Vol.4
    今ある英語力で会話はできる
    大切なのは発想力の鍛え方

    2022年3月号

    本記事は、イングリッシュ・ドクター® 西澤ロイ氏に寄稿していただきました

    西澤 ロイ氏 プロフィール

    イングリッシュ・ドクター®。1977年北海道生まれ。獨協大学英語学科卒業。大学で言語学を専攻し、アメリカ留学を通じて、英語でコミュニケーションが取りやすくなる「発想法」を研究。その後、英語上達法を研究し、現在では、企業研修、英語講座、独自教材などを通じて、多くの英語学習者に影響を与えている。『英語を話したいなら、まずは日本語の話し方を変えなさい!』(SBクリエイティブ)など著書多数。

    Point
    ● 日本人には英語を話せる素地がある
    ● 動詞に着目し、頭の中の日本語をほぐす
    ● 発想力を鍛え、英語力を高める

    私は英語学習におけるつまずきを「英語病」と呼んでおり、それらを解消することの重要性を日頃から発信しております。

    私がまずお伝えしたいのは、日本人には既に、英語ができる/話せる素地がある―ということです。それは中学・高校における英語教育の成果であることは間違いありません。

    英語における日常会話の約8割は中学英語に相当する、基本的なボキャブラリーで行われています。それなのに、多くの学習者が「自分は英単語を知らないからしゃべれない」と考えて、単語やフレーズを新たに覚えようとします。これは、自分の持つ力を無闇に否定してしまう「アイキャント症候群」という英語病―。既にボタンの掛け違いが起こっているのです。

    中学英語は、ほとんどの方が既に知っています。知識があるにもかかわらずうまく英語でしゃべることができないのは、実際にその知識を使った経験に乏しく、実用的な知識として身についていない「知識肥満症」です。その状態で単語などを覚えても、活用できない余計な知識が増えてしまうだけなのです。

    大切なのは、新たなことを覚えようとする「足し算」ではなく、むしろ「引き算」です。余計な知識は一旦忘れてしまい、自分が既に知っている知識を最大限に生かすところにフォーカスすることをオススメします。

    また、いくら学んでも、英語がうまく話せるようにならないことから「英語は難しい」と思ってしまう人も少なくありません。実はそれも勘違いであり、難しいのは英語ではなく、「皆さんの頭の中にある日本語」なのです。

    例えば、山田さんという男性について「彼は頑固だ」と思ったとします。これを英語で表現しようとして“He is...で言葉に詰まってしまうのは「直訳スピーキング病」です。そもそも「頑固な」に当たる英単語(例えばstubborn)は中学英語ではありませんから、知らなくても仕方ありませんし、わざわざ暗記をする必要もありません。ここで、頭の中の日本語をほぐす学習法が有効で、そのコツは「動詞で考える」ことです。頑固な山田さんは、一体何をする/しないのでしょうか?

    例えば「他人の話を“聞かない”」と言えるかもしれません。そうするとlistenという動詞を使って“He doesn’t listen to other people.”のように表現できるでしょう。また、「自分の意見に“固執する”」と考えると“He sticks to his own opinions.”といった英文も作れるかもしれません。こうやって、自分が既に知っている、シンプルな言葉を使って表現しようと心掛けることが大切なのです。

    さて、「既に持っている力を生かす」という視点は、ビジネスや経営においても、共通して大事なポイントだと言えます。ビジネスで、経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報、時間など)が潤沢にあることは稀まれです。リソースが足りない中で、何とか工夫して課題の解決を行っていく必要があり、だからこそ「革新(breakthrough / innovation)」につながるとも言えます。

    英語学習においても、十分な英語力やボキャブラリーを持てる日は(残念ながら)訪れないと考えた方が健全です。外国語である以上、不自由は永遠に付きまといます。ですから、少しくらい足りなくても、既に持っている英語力で「何とかする(manage)」ことが大切です。もちろん、英語力が高いに越したことはありませんが、違いを生むのは、自分が持っている力を最大限に生かすための「発想力」なのです。それがあれば、高めた英語力やビジネスコミュニケーション力をさらに発揮できるようになり、学習という投資へのリターンも大きくなります。

    是非発想力を鍛え、そして、英語力も一緒に高めていってください。そうすることで、ビジネスにおいても、英語を使ったビジネスコミュニケーションにおいても、皆さんがさらなる活躍をされ、そして革新を起こされますことを心より応援しています。

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