名城大学附属高等学校 荻島先生

―先生は本選と奨励賞へご応募されていますが、エッセイを夏休みの課題にした理由を教えてください。

荻島先生:私は現在、特進クラスを受け持っていて、今回のIIBC高校生英語エッセイコンテストへの応募は「英語コミュニケーション1」という授業内の課題にしています。前任の先生方が過去に応募していたことを知り、私は特進4クラス全てを担当しているので、今年は全クラスで応募するチャンスだと思いました。また、生徒たちに自分の力で英語の文章を書いてみるという経験をしてほしい、ということも大きな理由です。

―では、応募作品に関して、単語や文法のチェックはあまりされていないのでしょうか。

荻島先生:夏休みの宿題なので、文法などの手直しはしていません。夏休み前に課題をだして、夏休み明けにそのまま応募しています。特進クラス151名が提出しましたが、その中には「この生徒には厳しい課題だろう」と思っていた生徒もいました。しかし、そんな生徒が知っている単語を絞り出して頑張って書いてきたものを見たとき、「よく書いてきたね」と涙が出そうになりました。

―貴校は2017年から応募してくださっていますが、若山さんが初めての受賞者です。先生のお気持ちは?

荻島先生:これまで本校の生徒から受賞者はいないということは知っていましたし、先ほども申し上げたようにエッセイの添削をしていないので、まずは驚きました。本校は理系の生徒が多く、特進クラスでも英語に苦手意識を持っている生徒が少なくありません。若山さんも「英語は得意ではない」と話していましたが地道に頑張っている生徒です。だからこそ、彼女の受賞が本当に嬉しいです。

―本選(審査有り)に応募できるのは1校2作品までになりますが、151作品の中から若山さんのエッセイを選んだ決め手を教えてください。

荻島先生:私が全員のエッセイに目を通し、本選応募用に2作品を選びました。正直に言いますと、若山さんよりも英語力の高い生徒はいましたが、それ以上に内容が面白いという点を重視しました。音楽という身近なものに焦点を当てて、異文化として話題を展開していくという発想が素晴らしいと思いました。よく「音楽に国境は関係ない」と言いますが、彼女のエッセイを読んで改めてそう感じることができました。

―若山さんのエッセイが特別賞に選ばれた理由について、荻島先生はどうお考えですか?

荻島先生:先にも述べたように着眼点が面白いということと、何でも書いて覚えたり、常に情報を書き出して整理しようとする若山さんの努力が実ったのだと思います。先日の表彰式の際、皆さんの前で話すときにも、若山さんは話したいことを紙に1回書き出して、そこから何を中心に話をするのかをまとめていました。彼女は日頃の授業でも英語に限らず何でも書いて覚えようとしていて、彼女の手元には常にたくさんのメモ書きがあるのですが、それが彼女の学習方法であり、その地道な努力、情報をまとめる能力が今回の受賞に結び付いた理由のひとつだと思います。

―生徒のライティング力を向上させるために、日頃の授業で何か行っていることがあれば教えてください。

荻島先生:私が受け持っている英語コミュニケーションの授業では、テーマに関する動画を生徒に見てもらい、メモをとらせ、どのような内容だったのかをペアになって話したり聞いたりしてもらいます。さらにプレゼンの基本構造を学び、関連したテーマに沿って自分が知っている単語でよいので英語で原稿を書き、クラスのみんなの前に立って1分30秒間のプレゼンをしてもらいます。グループプレゼンを含め、1年間で5回くらいはプレゼンをする機会がありますが、このプレゼンの土台となる英文の構成はエッセイにも応用できるものです。一年間に渡り、スピーチ原稿を自分で作るという作業がライティング能力の向上につながっているのではないかと思います。

―最後に、コンテストへの参加を検討されている他校の先生方にメッセージをお願いします。

荻島先生:今回の受賞については、生徒本人の努力の賜物です。私は応募のきっかけを作っただけです。ただ、これまでの経験を通じて気付いたことは、先生が生徒のレベルを勝手に決めてはいけないということです。これまで私は何校かの高校に勤務してきましたが、先生側が「この子たちには難し過ぎる」などと考えてしまい、このようなコンテスト応募のスタートラインにすら立てなかったということがありました。英語の成績が良いからといって必ずしも良いエッセイを書けるわけではなく、反対に英語の成績が悪いからといって良いエッセイを書けないわけではないのです。今回、大勢の生徒のエッセイを読みましたが、「この生徒はこういう文章を書くんだな」という発見が楽しく、また、ふだんの授業やテストだけではわからない、自分の言葉で表現する力を知ることができました。生徒も先生も多くの気付きを得られるコンテストです。ご興味があればとにかく挑戦されることをおすすめします。

(本記事の取材は2024年2月に行いました。)

お問い合わせ

一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会 IIBC高校生英語エッセイコンテスト事務局


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