活用事例
関西テレビ放送株式会社
【オンライン方式事例】
多様化するテレビの未来に向けて
地域に密着するカンテレのグローバル化
-TOEIC® Testsで実践的な英語力を育成-
コンテンツ統括本部 コンテンツデザイン局
統括管理部 部次長(国際) 端崎 優子氏
65周年を迎える地域密着の準キー局
弊社は1958年の開局以来、地域に密着した会社として歩み、2023年11月22日に65周年を迎えます。本社は大阪で、近畿2府4県を放送エリアにもつフジテレビ系列の準キー局です。ドラマ、バラエティ、ニュース、スポーツ番組の制作・放送を行うほか、舞台芸術や展覧会などのイベント、映画事業も手がけています。近年では動画配信事業にも注力しています。社員数は約560名で、海外の報道拠点として上海に支局をもち、ロサンゼルスとパリにも特派員を置いています。
グローバル対応への必要性の高まりを受け、TOEIC® L&R IPテストを2014年に導入
地域密着型の関西テレビですが、数年ほど前からグローバルな業務対応の必要性が急激に高まっているように感じます。背景としては、政府が進めるクールジャパン政策に伴うインバウンド・アウトバウンドの需要拡大をはじめ、インターネット・コンテンツの増加、海外オンデマンドプラットフォームの導入による放送のボーダーレス時代への突入、大型国際イベントの日本開催決定などが挙げられます。なかでも大阪・関西万博は在阪のマスコミとして海外に関西を広くアピールする役割をしっかりと果たしたいと思っています。
こうした中、弊社としても海外版ドラマの制作・販売が拡大していますし、さらには海外向け番組の開発も検討しています。これまで国内だけで仕事をしていたディレクターやプロデューサーであっても、海外企業との打ち合わせを求められるようになったり、技術職も海外での放送機器展への視察やシステムの売り込みなど番組制作、取材、ビジネス展開と多くの分野で英語が必要な場面が広まっていると実感しています。
そこで弊社では、社員の英語力把握・強化のために2014年から TOEIC Listening & Reading Test(以下、TOEIC L&R )団体特別受験制度( IP:Institutional Program、以下IPテスト)を導入しました。TOEIC L&Rはビジネスレベルに適している英語テストであり、評価基準が分かりやすく、異なる英語レベルの社員が同時かつ気軽に社内でテスト受験が可能なため、マネージメントがしやすいことも導入の決め手となりました。
オンライン方式への切り替えで受験者数が回復
TOEIC L&R IPテストの選定自体は円滑に進んだものの、具体的な実施については他社事例を参考に実施形態・対象を模索していました。人事担当が英語研修実施を担うケースが多いかもしれませんが、弊社は人事査定とは切り離して、純粋に社員の英語力向上を目的とした「任意受験」とし、当時、私が所属していた報道局の国際業務班が担当することになりました。
特に若手社員に英語力を伸ばしてほしいという思いもあったため、新入社員は入社後必須受験としたほか、当初は45歳までの受験年齢制限も設けました。年齢制限はその後社員の要望もあって撤廃しましたが、年齢問わず英語学習やスキルアップを望む方は多いのだと実感しました。
告知は、役員も含めた全社員宛の一斉送信メールを受付前、受付中、そして締切直前の3回配信し、英語の必要性を訴えるとともに、「英語力レベルチェックのような気軽な気持ちでチャレンジしてみてください」と受験のハードルを下げる案内を心掛けました。英語の必要性を日々実感している国際業務班がテストの運営と告知を行うことで、なぜ英語が必要なのかというメッセージがダイレクトに伝わったと思っています。
また、実施時間の工夫として人事部門と連携し、受験機会を平日の就業時間内と、就業後、土曜日の朝と計3回設けました。なお、無料で受験できることが十分なメリットと判断し、受験を促すためのインセンティブは導入していません。
2014年9月の初回は予想を上回る社員が受験しましたが、その後は不定期開催や時間が取れないためか徐々に受験者数が減り、最も少ない時で試験官と受験者のマンツーマンということもありました。さらにコロナ禍の追い打ちもあり、実施継続を迷っている中、利便性の高いIPテスト(オンライン)があることを知り、2020年よりオンライン方式に切り替えました。実施時間は2時間から1時間になりましたし、いつでも受けられると好評です。そこから受験者数が回復し、昨年度の受験者数は過去最高でした。受験者の属性として、年齢は幅広く分布しており、職種もアナウンサーから、技術職、営業職など部署を問わず受験しています。直近の2022年度のTOEIC L&Rの平均スコアは683.5点でした。
TOEIC® S&W IPテストも導入し、さらなるレベルアップへの刺激に
2022年からは個人的に念願だったTOEIC Speaking & Writing Tests(以下、TOEIC S&W) IPテスト(オンライン)も導入しています。こちらも任意受験とし、問題内容にも簡単に触れつつ全社員に告知して、TOEIC L&RかTOEIC S&Wか自身のレベルにあったものを選んでもらっています。
英語の理解力は高いはずなのに、いざ話すとなると完璧な英語を求められると思うのか自信がなくなるという方は多いのではないでしょうか。すごくもったいないですよね。特に私たちの仕事は、どのような業務であっても人間関係やコミュニケーションをいかにするかが業務の根幹だと思っていますし、英語というせっかくの発信技能があと少しできるようになれば、より高いレベルの仕事ができると思っています。そういった思いから、ぜひともTOEIC S&Wは導入したいと思っていました。
初回の3月には予想以上の社員が受験し、平均スコアはSpeaking で122.7点、Writingで157.3点でした。Writingは業種別平均スコアで全国1位だったようで、大変驚きました。弊社の場合は任意受験ということもあるとは思いますが、これもTOEIC L&Rを2014年から継続してきた成果だと思いますし、確かな英語力があることの証になると思うので、ぜひ自信につなげてもらい、海外の仕事を率先するきっかけになればと思っています。
受験者からは、「難しかった」という声も多かったのですが、「現在のレベルが分かってよかった」「もっと勉強したいと思った」といった前向きな反応もあり、社員の新しいチャンレンジがしたいという気持ちを刺激し、レベルアップへのやる気を促す効果があったと思っています。
TOEIC® Testsの定期的な実施が英語力アップの好循環を生む
TOEIC Tests(TOEIC L&RとTOEIC S&W)を年2回受けただけでは英語が話せるようにはなりませんが、それに向けて勉強することが大事だと思っています。その勉強は各自の取り組みに任せている状況ですが、中にはTOEIC L&R500点台から一念発起して独学に励み、翌年には800点台に上がった社員もいます。TOEIC Testsの定期的な実施で「そういえば英語の勉強をしなくては」という意識を喚起するきっかけにもなりますし、明確なスコアがわかることで成長を実感し、次の目標が設定でき、やる気がアップするような好循環を生んでいます。
海外賞の授賞式の際に英語でのインタビューにしっかりと答え、壇上でスピーチしたディレクターや、フランスのカンヌなどで開催されるテレビ番組の見本市で商談や新作ドラマの発表をしてきた社員などから、「TOEIC Testsの勉強が非常に役に立った」という声を多く聞いています。
私自身も番組の英語版制作の際には、心に刺さるような英訳を心掛けて台本を翻訳したりしますが、TOEIC Testsの勉強が非常に役に立ったと思いますし、こうした経験を一人でも多くの社員に引き継いでいきたいと思っています。
継続が社員の理解と結果につながる
IPテストの実施については、報道局の国際業務班を経て、現在はコンテンツデザイン局統括管理部が担当しています。前述した通り、人事部門ではない部署が担当することで、社員が人事査定を心配することなく受験できるようにしています。もちろん個人的には人事部門主管で全社員受験してほしい思いもありますが、英語の必要性を理解してもらったり、潜在能力を引き出したり、英語へのモチベーションを維持したりするのに、弊社としては現在の任意受験という方法が合っていると思っています。企業によってふさわしい導入方法はそれぞれだと思いますが、人事担当でなくとも実施・運営は可能ですし、特にIPテスト(オンライン)は手軽です。そしてテストを継続することで、社員の理解も深まり、結果が伴うと確信しています。
現在は私一人でテスト実施を担当していますが、受験者数が少なかったときは本当に孤独でつらい時期もありました。しかし、将来会社でも必ず英語が必要になるので社員のために継続しなくては、と勝手な確信と情熱で走り続けてきた感じがします。個人的な思いとしては今後、TOEIC S&Wにより重きを置いてスタディツールの導入も検討するといった取り組みができればと考えています。社員に英語をより身近に、もっと気軽に感じてもらいたいですし、そんな英語への情熱をお渡しできるような取り組みをしていきたいです。
(2023年9月取材)
(テスト名称を含め掲載情報は取材当時のものです)
TOEIC L&Rのデータ・各種資料
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