「論理・表現」の授業との親和性が高く、成果検証・評価に有用
山梨県立甲府西高等学校
WEBサイト早いフィードバックがその後の意欲向上と学習に有効
TOEIC Bridge® Testsを実施してみて
- スピーキングを重視した授業との親和性が高い
- 英語の授業で今後必要となる内容を把握することができた
- 結果のフィードバックが早く、生徒がタイムリーに自分の実力を知ることが可能
単位制や65分授業による独自の教育プログラム
「自己を知り 自己を深める」を校訓とする本校は、自主性、主体性を尊重した自由な校風で、学習意欲の高い生徒が、山梨県下各地から集まっています。各学年とも定員200名5クラスで、クラスは習熟度別ではなく3年間を通してフラットな編成です。本人の希望や進路に合わせて自由に科目を選択できる単位制を取っており、文理それぞれ多様な科目を開講しています。
2019年には県内の公立校として唯一、国際バカロレア(以下、IB)機構により、IBワールドスクールに正式認定されました。IBのディプロマプログラム(以下、DP)を選択科目の一部に組み込んでいるので、IB資格を目指す生徒だけでなく、一般の生徒もDP科目を選択できる点が特徴となっています。
また、本校ならではの取り組みとして、65分5時限授業を採用しています。それによって年間の授業時間が多く確保できるとともに、1コマが長いため、じっくりとその時間のテーマを掘り下げることが可能です。
英語の授業では発信力を重視
本校は探究活動が非常に盛んで、英語教育においても座学で知識をインプットするだけでなく、自ら考え、知識をどう使うのかという発信力に重点を置いています。
生徒には常に「アウトプットする事がインプット、さらにはインテイクにつながる」と言い続けており、特に「論理表現Ⅰ」はスピーキングを中心として、1つのテーマや解決の必要な問題に対して、どのように合意形成を図っていくかについて、ペアワークやグループワークで考えを深める授業を実践しています。それらにより、自分の主張を伝えるために必要な理由や具体例の挙げ方について学びます。さらに「論理表現Ⅰ」のパフォーマンステストとして、2023年度は、1テーマ30分で自分の考えを文章化するエッセイライティングを、年6回行いました。
「英語コミュニケーションⅠ」の授業も英語で考え、互いに意見を伝え合うことを基本にしています。全体の概要をつかんだ上で、教科書の内容だけでなく、各単元のテーマを、日常生活や社会に関する話題、さらには教科を越えたテーマに結び付けて考えを深めていけるよう工夫をしています。
発信力を評価するパフォーマンステスト
「英語コミュニケーションⅠ」については、年4回の定期試験前に時間を確保し、パフォーマンステストを行っています。紙ベースの定期試験ではなかなか測ることが難しい発信力の部分を、パフォーマンステストによって補うかたちで評価に組み入れています。
一度のテストで全ての単元を評価することができないため、4回それぞれ課題を変えており、2023年度は1回目がディベート、2回目がスピーチ、3回目はライティング、4回目に再びディベートをパフォーマンステストとして実施しました。
ディベートでは、1クラスを10チームに分け、1チーム4人編成でコンスト(立論)、アタック(反論)、ディフェンス(再反論)、サマリー(比較)といった役割を分担し、2チームで30分間対戦してその様子を録画記録します。評価はチーム単位で行いますが、例えば短文だけでなく複文が使えているか、相手の意見を踏まえて発言できているかといったシンプルで分かりやすいルーブリックを作成して、事前に生徒にも提示しています。
TOEIC Bridge® Testsで課題を客観的に把握
例年、外部テストや模擬試験を生徒の学力指標のために活用していますが、今回、TOEIC Bridge Testsを1年生(現2年生)を対象に初めて実施しました。英語の4技能が全て測れ、そのスコアの信頼度も高いことから、全国平均や他校との比較で生徒の実力を客観的に測り、今後必要な英語学習の要素を判断するツールとして利用できるのではと考え取り組みました。
TOEIC Bridge Testsの問題は、身近な生活や日常的に考えているようなことを題材にしている点が、「論理表現Ⅰ」で行ってきた授業とも親和性が高く、生徒たちにとっては取り組みやすかったのではないかと思っています。
特筆すべきは、TOEIC Bridge Testsのフィードバックの早さです。3月に実施してその月にスコアが返ってきたので、生徒の意識が途切れることなく、今の自分のリアルな英語の実力として結果を受け止めることができたようです。
実は普段の授業や模擬試験などから、今回受験した1年生はリーディングの力がやや弱いと感じていたのですが、TOEIC Bridge Testsの結果から改めてその傾向を確認することができました。そこで2024年度は、自主学習の計画表にリーディングを多めに配分しています。TOEIC Bridge Testsは合否ではなく、機能別のスコアが提示されるため、生徒は自身の課題を客観的に把握することができ、自主学習に対する目的意識が高まり、意欲的に取り組むようになりました。
いつ、誰が受けてもスコアがぶれない点が強み
大学生や社会人になるとTOEIC Testsのスコアが必要となる場面も多くなるため、TOEIC Bridge Testsは難易度が違うとはいえ、テストの形式に慣れる意味も含め、今回の実施は、生徒にとって1つの大きな経験値になりました。
TOEIC Bridge Testsはいつ、誰が受けてもスコアがぶれない点が強みであり、もし継続的に受けることができれば、生徒にとって、自身の英語力の経年的な伸長を確かめるいい機会になると思っています。
最近は大学入試や推薦の条件にTOEIC Bridge Testsのスコアを利用する大学が増えているようですので、具体的にどのような大学が導入しているのかといった情報を、入手していきたいと考えています。そうしたTOEIC Bridge Testsの有用性が認識されれば、継続して受験するメリットもさらに大きくなると実感しています。
また今後、英語の発信力がいっそう重視されていく中で、例えばスピーキングテストだけを単体で副教材的に導入することが可能であれば、教育現場にとっては非常に有効なツールになると思っています。
テストを受験した生徒の声
自分の本当の英語力を知ることができた
左から順に、落合 将也さん(2年生)、塩澤 蓮央さん(2年生)、黒木 瑞希さん(2年生)
※テスト受験時は1年生
TOEIC Testsは聞いたことがありましたが、TOEIC Bridge Testsは今回初めて知りました。公式のサンプルテストで問題の流れをつかむ対策は行いましたが、どちらかというとぶっつけ本番のような感じだったため、かえって自分の英語の現時点での実力を知ることができたと思います。
印象として、TOEIC Bridge Testsの問題は基礎的な内容でそれほど難易度は高くないように感じました。スピーキングで写真を見て話す問題があったのですが、日常の一部を切り取った場面で、いつもの授業の延長のような感覚で解答することができました。ただ、リスニングは次々と英語が流れてきたので、途中で集中力が切れてしまいました。
今回TOEIC Bridge Testsを受けたことで、TOEIC Testsはどんな感じなのだろうと、少し興味が出てきています。
(2024年4月取材)