パーパスのつかみ方

これからの従業員リテンション戦略(2)

その3:従業員の仕事とパーパスとの結びつきをサポートする
人々はこれまで以上に、仕事に対して強い目的意識を持つことを望んでいます。Gartner社は、「人々は人生に目的を求めており、それは仕事においても同じことだ。」としています。「雇用主がそうしたものを制限すればするほど、従業員の退職意向は高まるものだ。」とも述べています。

当社の共同設立者であるAaron Hurstは、長年にわたってパーパスを研究し、『The Purpose Economy』の著者でもあります。彼がMIT Sloan Management Review誌に寄稿したように、ある世界的な調査によれば、「仕事を辞める、あるいは辞めようとしている人たちの最大の原動力は価値観であり、その中でも、仕事からもっと個人的な充実感を得たいという要素がトップである」ことがわかりました。仕事を目的意識と結びつけることで、その充足感が得られるようになるのです。

仕事におけるパーパスとは何でしょうか。それは、各個人を達成、成果、成功へと駆り立てるものです。人は、自分が誰に対して影響を与えるのか、なぜ働くのか、どのようにリーダーシップをとるのかといったことに基づいて充実感を得るものです。仕事を自分の目的と結びつけることができればできるほど、仕事の満足度は高くなります。

Workforce Purpose Index*1の説明にあるように、当社では、人々が自分の目的を発見し、それを仕事につなげることを支援します。このプラットフォームには、目的をプロファイリングする独自の技術や、同僚とのつながりを確立する際にパーパスを重視するようにマッチングアルゴリズムが含まれています。

約2,000人を対象にした顧客調査で、こうしたツールが従業員の定着にいかに有用であるかが明らかになりました。こうしたツールを使用した人の離職率は、同業他社に比べて35%低かったのです。また、年間6回以上のセッションに参加した場合、離職率は71%低下しました。

その4:ポジティブな文化や人間関係を育む
目的意識を持つことは、ポジティブな企業文化を築くことでもあるのです。Harvard Business Review誌にも、「パーパスは、優秀な人材を維持する企業文化の基本である」と、人事担当役員や研究者の間で意見が一致していることが報じられています。

Chief Executives for Corporate Purpose、Imperative社、PricewaterhouseCoopers社が共同で発表したレポートによると、文化を築くには人間関係が不可欠であることがわかりました。このような関係は、放っておけば育まれるというものではありません。当社の調査では、46%の人が職場で友人を作るのは難しいと回答しています。

異なる部門へのローテーション機会、イノベーション部会、ストレッチアサインメント*2、リバースメンターシップ*3などの一連の取り組みを通じて、従業員がチームビルディングに取り組み、1対1の関係を強化できるようにします。組織ネットワーク分析を行い、組織の文化にポジティブな変化をもたらす従業員間のつながりを作り出します。

また、リーダーには、従業員全体に根付かせたい行動を自らが示すことで、ポジティブな文化を構築し、従業員への期待を示す責任があるのです。

人種や性別などの違いに関係なく、誰にとっても公平で居心地の良い職場を実現するためには、相互尊重と包摂の文化を築くことが特に重要です。LinkedInのGlobal Talent Trendsレポートによると、求職者の26%が、企業文化を向上させるために企業が投資すべきトップ分野として「多様性と包摂」を挙げています。

その5:効果的なオンボーディングプロセスの作成と維持
既存の従業員をいかに維持するかということに焦点を当てるとき、新入社員の研修方法が重要となります。なぜなら、従業員を定着させるプロセスは初日から始まっているからです。Harvard Business Review誌のコラムでは、「最も効果的な組織は、新入社員の最も不安定な時期であるといえる最初の1年間を受け入れ期間としている」と説明しています。ある調査によると、3分の1近くの社員が最初の90日以内に仕事を辞めることが分かっています。5人に1人はその半分の期間で退職しています。

当社では、4段階のプロセスが非常に有効であることを発見しました。まず、入社後2週間は、社員を知るための学習や交流機会が盛りだくさんのスケジュールでスタートします。入社後は、経営陣が1対1の対話を行い、当社の価値観について深く掘り下げます。最初の90日間は現実的な目標を設定し、成功体験を積ませるようにしています。そして、社内のプラットフォームで同僚とのマッチングを行い、より深く、より魅力的な方法で同僚を知ることができるようにします。その結果、社員は最初の段階を過ぎても定着し、すぐにチームの大切な一員であると感じるようになりました。

その6:従業員からのフィードバックに耳を傾け、対応する
従業員定着の課題に取り組むには、これまで挙げた全てのステップが重要ですが、最終的には従業員一人ひとりが個性的な存在です。会社で働き続けるために必要なことは、一人ひとりで異なるはずです。それを知るためには、コミュニケーションラインをオープンにしておくことが大切です。ある調査によると、組織が従業員のフィードバックに耳を傾け、それに対応した場合、定着率が高くなる可能性が11倍高くなることが明らかになっています。

従業員と頻繁に連絡を取り合うことが重要です。Oracle社の調査によると、「継続的な傾聴を意思決定の原動力としている雇用主は、仕事での充実感が自分にとって意味をもつことを従業員が感じられることを重視している」のです。もし組織が、その人が退職しようとするときに退職理由を聞くだけなら、手遅れのケースが多いでしょう。とはいえ、退社時のインタビューやGlassdoor*4やLinkedInへの投稿を通じて、退社する従業員からできる限りの情報を得ることは重要です。他の社員が同じ問題に直面するのを防ぐために、これらの情報を活用しましょう。

全社的なエンゲージメント調査は、従業員が組織とどのようにつながっているか、どの要素がうまくいっているか、あるいはうまくいっていないかを判断するのに非常に有効なツールです。このような調査では、従業員が匿名という安全性を確保できるため、より回答しやすくなるという利点があります。このような情報をもとに、取り組みを改善し、会社が従業員のアイデアや懸念を真剣に受け止めていることを示しましょう。

従業員を維持するためには、非常に多くの手順が必要で、まるでそれ自体がフルタイムの仕事のように思えるかもしれません。しかし、このような責任は、組織全体に分散させることができます。そして、社員が関係構築に取り組めば取り組むほど、お互いに「ここにいたい」と思えるようになります。

よい文化や習慣を構築することで、あなたの組織は困難を乗り越え、トップパフォーマーを長年にわたって維持することができるようになるでしょう。

 


*1  Imperative社が、職場におけるパーパスに関して実施した調査。
*2  本人の実力を超えた仕事を任せることで、成長を促すマネジメント手法。
*3  若手社員がメンターとなり、上司や先輩社員に助言や指導を行う人事育成方法。
*4  現従業員および元従業員が匿名で企業をレビューする米国のWebサイト。

この記事の原文(英語)はこちらの記事の後半です。
https://www.imperative.com/effective-employee-retention-strategies 別ウィンドウで開く/Open the link in a new window

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