活用事例
静岡県立大学
1、2年生の英語科目の単位取得の要件に
TOEIC® Listening & Reading Testのスコアを活用
2007年に、英語教育に特化した「言語コミュニケーション研究センター」を設立。全5学部横割りの習熟度別クラスを企画・運営・管理し、1、2年生の英語科目の単位取得要件にTOEIC L&Rスコアを設けています。
言語コミュニケーション研究センター長
特任教授 吉村 紀子先生
導入概要
導入目的 |
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活用方法 |
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導入効果 |
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英語教育に特化した「言語コミュニケーション研究センター」
全5学部横断・横割りの習熟度別クラスを編成
薬学部、食品栄養学部、国際関係学部、経営情報学部、看護学部の5学部からなる静岡県立大学では、2007年に基盤教育の一環として英語教育に特化した研究教育機関「言語コミュニケーション研究センター」を設立しました。応用言語学の修士やTESOL( Teaching English to Speakers of Other Language)を取得したネーティブ教員と、応用言語学などの博士を取得した日本人教員が所属し、カリキュラム作成からテキストの選定、教員の配置まで、5学部の1、2年生の英語科目全てを企画・運営・管理しています。
最大の特徴は、5学部横断・横割りの習熟度別クラス編成です。つまり、同じ習熟度クラスであれば、文系理系を問わずみな同じシラバスやテキストを使って学ぶということです。各学部・各学年には、オーラルコミュニケーションやプレゼンテーション中心の科目と、語彙や文法、イディオム、読解中心の科目の2つの英語科目があり、いずれも習熟度別に編成されています。
この習熟度別クラス編成による英語教育の目標は、3年以降の専門教育に不可欠なアカデミックイングリッシュ、そして、大学生として求められる総合英語力の基盤となるオーラルコミュニケーション力の向上と、中学・高校までに学習した文法知識、語彙力、聴解力、読解力の定着・強化です。
2016年度からTOEIC® Listening & Reading IPテストを導入
単位取得要件にスコアを活用
2016年度からは全5学部の1、2年生を対象にTOEIC L&Rの団体特別受験制度(IPテスト)を導入しました。それまでも、複数の学部でTOEIC L&Rスコアを成績評価などに活用していましたが、単位に直接関係ないため、目標とする平均点をなかなか達成できませんでした。
そこで、TOEIC L&R IPテストの導入と同時に、そのスコアを全学部で英語科目の総合成績に活用することにしました。1年生は前・後期、2年生は前期のみ(国際関係学部は後期も)、対象となる英語1科目の単位取得要件として400点取得を設けました。
学部によって入学時の学生の英語力が異なるため、当初は全学部同じスコアとすることへの反対もありました。しかし、重要なのは高校まで培ってきた英語学習への意欲とモチベーションをさらに高めて、卒業時には、本学学生の英語力を統一して数値で保証することだと考えましたので、全5学部での目標平均スコアを同一にしました。
達成目標を数値化することで、学生の学習意欲が向上
達成目標を数値化して示すことは、学生の学習に対する効果的な動機付けとなりました。今ではテストの約1ヵ月前になると、学生たちが食堂などに集まって一緒に勉強する姿が見られます。
その結果、2017年度には全学部で1年生後期のリスニングの平均スコアが前期の平均スコアを上回るなど、大学生レベルの英語力の定着に成功しました。「日本の学生は大学に入学したら勉強しない」とよく言われますが、学習の目指すゴールを数値化によって明確にすることはこの問題解決に対して意義ある方策だと思われます。
学生からは、就職活動時のエントリーシートにスコアを記入できると好評です。近年は、TOEIC L&R公開テストに限らず、IPテストのスコアでも英語の基礎力が把握できるとして認める企業が増えてきていますので、自らの学習成果をアピールできる良い機会となっています。
TOEIC L&R IPテストは、前・後期の終わりに学部ごとに実施します。導入初年度の前期は400点未満の学生が受験者数の約1割程度いましたが、2018年度の前期は半減しました。学部ごとのテストで達成できなかった学生は、約1ヵ月後に言語コミュニケーション研究センターが実施するIPテストを受験します。加えて、個別に公開テストを受験することも可能です。
学生のTOEIC® Listening & Reading IPテストのスコアから見えてきた課題
本学の学生のTOEIC L&R IPテストの約3年間におけるスコアを分析したところ、ある特徴が見えてきました。それは、リスニングのほうがリーディングよりも平均スコアが高く、スコアの伸び率も良いということです。この傾向は、年度や学部を問わず共通して見られました。
このことから分かるのは、わずか15週間でも毎週90分間ネーティブ講師による英語のシャワーを浴び続ければ、リスニング力が向上、つまり「英語耳」ができてくるということです。一方、語彙や文法などは、学生が系統立てて積極的に学習することが重要であることが分かりました。これらの成果に基づき、使用テキストや指導法などの見直しを順次おこなっています。
変わる日本の英語教育
中学・高校の英語教育に期待したいこと
このことは、現在の日本の英語教育とも関連しています。昔に比べ、授業が文法や語彙、読解よりもよりオーラルコミュニケーションにフォーカスしているのも理由の一つでしょう。しかし、語彙や文法を身に付けるためには、自動詞や他動詞の違いなど、中学校の初期段階から基礎的な言語の概念や項目を系統立てて指導していくことが非常に大切です。
また、英文を正確な日本語に訳して読む指導では、英文を速く読む力は身に付きません。そこでおすすめしたいのが、CDを聞きながら英語を左から右に読む練習を繰り返すことです。まず黙読し、その後音読する。どこが強く読まれているかを意識しながら読んでいけば、強い単語や句が話し手や書き手の伝えたい内容だと気付きます。CDを聞かせながら目と耳と口を使ってリーディングを指導することで、徐々に日本語を介さなくても分かるようになり、リスニングやスピーキング力も育成できます。最初は大変ですが、忍耐強く継続して取り組めば、きっと十分な力を付けさせることができると思います。
大学入試改革を含め、日本の英語教育は今、大きな転換期にあります。初等中等教育が変われば、必然的に大学教育も改革が求められます。一貫した効果的な英語教育によって、英語ができる、グローバルに活躍できる人材を確実に育成していきたいと思います。
(2018年8月取材)
(テスト名称を含め掲載情報は取材当時のものです)
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