2024年3月号

    美術と英語の融合で実践的な発信力を高める「Art English」

    遊びを持たせたアウトプット型学習

    様々な立体芸術や絵画作品が校内を彩る女子美術大学付属高等学校・中学校では、“日本で唯一の美術大学付属校”という特色ならではの英語教育が行われています。それが、2019年度よりスタートしたオリジナル科目「Art English」です。美術と英語を融合したこの授業は、通常の英語授業と並行する形で週1コマ、中高6年間にわたって展開されます。

    そのコンセプトについて、英語科教諭の黒川路子氏は、「美術やアートは、世界中でメッセージ性を持ち得る媒体です。それを世界の共通語である英語で発信できれば、将来の活躍の幅も広がってくるというのが、根幹にあります」と語ります。

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    女子美術大学付属高等学校・中学校 英語科教諭
    黒川 路子氏

    発信力の向上に軸足を置く「Art English」。その最終的なゴールは、高校3年で行う卒業制作について、作品の魅力やこだわりを英語でプレゼンできるようになることです。

    英語科と美術科の教員が協働で作成したオリジナル教材も、この目標に向け、アウトプットに重きが置かれています。作成にあたってこだわったのは、「遊びを持たせる」こと。単に英語と美術を組み合わせるのではなく、その上で生徒が楽しんで学べるアクティビティとなるように工夫が凝らされています。

    例えば中学では、お互いがアニメのキャラクターになりきって、相手の名前や趣味を尋ねる表現を学びます。また文法学習では、「不定詞表現を使って4コマ漫画を作る」といったユニークな授業も行われています。

    「生徒たちは漫画を描くのが大好きなので、毎回締め切りに追われた作家のように、アイデアを絞り出しています。彼女たちが好きなことと絡めているので、同じ英語であっても苦手意識が芽生えづらいのかなというのは、見ていて感じるところです」

    さらに、これらアウトプット型の学習と併せて、中学1年の段階から美術用語の知識を蓄積し、言語化が難しいアート領域について語れるようになるための土台を築いていきます。

    熱量があるから発信したい欲求が上回る

    高校に上がると最終的な目標に向け、美術知識の専門性に加え、アウトプットの比重もより一層高まります。

    ある芸術家の作品について、色・形・線・質感などの英単語を駆使して説明する授業が行われるのが1年生。2年生では、自作のゲーム・おもちゃについて英語でプレゼンする授業が設けられています。生徒は企業の開発担当者さながらに、対象年齢や遊び方などをプレゼン。授業の最後には、自分がやりたいと思ったゲーム・おもちゃにみんなで投票し合うことで、モチベーションアップにつなげています。

    生徒の反応について黒川氏は、「毎年こちらが驚かされる」と言います。

    「1年目に担当した高校1年生は、『英語でお芝居をしましょう』とだけお題を振ったら、モネやセザンヌといった自分が演じる役の人形を作ってきました。『え、1週間もなかったけど……』とびっくりさせられて。ほかにも、ゲームのプレゼンのときには自分でアプリを作ってきた生徒もいたりして、毎年思いがけないものが返ってきます」

    予想以上の意欲的な姿勢には、次の理由があると語ります。

    「彼女たちは絵を描くことや作品を作ることに対して、すごく熱量がある。そこに英語という条件を1つ課したとしても、その負荷より、自分の好きなことを発信したい・表現したい欲求が上回るのかなと。そう感じています」

    遊び心と活気にあふれる「Art English」は、英語科と美術科がアイデアを出し合い、毎年アップデートを続けています。

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    英語での劇に向け、高校1年生の生徒が紙粘土で作った人形。左からセザンヌ、ドガ、モネ、ルノワール

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