活用事例
京都市教育委員会
グローバル化時代に対応する世界へ発信できる英語力の育成
~小中高教員の英語力の指標としてTOEIC® Programを活用~
グローバル化時代に対応する実践的な英語力の育成
京都市では、「一人一人の子どもを徹底的に大切にする」という教育理念のもと、学校教育の年度ごとの指針とその重点取組を定めた『学校教育の重点』を策定しています。幼稚園、小学校、中学校、小中学校(義務教育学校)、高等学校、総合支援学校はそれに基づいたグランドデザインを策定し、学校経営の柱としています。
その中でも、「グローバル化時代に対応した実践的英語力の育成」として、京都の素晴らしさや自らの考えを世界に発信できる英語力を育成するため、小・中・小中・高等学校を通じた英語教育の充実を図るとともに、ALTとのティーム・ティーチングをはじめ、日常的に英語に触れる機会や、英語によるコミュニケーションが求められる環境を意図的に設定しています。
具体的には小学校では、実際に英語を用いて互いの考えや気持ちを伝え合う言語活動を通して、コミュニケーションを図る素地・基礎となる資質・能力を育成することを目指しています。また、高学年の「外国語科」・中学年の「外国語活動」に加え、独自に低学年も「英語活動」として1年生10時間、2年生15時間の授業を実施し、全学年が小学校英語の学習機会を得られるようにしています。さらに、2015年度から小学校英語教育推進コースとしての採用枠を設け、本市英語教育を推進する一定の英語力を有した教員の確保を行っています。
また中学校では、英語によるコミュニケーションを図る資質・能力を育成するため、授業は英語で行うことを基本とし、小学校期での学びを踏まえつつ、学習した語彙や表現などを実際に活用して、互いの考えや気持ちなどを英語で伝え合う対話的な言語活動や、パフォーマンス課題などを重視しています。
高等学校の外国語科では、自らの考えや意見を発信・提案するなど、積極的に活用する能力を養うとともに、英語による言語活動の充実・高度化に向けた実践を積み重ねることを指導しています。
中高英語科教員に求められる英語力はCEFR B2レベル
グローバル化に対応した教育環境づくりとしては、2013(平成25)年12月に文部科学省より、「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」が公表され、中学・高等学校の英語科教員に求められる英語力として、CEFR B2レベル(TOEIC L&R730点相当)が設定されました。
本市はその方針に伴い、中高英語科教員を対象に、教員自身の英語力・指導力向上を目的とした研修を実施し、2015年度よりTOEIC Listening & Reading Test(以下、TOEIC L&R)の団体特別受験制度(IP:Institutional Program、以下IPテスト)を導入しました。
TOEIC L&Rを導入した理由として、(1)社会的な認知度が高く、受験者も多い(2)公平で妥当性があり信頼性の高いスコアが得られるよう品質を厳格に維持している(3)合否ではなくスコアで結果が出るため、自身の英語力把握やスキルアップの指標にも有効であるという3点が決め手となりました。
2020年度には、文部科学省の要請ラインである中学校50%以上、高校は75%の取得目標を達成しました。
2020年全面実施
教科化に伴う小学校の英語教育の現状と課題
2020年4月より、英語教育は中学・高校だけでなく、全国の小学校で全面実施されました。学習指導要領の改訂により、3・4年生は「外国語活動」が必修化し、5・6年生は「外国語」の教科として導入されました。それに伴う指導改善は、移行期間も含めて研修を重ねてきた中で少しずつ図られつつありますが、依然としてチャンツやゲーム練習中心の指導や児童の実態に即した工夫のない指導書通りの指導、音声ではなく文字に頼った指導などが散見されているのが現状です。
教科化に伴い、評価の在り方が課題として挙げられがちですが、適切な評価は適切な指導の下になされる必要があり、小学校英語に携わる全教員がさらなる指導改善の必要性を理解し、実践することが喫緊の課題であると考えています。
英語での指導に不安や苦手意識を抱える小学校教員
こうした状況の中、指導改善で大事にしたいことの1つが「言語活動を通した指導」です。「聞くこと・読むこと・話すこと・書くこと」の言語活動を実施する際に、教員は英語を用いてやり取りをしながら児童の思いや考えを引き出せるように指導することが求められます。
しかし、学習指導要領移行期間中に実施した研修の様子やアンケート結果から、英語でのやり取りに対する強い不安や苦手意識を抱える教員が一定数いることが浮き彫りとなりました。これらの不安や苦手意識を軽減・払拭するためには、教員の英語力向上は重要です。
指導力向上だけでなく、教員自身の英語力向上に特化した研修の必要性
本市では小学校1年生から外国語教育を実施するため、全教員が一定の英語指導力を有することが望ましく、教員自身が英語を学び直す機会が必要であると考えました。そこで、2019年度に小学校教員向けに指導力及び英語力向上を図るための研修を充実させました。
教員の英語力は、教材研究で使用表現を確認することや、児童に届く簡単な英語を用いて授業を進めるなど、指導過程において自ずと向上させることも可能ではあります。しかし、英語でのやり取りに対する不安や苦手意識を軽減するきっかけ作りが必要であると感じたため、指導力向上を目的とする研修だけでなく、教員自身の英語力向上に特化した研修として位置づけ、実施しています。
資料は小学校、全校種を対象とした英語に関する研修施策です。研修を通じて自己研鑽し、自ら学ぶ意欲と広い視野を持ち続けるために中学・高校の英語教員も含め、各種研修に取り組んでいます。特に本市では研修対象を「小中高総」と広げ、校種間連携を意識した研修や教員自身の英語力向上を目指す研修を設定しています。
小学校教員には日常的な内容を扱うTOEIC Bridge® L&Rを実施
そして、教員自身の英語力の把握やスキルアップの指標となるTOEIC Bridge Listening & Reading Tests(以下、TOEIC Bridge L&R)のIPテストを導入しました。TOEIC L&Rと比べ、問題数も少なく、日常的内容を扱っているTOEIC Bridge L&Rは、小学校教員に受験しやすいと考えました。
研修やテスト受験を通して、教員の学び直しのきっかけを提示することで、教員が英語使用への不安を軽減し、児童と英語でのやり取りを楽しむことへつながると考えています。
実際、英語力向上研修のアンケートでは、「自身のスキルアップを図り、指導に活かしたい」「苦手を克服するためのヒントが得られた」「久しぶりに自身のスキルアップのための英語の学習ができた」という前向きな声が数多く寄せられました。
学び直しのきっかけとなる研修と英語力の指標としてのTOEIC® Program
現在、学び直すツールは多様に存在しますが、本市では英語力向上に特化した研修をきっかけに、「授業で用いる英語に自信をもつこと」「ALTとコミュニケーションを図ること」などを目標とし、自身も英語学習者としての再スタートを切った教員が増加したと考えています。
その変容を数値で可視化できないものの、研修レポートや訪問指導において、英語力への不安を訴える教員はほとんど見られなくなりました。また、クラスルームイングリッシュや単元の新出表現、既習表現を中心とした「児童に届く英語」を用いた授業を進めようとする教員が増えているように感じます。
今後も教員自身の英語力の変容や成長を実感するための指標として、TOEIC L&R、TOEIC Bridge L&Rなどの外部英語資格・検定試験を活用することは意義があると考えています。
(2021年11月取材)
(テスト名称を含め掲載情報は取材当時のものです)
TOEIC L&Rのデータ・各種資料
TOEIC S&Wのデータ・各種資料
TOEIC Bridge L&Rのデータ・各種資料
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