英語学習プログラムの成果を検証。授業内容を改善する指標に
青森県立三本木高等学校・附属中学校
WEBサイト英語科教諭 坂岡 優子氏(右)
TOEIC Bridge® Testsを実施してみて
- ネイティブスピーカーの評価が、生徒の自信につながる
- 設問の設定シーンにリアリティがあり、実践的な英語力を測定する
- 授業内容を改善するための1つの指標になる
「三本木メソッド」という独自の学習法に取り組む
本校は併設型の中高一貫校で、高校では普通コースとグローバルサイエンスコース(以下、GS)を設置しており、両コースともに、2年生から文系と理系に分かれ学んでいきます。
GSでは、2015年度まで5年にわたり実施してきたスーパーサイエンスハイスクールの取り組みを継承し、大学や企業などと連携した探究活動のほか、台湾の高校と英語による国際交流を実施しています。
本校の生徒の学力層は幅が広く、進路も多様なため、高校の英語の授業では、使える英語力(基礎力)の習得を重視。生徒たちには、大学入試で求められる英語力はもちろん、卒業後も自分自身で高めていくことのできる力を、身につけてもらいたいと考えています。
そのため、本校が独自に開発した「三本木メソッド」という学習法を用いて、生徒が「英語を話せる」ということを実感し、それが自信へとつながるような授業を行い、段階的に難易度を上げていきながら、英語の4技能の定着を図っていきます。
教科書の縮約版を使いアウトプットを繰り返す
「三本木メソッド」では、単元の前半において、教科書に掲載されている本文から、重要な部分を抜粋して編集した「縮約版」を使用します。「縮約版」は教科書の本文より文章量が少ないため、英語に苦手意識を持つ生徒も取り組みやすく、総体的に理解度も高まると考えています。本文の要約ではなく「縮約版」を使う理由は、要約してしまうと元の文章とは異なる英文になり、生徒が理解しにくくなるためです。
縮約版を用いた授業では、アウトプットを主にしており、例えば、生徒同士がペアを組み、お互いの読む速さを競う「スピードリーディング」や、ペア相手の縮約版の上にペンを置き、その相手は、英文の一部が隠れた状態で音読をする「ペン・リーディング」などを実施。生徒たちは授業をゲーム感覚で楽しみながら、単語やキーフレーズを徹底的に習得していきます。
これらの反復によって文章の概要を把握した後、覚えた単語やキーフレーズを使ったリテリングを行います。リテリングでは、自分なりにキーフレーズを応用して、相手に伝えたいことを英語で話す力を身につけていきます。
「三本木メソッド」を導入する前に行っていた英文和訳中心の講義型の授業と比べると、生徒の授業への集中度は格段に高まり、「英語が好きになった」という生徒も増えています。
また文法に関しては、授業での解説は最小限にとどめ、生徒にホームワークとして課題を提示し、習得してもらっています。
生徒同士で行う相互評価を採用
「三本木メソッド」を用いた授業において課題となっていたのが、それらの評価方法です。
様々な検証を重ねた結果、現在では、学習目標の達成度を示したルーブリックを生徒に示した上で、生徒による相互評価を取り入れています。例えば、生徒同士がペアでリテリングを行う際には、指定されたキーフレーズの中で、相手の生徒が一定数のフレーズを用いて話すことができたら「A」などと評価し、ワークシートに感想も書いてもらいます。
また、定期試験においては、基本的に授業で行った縮約版の内容を中心に出題することで、文法や語彙力を測定。ライティングについては単元ごとの課題などで評価しています。
本校では、外部試験も定期的に実施しており、その結果を参考資料として見ていますが、客観的な指標として有効だと考えています。そこで今回、これまでとは異なる外部試験にも挑戦してみたいと思い、TOEIC Bridge Testsを初めて実施しました。
ネイティブスピーカーの評価が生徒の自身につながる
学校で行う定期試験は、授業での学習が直接結果に結び付きますが、外部試験は、普段、教員が評価しきれていない生徒の実力がスコアとして分かるため、とても参考になります。今回受験したTOEIC Bridge Testsでも、4技能それぞれの生徒の傾向を細かく把握することができ、予想以上のスコアを取っている生徒がいるなど、新たな発見がありました。教員との評価の違いはどのようなところにあるのかなど、改めて見直していきたいと考えています。
TOEIC Bridge Testsで総体的に評価が低かった技能に関しては、今後、授業時間数を増やすことを検討するなど、授業改善の指標の1つにしていきたいと思っています。
また、他の外部試験では文法の問題が出題されるなど、模試に似たようなところがありますが、TOEIC Bridge Testsは、設問のシーン設定が身近な内容でリアリティがあり、実践的な英語力を測るテストだと感じました。
しかも、スピーキングやライティングのテストではネイティブスピーカーの方が評価しているため、スコアがよかった生徒たちは、実際に自分たちの英語が伝わったという自信につながったのではないかと思っています。
TOEIC Bridge Testsの今後の活用法としては、例えば本校の中高一貫校という特性を踏まえると、高校の授業内容を先取り学習している附属中学の3年生のときに受験し、高校1年生で再度受験するなど、生徒たちのスコアの経年変化を見ることができれば、理想的だと考えています。
テストを受験した生徒の声
世界の人たちと同じ条件で自分の力を試すことができて嬉しかった
左から山谷 つぐみさん(3年生)、里村 優芽さん(3年生)
※テスト受験時は2年生
高校の授業では英語で話す機会が多いため、発音なども意識するようになり、スピーキング力が身についてきていると感じています。また、これまでライティングはあまり得意ではありませんでしたが、授業で身につけた単語やキーフレーズなどの知識を生かすことでライティングができるようになり、苦手意識がなくなりました。
今回受験したTOEIC Bridge Testsの問題は、想像より短い文章が多く、しかも、バラエティに富んだテーマで出題されていたので、楽しみながら問題を解くことができました。どこかで見かけたことがあるポスターに関する設問もあり、実践的な内容だと思いました。
リスニングパートでは、1つの単語だけなら聞き取れますが、文章の中で出てくると理解することができないことがあるなど、自分のリスニング力の弱さを感じたことも貴重な体験となりました。
一方、テストにはアメリカ人やイギリス人など、話者によって英語のアクセントが異なっていることに気づきました。リアリティのあるテストだと思うと同時に、様々な国の人の英語をきちんと聞き取ることの大切さを実感しました。
また、日本だけでなく、世界の人たちと同じ条件でテストを受け、自分の力を試せたことがとても嬉しかったです。
スピーキングでは、思うように話せなかったことが心残りですが、今回の受験で出題の傾向がわかったので、イラストや写真を見てそれを英語で表現するなど、自分なりに学習して、またTOEIC Bridge Testsにチャレンジしてみたいと思っています。
(2024年6月取材)