活用事例
株式会社ホテルオークラ神戸
さらなる向上を目指すオークラのおもてなし
-実践的な英語力を測るTOEIC® Programを英語研修で活用-
管理部総務課 課長 櫻井 紫帆子氏
港町・神戸のランドマークホテル
当ホテルは東京のホテルオークラ オープン25周年の記念事業として1989年にオープンしました。六甲山系をはじめ神戸港を一望する立地で、神戸のランドマークホテルとして親しまれています。社員数は約310名で、そのうちの約半数が直接お客様と接する業務に従事しています。
インバウンド増加で高まる英語での接客対応
当ホテルの訪日外国人旅行者の比率は2,3割ほどですが、直近では2025年の大阪・関西万博でさらに注目が高まり、増加傾向にあります。
当ホテルでも、フロントは当然ながら、レストランやビュッフェ会場などで英語での対応が求められる場面は常にある状況です。英語対応が業務上必要なスキルであると考え、2010年から希望者を対象に英語研修を始めました。英語研修は週1回約1時間、英語母語話者を講師に招き、現場での業務に即した実践的な英語を学ぶというものです。
英語研修の一環でTOEIC® L&R IPテストを導入
英語研修の中で、英語資格補助の一つの指標としてTOEIC Listening & Reading Test( 以下、TOEIC L&R )団体特別受験制度( IP:Institutional Program、以下IPテスト)を2017年に導入しました。600点以上のスコアを取得した人には、受験費用の半額を会社が支給するという基準も設けて挑戦する人を募り、2018年、2019年と継続しました。残念ながら2020年はコロナ禍により英語研修も含め、中断しました。
他の英語資格では観光英語検定も実施していましたが、比較するとTOEIC L&Rは英語コミュニケーション能力をスコアという形で細かく正確に確認できること、希望の日時や社内での受験が可能であるなど実施のしやすさが大きなメリットだと感じています。結果が合格・不合格で示されるのではなく、スコアとして現在の力を確認できることが、今後の目標を明確に設定し、意識することに役立っています。
IPテスト実施以前から、TOEIC L&Rのスコアを新卒採用の選考基準の一つとし、また高い英語力を求められるフロントへの配属希望者には730点ぐらいのスコアが必要だと感じていた経緯もあり、導入に際しての社内の理解は円滑に得ることができました。また、実践的な英語を求められる職場だという共通認識が社員一同形成されているので、英語力を測る指標としてTOEIC L&Rを導入することはごく自然だったと思います。
新入社員対象の英語研修を再開
当ホテルの英語対応の現状として、英語が苦手な社員もおり、外国人のお客様からの質問に対して英語が堪能なスタッフを探して引き継いだ結果、簡単な質問に時間を要してしまうこともあります。また、フロントに限らず、例えば調理部門がリクエストに応じてオムレツを作る際に、英語でのやり取りをすることがあります。このように英語の堪能なスタッフに負担の比重が傾きがちな状況や、どこの部門でも起こりうる英語対応に備えておくことがサービス向上にもつながると考えており、全体的な英語スキルの底上げが必要だと感じています。こうした課題を解決しようと、まずは新入社員対象の英語研修を2023年から再開しました。さらにコロナ禍で2020年から中断している英語研修やTOEIC L&R IPテストといった英語施策については現在来客数も戻りつつあり、再開を検討しているところです。
新入社員対象の英語研修のレベル分けで、TOEIC Bridge® L&Rを初実施
新入社員対象の英語研修を再開させるにあたり、クラスのレベル分けを新たに盛り込もうと、レベルチェックのためにTOEIC Bridge Listening & Reading Tests(以下、TOEIC Bridge L&R)IPテストを導入しました。新入社員は大卒だけではなくて高卒や専門卒のスタッフもおり、英語学習はこれからの社員がほとんどですからTOEIC L&Rより取り組みやすいTOEIC Bridge L&Rを選びました。
TOEIC Bridge L&Rは、問題が日常生活にフォーカスされた題材で分かりやすく、接客業務における英語力と親和性が高いです。リスニングスピードもゆっくりですし、1時間で受験できるというボリュームもレベルチェックには最適だと感じています。
2023年度の新入社員48名を対象に、入社直後の4月上旬に実施したところ、初めて受験する人からも「楽しかった」という好評の声が多く聞かれましたし、途中で集中力が切れてしまうような受験者もいるかなと少し心配だったのですが、全員が試験時間いっぱい問題と向き合うことができていました。今後の英語学習へのモチベーションも高まったように思います。実施側としても、当日問題用紙を配布して送られてきたCDを再生するくらいで、負担はほとんどかかりませんでした。もちろん、レベルに応じたクラス分けによって、各人に応じた研修内容を提供できることもメリットです。
接客業界に特化したCan-Doガイドを活用
IIBCから出されている接客業界に特化した内容の「TOEIC Bridge L&R Can-Doガイド」も大変参考になりました。このCan-Doガイドは、TOEIC Bridge L&Rのスコアから推定される具体的な「Can-Do(できること)」を把握するもので、スコアレンジごとに「できる」「困難を伴うができる」「できない」という段階的な3項目で接客業務がリスト化されています。
例えば60~83点のスコアレンジでは「自己紹介を聞いて、相手の名前や出身地などを理解できる」「月、曜日、日付、時間を聞いて理解できる」「相手の言っていることがわからないときに、聞き返したり、もっとゆっくり話してくれたりするように頼むことができる」などといった基本的なことが「できる」と設定しています。加えて、「困難を伴うができる」ことも25項目あるので、次に目指すレベルをイメージしやすいです。そこから一つ上の84~100点のスコアレンジとなると、「理由を尋ねる表現ができるようになる」などが「できる」ことに加わり、一歩進んだ“おもてなし”につなげることができます。ここまでできれば日々の業務としてはかなり心の余裕も生まれてくると思いますが、英語のレベルがそこまでは至らず日々ジレンマを抱えているスタッフも多くいます。
Can-Doガイドは、現在どのようなことができるレベルにあるのかが確認でき、そして次の段階に至ることで何ができるようになるのかの指標にすることができるので、新入社員に限らず、個人面談の機会など、フィードバックで広く活用していきたいですね。
TOEIC Bridge® L&Rで変化を追跡
今後、新入社員に関しては、2月にもTOEIC Bridge L&Rを受験してもらい、入社後の英語研修や日々の業務を経て、どのように変化したかを確認する予定です。配属された現場で英語を伸ばすにはどうしたらいいか、それぞれ工夫しながら次に向かって頑張ってくれているようですし、自身の対応可能なレベルが分かる TOEIC Bridge L&R Can-Doガイドを活用し、できることが増えた実感を得てもらいながら、2月の受験でスコアアップとして現れ、自信になってくれることを期待したいです。
部門によって求める英語対応業務・頻度は変わりますので、TOEIC L&R IPテストの再開も検討しつつ、さらに実際に英語を話せるかどうかの指標としてTOEIC Speaking & Writing Tests、TOEIC Bridge Speaking & Writing Testsの導入も含めて、目的とレベルに応じて最適なテストを活用してホテル全体の英語力向上を計画しています。
(2023年8月取材)
(テスト名称を含め掲載情報は取材当時のものです)
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