One Step Forward
SDGsを身近に感じ、次なるアクションを考える
SDGsの達成に向け、多方面で様々な努力が行われている中、IIBCは、SDGsを身近に感じることで、具体的にどういう行動を起こすべきかを考え、 参加者全員でアイディアを共有していくことを目的にしたイベント「One Step Forward」を開催してきました。そのコーディネーターである宮川南奈氏に、イベントに対する思いや具体的な内容について話を伺いました
SDGsを身近に感じ行動を起こしていく“きっかけ”を提供
私の原体験は、幼少期にインドネシアに渡ったときのことです。現地に降り立ったとき9歳だった私は、豪邸が並ぶ横で車に寄ってくる物乞いの子どもや裸足で歩く人を目の当たりにし、言葉にできない感情でいっぱいになりました。涙が止まらず、今でもあのときの感情を一言で表すことはできません。この頃から、自分はいつかこんな環境を変えたいと考えました。
大学に進学した後は、文部科学省が展開する「官民協働海外留学創出プロジェクト トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」のトビタテ生(奨学生)として留学し、外から日本を見ることで日本にも多くの課題があることに気付き、社会をよくしたいと思う対象は新興国から日本へと変化しました。
卒業後は就職先の本業以外にも、廃棄予定の花に新たな価値を生み出す活動や、ソーシャルベンチャーでのお仕事など、SDGsに貢献できることを実践してきました。現在は、主に中学・高校生を対象とした探究学習やキャリア教育プログラムを提供する仕事をしています。多様な分野の社会起業家の方々を講師としてお招きし、生徒さんが自分ならどのような行動を起こすかといった企画提案をアウトプットするプログラムなどを多く展開しています。社会で起きている様々な出来事を自分事として捉えることができる場を提供することが、私の活動の軸になっています。
One Step Forwardのコーディネーターになったのは、私がトビタテの事務局のお仕事を通じてご縁があったIIBCの方から声をかけていただいたことがきっかけで、自分が行っている活動と親和性が高いと思い、企画構想から携わりました。ディスカッションを重ねる中で、「SDGs」という言葉はよく耳にするが、自分事として捉えることができず、具体的な行動に移せていない方が多いのではないか―。そのような方たちが、何かアクションを起こしてみようと一歩前進する、その後押しができるような場を作りたいというコンセプトにたどり着きました。その思いを「One Step Forward」という名前に込め、SDGsを身近に感じ、具体的にどういった行動を起こすべきかを考え、互いの感想や小さな行動宣言を共有することを目的にしたイベントにすることが決まりました。
新たな行動を起こしていくにはまずは知り、自分事として捉えることが重要
One Step Forwardでは、90分間のうち前半はゲストによる講演、後半は参加型の形式で参加者が双方向的に交流する時間を設けています。参加者は、大学生や若手社会人をメインに想定。ゲストには、20~30代で越境体験があり、SDGsの17のゴールのどれかに当てはまるような活動をしている方をお招きしています。起業家や、NPOに所属している方、海外を拠点に活動している方など様々で、多様な働き方や社会問題などがテーマになることを意識してお声がけしています。また、イベントを告知するときには、SDGsの17のゴールのうち、どの内容に該当する講演なのかが分かるような工夫も行っています。
イベントの最後に、明日から起こすアクションを参加者の方に宣言していただく時間があり、そのときに皆さんが様々な行動を発表してくださるので、喜びをかみ締めながら運営できています。
参加者の中には連続参加の方もいて、「自分にとって未知の世界を知るきっかけとなり、とても勉強になった」という声もいただいています。年代を問わず、新たな行動を起こしていくために大切なのは、まずは社会で起きていることを知り、自分事として捉えていく経験を増やしていくことです。そのようなきっかけとなる機会を、これからも提供していきたいと考えています。
また、さらに広い社会のことを知るためには、海外に出て、自分の知らない世界に触れることも重要です。自分とバックグラウンドの異なる人や、価値観が違う人たちとの対話から生まれる気付きや発見は大きく、皆さんにとって掛け替えのない財産になるはずです。
第4回 One Step Forward
サッカーを通じてインドの子どもたちの夢実現をサポート
2023年4月13日に開催した「第4回 One Step Forward」のゲストは、萩原望さんでした。彼は、3歳からサッカーを始め、Jリーグのユースチームや大学のサッカー部で、サッカーに明け暮れる学生生活を送りました。新卒で入社した会社を3年で退職し、国際NGOの駐在員として、インドのビハール州という最貧州に派遣され、仕事の合間にサッカーをしていたところ、子どもたちが集まってきたのがきっかけで、サッカーを教えるようになりました。
現在は外資系会計監査法人のインドオフィスに勤務をしながら、個人の活動として、同州でコミュニティ型のサッカーチーム・一般社団法人FC Nonoを運営しています。このチームでは、サッカーを軸としながら、教育や栄養、アートなどを通して、インドの子どもたちの夢実現に向けたサポートを目指しているそうです。
FC Nonoは、サッカーを通じて努力が報われる社会の実現をミッションにしており、「インドでは自分の努力では変えることのできない要因で将来の選択肢が限定されており、そのような状況に変化を起こしていきたい」と萩原さんは語ります。
子どもたちの自立支援やジェンダー問題の解消を目指し、現在特に力を入れている活動はガールズサッカーです。かつて女の子が外に出てスポーツをすることがなく、将来の夢という概念もなかった村においてサッカーを広めることで、男の子がやっているように、女の子もサッカーができ、夢を持つことが可能だということを伝えています。今では、ガールズコーチをやれるほど、サッカーが上手になった女の子も出てきています。
「第4回 One Step Forward」の開催の様子
これらの話を聞いた参加者たちは感想を互いに伝え合い、SDGsのゴールの1つである「ジェンダー平等を実現しよう」に関して、最近気になっていることや、実際に取り組んでいることなどを共有しました。最後に参加者たちが「大学でSDGsについて学ぶ授業があるので、そこで多様な人の意見を聞き、考えや意見を深めていきます」「情報収集を一生懸命やります」など、これから挑戦していくことを宣言し、「第4回 One Step Forward」が終了しました。
IIBCが行うSDGs達成に向けた様々な取り組み
IIBCは受験生の皆様、社会、職員、さらには地球環境に対し、SDGs達成に向けた様々な取り組みを行っており、その主な内容を紹介します。
1TOEIC Programを通じて
- プライオリティサポートの実施
より多くの皆様が受験できるよう、個別の配慮が必要な方のためのご依頼窓口を設置し、可能な範囲でご希望に沿った受験環境をご提供。 - 受験のしおりの多言語化
TOEIC Listening & Reading公開テストの受験当日に配られる受験のしおりは、英語・中国語・韓国語でも対応。
2環境に優しく
- 問題用紙・解答用紙の再利用
TOEIC Programで使用した問題用紙・解答用紙はリサイクル。 - リスニング用の音源メディアを再利用
TOEIC Program(公開テスト)のリスニングセクションに使用する音源メディアの破棄をなくし、再利用。
3社会に向けて
- トビタテ!留学JAPANへのサポート
「官民協働海外留学創出プロジェクト トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」に寄附を行い、職員を日本代表の選考委員およびメンターとして派遣。さらに2020年度から2年間、職員が事務局に出向し、プロジェクト運営をサポート。 - 高校生を対象としたエッセイコンテストの主催
高校生が多様な文化や価値観に触れ、相互理解の大切さを考える機会を創出し、高校生の英語学習に貢献。 - ブックバトンプロジェクトへの参加
職員が読み終えた本を寄附することで、「子どもの教育で貧困の連鎖を断ち切る」ことをミッションにした国際NGOの活動に寄与。
4職員に向けて
- 働きがいのある職場環境づくり
職員の自己成長支援を目的とした研修やキャリア相談の充実に取り組む。 - 女性活躍の推進
性別を問わず平等に出産・育児・介護をしながら仕事を続けることができるよう、全職員が活躍できる働きがいのある職場環境づくりに努める。 - コンプライアンスの推進
事業活動全般における行動基準および倫理基準を明文化し、法令・規定・社会規範の遵守、個人情報保護の徹底、ダイバーシティの尊重、ハラスメントの禁止などの遵守事項を全職員へ周知するとともに、定期的な教育を実施。
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