YouTuber / 英語発音トレーナー

だいじろーさん

1989年北海道生まれ。立命館アジア太平洋大学に、英語力が必要とされる外国人枠で入学。在学中に香港理工大学とヘルシンキ大学に留学。その後タイへ移住し7年間過ごす。バックパッカーとして20カ国ほどを訪れる。帰国後、2019年に発音系YouTubeチャンネルを開設。学生時代に出会った様々な国籍の人々の英語の発音に衝撃を受け、独学で音声学を猛勉強し、あらゆる言語の発音の研究・モノマネを人生の生きがいにしている。

英語の発音の国ごとの違いをコント風に仕立てた動画などで人気を集める、YouTuberのだいじろーさん。中学生のときに語学研修で行ったオーストラリアで、ネイティブスピーカーのリアルな英語に触れたことで、その面白さに目覚めたそうです。

    2022年11月号

    リアルな英語って面白い
    そのワクワクが発音探究の出発点だった

    2週間の語学研修でカルチャーショック
    英語の面白さに目覚めた

    YouTubeで英語の発音を題材にしたコンテンツを配信しながら、個人や企業向けに「英語発音のコーチング」を行っています。僕自身、ネイティブスピーカーでも帰国子女でもなく、日本で生まれ育った中で英語に興味を持ち、独学で英語を身につけました。そんな経験が少しでも誰かの役に立てばと思っています。

    僕が英語にのめり込むきっかけとなったのは、中学2年のときに参加した2週間のオーストラリア語学研修でした。滞在先はパースの田舎町。地元の人々が、家でも街中でもどこでもはだしで生活していることにまず驚きました。学校生活もまるで違って、教室の机の並びはガタガタだし、服装も自由で、家から持ってきたお菓子を食べていても誰にも叱られない。自分の中の常識がグラグラと崩れて、「国が違うとこんなにも違うのか。世界は広いんだな」と大きな衝撃を受けました。

    英語についても驚くことばかりでした。例えばあるとき、隣の席の子に借りた消しゴムを返そうとしたら、“You can keep it.”と言うんです。「持っていていいよ」という表現に“keep”を使うなんて、全く思いもしなかった。学校で習った英語とは全然違う、ネイティブスピーカーのリアルな英語がとにかく新鮮で、新しい言葉や意外な表現に出合うたびにワクワクしました。

    すっかり英語の面白さに目覚めて、帰国後は英語関連の本を買い集め、映画も英語を意識して観るようになりました。「THIS IS ENGLAND」という映画では、初めてイギリスの労働者階級が話す英語を聞いて、これも英語なのかと驚きました。そこから、オーストラリアの英語はこうだったとか、色々な英語をコレクションしていくようになったのです。

    もともと父が秋田県、母が佐賀県出身ですが、僕自身は北海道で育ったこともあり、子どもの頃から多様な方言に囲まれていました。だから言語の発音やアクセントというものに、人一倍敏感だったのかもしれません。

    『ナマった英語のリスニング』という本をバイブルのように何度も何度も読み返し、映画のセリフを丸暗記したり、外国人とメール交換したり、思い付くことは何でもやりました。勉強というより、英語を知るのが楽しくて仕方なかった感じです。

    ネイティブスピーカーの持つ英語の感覚を意識する

    実は昔から僕は赤面症で、人前で話すのがすごく苦手でした。けれども、高校で行われた英語のスピーチコンテストでは全く緊張しませんでした。英語を話すときは、普段の自分とは別のキャラクターを演じている感覚だったからです。これは僕にとっては大きな出来事でした。英語の力を借りればコンプレックスも乗り越えられる。そう思うと英語の勉強にもますます力が入りました。

    大学2年次に留学した香港では、ネイティブスピーカーの英語の感覚との間には大きな壁があると痛感したという

    高校卒業後は九州の立命館アジア太平洋大学に、英語力が必要とされる外国人枠で入学しました。学生の半数が外国籍で、学生寮には100カ国ぐらいの留学生がいて、様々なアクセントの英語が飛び交っていました。発音を探究したくて音声学を学んでいた僕には理想的な環境です。「100カ国の学生の英語を集めれば、世界の発音コレクションが作れるのじゃないか」などと思い付いて、留学生にインタビューしたりもしました。とはいっても、15人くらいでうやむやに頓挫してしまったのですが。

    授業は全て英語で、寮でも留学生たちと一緒に過ごし、24時間英語漬けの生活でした。大学1年の時点でTOEIC L&R915点を獲得し、それなりに不自由なく英語が使えている気になっていました。しかし、2年次に香港理工大学に留学して、その自信は見事に打ち砕かれました。香港の学生はレベルが全然違った。ディスカッションなどの場面で、彼らと対等に渡り合えるような言い回しが、自分の英語力からは出てこないのです。中学2年のときの“You can keep it.”と同じです。ネイティブスピーカーが感じている“keep”という単語の本質が分からないと、絶対にその使い方はできない。ネイティブスピーカーの英語の感覚との間には大きな壁があると痛感しました。

    それからは、ちょっとした言い回し1つでも気になることがあったら、教科書で習ってきたことはいったん忘れて、何人ものネイティブスピーカーに意見を聞きながら、自分なりに掘り下げて意味や使い方を捉え直すようになりました。ネイティブスピーカーの感覚はネイティブスピーカーに聞くのが一番です。それも1人だと偏った考えもあるので、10人くらいからサンプルを集めると正しいニュアンスが分かってきます。母語でない以上、ネイティブスピーカーの持つ英語の感覚を100%理解することは難しいかもしれませんが、意識することで彼らに近付くことはできると思います。

    発音のエキスパートとして英語学習者の力になりたい

    大学を出て7年間ほどタイに滞在し、2019年に日本に帰国して、YouTube「だいじろー」チャンネルを開設しました。当初は何を発信するか試行錯誤していたのですが、「イギリス人とアメリカ人の発音や言い回しの違い」をコント風に仕立てた動画が注目され、思い切って発音系コンテンツをメインにすると、一気にチャンネル登録者が増えました。正直、英語の発音にこんなにたくさんの人が興味を持つとは思いませんでした。「発音を教えてほしい」という声も多く寄せられて、仕事として英語の発音指導を行うようになりました。

    日本人は英語上級者でも、発音を苦手に感じている人が多いようです。僕自身の経験から言うと、英語の発音は1人で練習しても限界があります。自分の声を録音して自分で聞いても、何をどう直したらいいかが分かりません。やはり第三者から客観的、論理的にフィードバックをもらうことが、効率よく発音を習得する近道だと思います。

    自分の興味にまかせて、中学生の頃からずっと英語と向き合ってきました。それが今こうして仕事になり、人から必要とされるようになったのはとてもうれしいことです。これからも発音のエキスパートとして、英語だけでなく世界のあらゆる言語の発音を研究し、発見したことを面白おかしく日本の皆さんに紹介していくつもりです。そしていつか本当に、『世界の英語発音辞典』を作り上げられたらいいなと思っています。

    98万回以上再生された「話が噛み合わないアメリカ人とイギリス人コント」

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