必要であることを知っています。Amazon社の調査によると、「ミレニアル世代とZ世代の従業員の74%が、スキル開発の機会がないことを理由に、今後1年以内に退職する可能性がある」ことがわかっています。

この時代、企業が最も重視するスキルは、「ソフトスキル」あるいは「パワースキル」であるといわれています。コミュニケーション、リーダーシップ、チームワーク、共感といった対人スキルなどが含まれます。当社が提供するプログラムでも、社員が有意義な会話を通じてこれらのスキルを身につけることができるように設計しています。

その2:燃え尽き症候群を防ぐために働きすぎを抑制する
アメリカ人は働きすぎで有名です。アメリカの労働者は、毎年何億時間もの有給休暇を未消化のままにしています。また、長い時間をハードワークに費やしています。ですから、燃え尽き症候群が永遠の課題であることも不思議ではありません。しかし、この問題はさらに悪化し、過去最悪を記録しています。10人に7人以上の従業員が、少なくとも週に1回は過労を感じると答え、半数近く(48%)が週に複数回そのように感じています。

燃え尽き症候群をよく経験する、またはいつも経験すると答えた従業員は、仕事をやめて新しい仕事を探す可能性が2.6倍も高いのです。また、HR Dive*1によると、燃え尽き症候群が原因で現在の仕事を辞めるだけでなく、仕事自体を完全にやめてしまう人もいるそうです。

燃え尽き対策は、特に人員整理時の従業員の引き留めには重要です。人員が減ってくると、残った人がさらに仕事を抱え込んでしまい、自分自身が燃え尽きてしまうからです。

従業員の定着率を高めるには、仕事時間を適切に管理するよう促すプログラムを実施することです。勤務時間外に携帯電話で仕事のメールを見ることができないようにし、その誘惑を起こさないようにします。また、仕事量を監視し、過度な負担がかかっていないかどうかを確認します。また、ウォーキングミーティング*2を開催し、充電を促すのもよいでしょう。

このような取り組みが、ワークライフバランスの健全化につながり、社員の士気を高める大きな力となるのです。

 


*1 Industry Dive社により運営されている、人事・人材育成に特化したWebメディア。
*2 文字通り、歩きながら会議を行うこと。就労と健康維持が両立するスタイルであるとされている。

この記事の原文(英語)はこちらの記事の前半です。
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