Vol.2
    話したいことは生活の中に。だから、英語で日記を書こう

    2021年10月号

    本記事は、イラストレーター、作家、ミュージシャンの新井リオ氏に寄稿していただきました

    新井 リオ氏 プロフィール

    イラストレーター、作家、ミュージシャン。1994年東京都生まれ。立教大学社会学部卒業。イラストレーターとしてAdobe CC Logo Remix、WIRED.jp 連載イラストなどを手掛ける。カナダでのデザイナー生活と英語独学法をつづった著書『英語日記BOY 海外で夢を叶える英語勉強法』(左右社)が、Amazon本総合人気度ランキング1位を記録。DMM英会話Blog、日経doorsにて連載を執筆中。バンドPENs+のボーカルとして日本で4枚のCD、アメリカで1枚のレコードをリリース。

    Point
    ● 日本語で日記を書き、何を言いたいのか浮き彫りにする
    ● インターネットや辞書を使い、自力で日記を英訳する
    ● スマートフォンの音声入力機能で発音を矯正しながら音読

    19歳のとき、私は自分が抱えていた1つの矛盾に気付きます。それは、日本人として生まれたことを悔しく思ってしまうほど渇望していた、「英語が話せるようになりたい」という夢を持ちながら、目標である「英語が話せる」の定義を全く理解していない、という矛盾です。一体何をクリアしていれば「英語が話せる人」なのか? どこからがペラペラなのか? これらを知らずに漠然と勉強をしていた私は、ゴール地点を知らずに走り出してしまったマラソン選手のようでした。

    そんな自分に訪れた「英語が話せる」の定義が決まった日の話です。

    当時ミュージシャンとして活動をしていた私は、あるとき憧れだったアメリカのロックバンドと日本で共演します。終演後「高校生の頃からあなたの音楽をずっと聴いていたんです!」と話しかけようとしましたが、「ずっと聴いている」が言えず、言葉に詰まってしまいました。あとで調べてみると、“Iʼve been listening to your music since I was in high school.” という中学文法で言えるフレーズだったことを知ります。大学受験を通してもっと難しい単語を知っていたはずの私ですが、実際にはこんなに簡単な文章を「瞬時に口から出す」ことができなかったのです。

    このとき、ある種のひらめきのようなものが頭をよぎります。逆に言えば、このフレーズを瞬時に口から出せていたら、私はその場における「英語が話せる人」になれていたのではないか?

    「英語が話せる」とは、難しい単語を知っていたり、単に留学歴のある人のことを指すわけではなかったのです。考えてみれば、アメリカ人の小学生はボキャブラリーに限りがあるものの、確実に英語が話せる人ではあるわけです。この事実にも鑑みて、「英語が話せる」は、「今私が言いたいオリジナル英語フレーズを瞬時に口から出せる能力」と定義付けできると考えました。

    定義が分かった私は、「いつか自分が言いそうなオリジナルフレーズ」を先回りしてリストアップしました。

    例:「今日何してたの?→インターン先でデザイナーとしての仕事が始まったんだ」「週末は何するの?→友達とキャンプに行くよ」「最近調子はどう?→今学期は単位を取るのがなかなか難しくて悩んでいるの」

    ここであることに気が付きます。これらは全て、便利フレーズ集を何周しても出てこないじゃないか。言いたいことは全て、「自分の生活の中にあるのだ」と。

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    新井氏がSNSに投稿した英語日記

    そして思い付いたのが「日記」でした。日記に書くようなパーソナルな内容を全て英語で言えるように練習すれば、自分にとっての「英語が話せる」を完全にクリアできると思ったのです。

    その日から私は「英語日記」を書き始めました。まずは日本語で簡単な日記を書き、自分が何を言いたい人間なのか浮き彫りにします。次にインターネットや辞書を使い入念に意味を調べながら自力で英語に訳し、さらにオンライン英会話の先生に添削してもらいます。仕上げに、英語設定に変えたスマートフォンの音声入力機能に向かって話しかけ、発音を矯正しながら100回ほど音読し、瞬時に口から出せるように練習します。

    今年でこの習慣も7年目になりました。今、私はおそらく2,000以上のオリジナル英文を持っている人、ということになります。このくらいの数があると基本的な会話は全てカバーできます。慣れてくれば、これまで日記に使ったフレーズ同士を組み合わせ、瞬時に新しい英文を作ることも可能です。

    確かに時間はかかりますが、「時間をかけることを肯定してあげる」のがスキル習得の掟となります。長年地道に続けてマスターした事実こそが私を励ましてくれるのです。勉強はいつでもできる青春だなと、本気で思っています。

    新井さんより英語学習者へのメッセージ

    I'm not where I want to be yet, but I know for sure that I'm on the right track.

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