月刊『HOTERES』(2025年3月号)
英語力トレーニングの効果測定やスタッフの学習意欲向上に貢献
ストリングスホテル東京インターコンチネンタル
WEBサイト

トレーニングマネージャー
兵頭 昌見氏
IHG ホテルズ&リゾーツのストリングスホテル東京インターコンチネンタルでは、ホテルスタッフのトレーニングプログラム強化に注力している。中でも英語については、外国人宿泊者比率が70%を超えていることや外国人スタッフの増加といった背景もあり、多くのスタッフのミッションとして特に重要視しているという。同ホテルでスタッフトレーニングを担当する兵頭 昌見氏にこれまで功を奏したという英語トレーニングについて詳しく聞いた。
取材:株式会社オータパブリケイションズ 岩本 大輝
文:アクセント 写真:林 正
ゲストのこころをつかむには信頼と安心感が必須条件
初めに現在、ホテル業界で抱えている課題についてお聞かせください。
いかにお客さまに信頼と安心感を持っていただけるホテルになれるかが課題だと思います。都内にはいろいろなホテルブランドが混在しており、お客さまは自由に選択できる状況です。ホテル側は選んでいただくためにどうしたらよいかを考えなければなりません。よいサービスを受けたい、楽しい滞在をしたいと考えるゲストは口コミを見て選ぶかと思います。
外国から来られるケースでは日本は安全で清潔な国という期待値が高いと思うので、それ以上の体験をしていただけるよう、スタッフに豊富な知識や対応力があり、安心して滞在できるホテルになることで選ばれるのではないかと思います。
そうした課題に対してトレーニングマネージャーとして昨年(2024年)はどのようなテーマを掲げ、実践をしてこられたのでしょうか。
2024 年は各スタッフがいろいろなことにチャレンジすることをテーマとしました。自身の領域を広げるため知識の習得とともに、社員同士の意見交換を通じていろいろな価値観があることを知ってもらい、その人ならではのサービスアプローチを考えてもらうきっかけとしました。
言語教育にも力を入れており、外国人のスタッフには日本語の敬語やニュアンスの理解に加え、日本の文化を知ってもらうべくロールプレイング形式でレッスンを実施しました。一方、日本人はスタッフによって英語レベルに差があるのが課題です。特にレストランサービススタッフは宿泊部に比べると英語を苦手としている傾向があるので強化を試みています。
日常会話に即したTOEIC Bridge L&R、スタッフの学習意欲向上に貢献
実際のレストランスタッフの英語力強化についてもう少し詳しく教えてください。
昨年はレストランサービススタッフを対象とし、過去に社内で受験したTOEIC Listening & Reading Test(以下、TOEIC L&R)のスコアを参考に19 人を選びました。
オンライン学習ツールのホテルおもてなし英語講座を6カ月間受けてもらい、その間、進捗確認やフォローアップも含めて私がクラスルーム的なトレーニングを実施しました。ロールプレイングなどライブ感ある設定なので、実際に発話をしてみると手応えを感じたと思います。その後、英語力を測る指標としてTOEIC Bridge Listening & Reading Tests(以下、TOEIC Bridge L&R)を公式教材で2カ月間学習した上で、実際にテストを受けてもらいました。
数多くの英語力を測定するテストがある中でTOEIC Bridge L&Rを選ばれた理由は。
TOEIC Bridge L&R はTOEIC L&R よりも日常会話に即したシーンが多く、話すペースも日常会話に近いのでイメージが付きやすく、聞いていても面白いです。完璧に聞き取れなくても状況が想像できるのもよいと思います。現場では完璧ではなくてもお客さまが言っていることを聞き取り、望みを叶えることが重要ですから。
今回はレストランサービスのスタッフを募りましたが、キッチンスタッフからも数人参加したいと申し出てきました。朝食で卵料理をつくるときなどにゲストのオーダーを聞き取りたい、さらに自分から話しかけたいなどの理由でした。外国人ゲストはフレンドリーにホールに立っているキッチンスタッフにも話しかけてこられるので、気の利いた言葉が返せるようになりたいという声もありましたね。
TOEIC Bridge L&R の導入に対してスタッフからのフィードバックはありましたか。
手応えがあったという感想が多かったですね。TOEIC L&R を受験した人の中には、自分は英語ができないと落ち込んでしまう人もいたようですが、TOEIC Bridge L&R は「英語が聞こえるぞ」といった感じで高スコアを取ることができて自信がついたようです。また、聞き取れそうなのに間違ってしまうと悔しさが残るので、学習に対して前向きになったように思います。受講者のスキルアップや英語学習継続のきっかけにもなりました。
英語力強化を含めたおもてなしの向上、“Incredible”な体験価値をゲストに提供
TOEIC Bridge L&R やトレーニングを通じて、スタッフにどのような変化が生じましたか。
これまでは外国人ゲストへの言葉がけが大体決まっていましたが、トレーニングを通して語彙が増えたと感じています。特におもてなし英語にフォーカスして教育したので、より丁寧と感じられる言葉を選び、自分から積極的にアプローチするようになったと感じます。
トレーニングでスタッフのマインドも変わってきたということですね。
ホテルはチームで働いているので、皆が同じ応対ではなく、それぞれの強みを生かした接客ができるようにすることと同時に、周りもそれをリスペクトする環境とチームワークを築くことが重要です。そうすることでゲストもいろいろなスタッフがいておもしろいなど、人間味を感じてもらえるのではないでしょうか。私が以前在籍していたエアライン業界では、接客したお客さまにもう一度お会いすることはほとんどありませんでしたが、ホテルは気に入っていただければリピートしてもらえます。そのため、スタッフには皆さんのファンを増やしてくださいと伝えています。
英語のトレーニングについて課題と感じられることはありますか。
英語を学びたいのだけれども時間がないという人が多いので、チームメンバーを含め、上長も自己啓発を推奨するような雰囲気をつくれるとよいですね。日常業務以外で学習意欲の高い人を認めるという文化が広がるとよいと思います。
最後に今後の展望をお聞かせください。
私たちがステートメントとして掲げる「Tokyo Personally Orchestrated(一人ひとりのゲストに奏でる、東京という音色)」。これを実現するためには、より深くゲストとコミュニケーションを図ることが必要です。英語はもちろん必要不可欠ですが、同時に日本語のトレーニングも行っていく予定です。
また、私達インターコンチネンタルブランドでは「inspire Incredible」を新ブランドカルチャーとして打ち出しました。日本語にすると「心を震わせるインスピレーション」です。
お客さまにとっての「ワオ!」と思える体験は人によって違うので、“Good”や“Great” ではなく“Incredible” が私達の目指すクオリティなのです。お客さまが滞在中、想像以上の体験を得て喜んでくださること。そのためにホテルスタッフの一人ひとりがどのように“Incredible” なサービスを提供するかが今年の目標です。
(2024年12月取材)
(テスト名称を含め掲載情報は取材当時のものです)
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