新型コロナウイルス感染症対策などを背景に、大学などがオンライン授業を導入し、企業・団体が在宅勤務やオンライン会議などを推進する中、英語学習・テストに関してもオンライン化が進んでいます。また、英語でのオンライン会議などでは、より的確に表現して伝えなければならないなど、これまでより一歩進んだ英語学習が必要になってきます。本特集では、オンラインを活用した英語学習法を「TheJapan Times Alpha」編集長の高橋敏之氏に伺うとともに、TOEIC L&R IPテスト(オンライン)を活用されている、NECマネジメントパートナー株式会社と法政大学の取り組みを紹介します。
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自分の半径1m以内をアメリカにして海外で生活しているような環境をつくる
充実するオンラインでの学習ツール
近年、英語学習において生じた最も大きな変化の1つが、オンライン学習ツールの充実です。オンラインで英会話レッスンが気軽にできるようになり、動画配信サービスには、英語学習に役立つ素材があふれています。
IIBCにおいても、2019年4月より、本番のテストと同じプロセスで作成された約1,500問の問題と、本番と同じリスニング音声が搭載された、「TOEIC Listening&Reading 公式eラーニング」のサービス提供を団体向けに開始。また、20年4月からは、受験者がインターネット上で場所を選ばず受験できる、IPテスト(オンライン)をスタートしました(次ページを参照)。
このように英語学習を取り巻くオンラインの環境が整備され、IIBCでもオンライン化に注力するさなか発生したのが、新型コロナウイルス感染症の流行でした。海外渡航が難しくなっただけではなく、日常生活においても、対面でのコミュニケーションが大幅に制限されることになりました。
「もし新型コロナウイルス感染症の流行が、『今のようにオンライン環境が整っていない、10年前に起こっていたとしたら……』と考えるとぞっとします。生の英語に触れる機会が激減し、多くの人が英語学習に対するモチベーションを失ったことでしょう」こう語るのは、株式会社ジャパンタイムズ出版が発行する、英語学習用の週刊英字新聞「The Japan Times Alpha」編集長の高橋敏之氏です。
興味あるジャンルの動画を教材として活用
新型コロナウイルス感染症の拡大は、在宅勤務を導入する企業が増加するという、思わぬ社会変化も引き起こしました。急な対応に追われて大変だった反面、英語学習者としては、通勤がなくなり、就業後に同僚などと飲食する機会も減ったため、学習時間を確保しやすくなりました。
「せっかく時間が取れるのなら、これまでよりも一歩踏み込んだ探究心を持ち、英語学習に取り組んでみてはどうでしょう」と、高橋氏は提案します。
例えば、一般的に日本人は「a」と「the」の使い分けが苦手で、高橋氏もかつては苦手意識を抱いていたそうです。
「そこで英文を読むときに、aとtheが出てきた部分に全部マルを付けていきました。その上で英文を読み直してみると、ケースごとにaとtheのどちらを使うのが適切なのかが、初めて深く理解できるようになったのです」
こうした探究心は、オンラインの動画配信サービスで、海外ドラマや映画を視聴するときにも発揮できます。高橋氏は「登場人物が発する細かい表現に注目しながら視聴してほしい」と言います。
例えば「grow」は、人や動物などが「成長する、育つ」という意味が有名です。ところが海外ドラマを視聴していたときに、登場人物が「関心が高まる」という意味で「grow」を使っていることに気が付いたとします。「そうか、growはそんなふうにも使えるのだ」と気に留めておくことで、英語表現のバリエーションが大きく違ってくるそうです。
「リスニング力に自信がない方は、日本語字幕から入ればいいと思います。日本語字幕を読みながら、『日本語ではこういう訳になっているが、英語で何と言っているのだろう?』と、気になった部分に注意を向けてみるのです。すると『日本語では難しい言葉で訳されていたけど、英語だとこんなにシンプルな表現をしている。これなら自分でも使えそうだな』というものが多いことに気付くはずです」
動画配信サービスを活用して英語学習をする場合の高橋氏のお薦めは、自分の興味があるジャンルを教材に用いること。今の時代、オンラインで色々なジャンルの動画を視聴することが可能なため、趣味を楽しみながら、同時に英語力を身に付けることができるのです。
「私がセミナーで皆さんによくお話ししているのは、『自分の半径1m以内をアメリカにしよう』ということです。趣味の動画を楽しむときも英語のコンテンツを選び、本も英文のものを読むようにします。日本にいながら、自分だけはアメリカで生活しているような環境をつくっていくわけです」
場所や時間を問わず受験できるオンラインテスト
英語学習を続けていると、「自分の英語力がどれだけ伸びているのか」「英語力における自分の強みや弱み」などをきちんと把握したくなるものです。そこで重要になるのがテストです。残念ながら、新型コロナウイルス感染症の影響で、2020年度の公開テストについては、一定期間中止せざるを得なくなりましたが、その中でもIPテスト(オンライン)に関しては、実施し続けることができました。
「留学も海外旅行も難しくなり、その上テストも受けられないとなれば、何を目標にして英語学習を続ければいいのか、分からなくなってしまった方も多いはずです。その点、自宅で受験ができるオンラインでのテストは、学習者がテストを受けに行くのが難しい状況の中で、テストの方が学習者に近づいてきてくれたという意味で、非常に意義があると思います」と、高橋氏。
またIPテスト(オンライン)は、社員・職員・学生・生徒の受験機会を確保し、英語コミュニケーション能力の底上げを図っていきたいと考えている企業・団体・学校からも高い評価を得ています。
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ここまでは高橋氏に「オンラインを活用した個人の英語学習法」について語っていただきましたが、次ページから、企業・団体・学校が、IPテスト(オンライン)を実施することのメリットを、どのように考えているかについて紹介します。
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