授業の成果検証や生徒の全国での学力位置の把握に活用
さいたま市立大宮国際中等教育学校
WEBサイト実社会で必要な英語力の測定が可能
国語科教諭 佐々木 優介氏 (左)
英語科教諭 ロイヤル・ランガー氏 (右)
TOEIC Bridge® Testsを実施してみて
- 授業内容との親和性が高いと感じた
- 全国的なレベルとの比較で、自校の強みが分かった
- 日常的なシーン設定が多く登場し、親しみやすい
探究的な学習をベースに、真の学力を育む
本校は、中高一貫で国際的な教育プログラムを実施する、公立の国際バカロレア(以下、IB)認定校です。グローバルに活躍する人材育成を目指しており、生徒たちは、海外の大学に入学するための資格を取得することが可能です。
またIBのプログラムは、探究的な学習をベースとし、国際的な視野に立ちながら、「生涯にわたって自ら学び続ける力」や「自分の頭で考え抜き、新しい価値を生み出す力」といった、「真の学力」を育んでいくことに重きを置いています。
そのため本校では、英語を用いて考える力も養う必要があり、「英語は公用語である」という考えの下、開校以来一貫してその教育に注力しています。
アウトプットに重きを置いた英語教育
英語教育に関しては多くの取り組みを行っていますが、その中でも次の3つが特徴的な活動だと言えます。
1つ目は、「All Englishでのアクティビティ」です。全生徒が毎朝15 分間、例えば全て英語でプレゼンテーションしたり、日記や手紙を作成したりすることなどで、「読む」「聞く」「話す」「書く」といった4技能を養います。この時間は担任が受け持ち、英語科以外の教員も英語を使い実施します。
2つ目は、「All Englishでのアクティビティ」と連動した、週2回・合計200分間(1単位時間を100分で実施)の英語の授業です。朝の15分間で行ったことを下地にしながら、それに関連した内容を考察。教材を用いながら、教員が発した問いに対して、生徒が英語で話し合ったり、考えを英語でまとめたりしながら進めていきます。
3つ目は、本校が独自に築き上げた「English Inquiry」という、英語を使って各教科で学習した内容をお互い関連づけ、より深く探究していく授業で、こちらも週2回・合計200分間実施しています。例えば理科の実験を行った後、その考察や発表を英語で行うなど、英語を使って考え、アウトプットしていくことを主にした授業構成になっています。
その他、グローバルな視点を持ち、異文化を持つ同年代の学生たちとコミュニケーションするといった、海外での体験活動プログラムなども実施しています。
およそ16の評価項目で英語力を測定
このような探究的な学習を実施した結果、生徒たちがどの程度の実力を身につけたのかを測定するため、本校では、通常の中間・期末テストを実施せず、10 〜14時間分の授業を1つの単元とし、それが終わると、各生徒に対してペーパーテストやインタビューなどを行い評価しています。これらの蓄積が総合的な評価となり、いずれの教科も同じ手法で実施しています。
英語に関しては、大きく「聞く」「読む」「話す」「書く」という評価項目に分け、さらに細かい項目を各々に設けているため、全部で16前後に及ぶ項目で測定。例えば「聞く」「読む」の項目では、単純に聞き取れるか、書いてあることを読み取れるかということはもちろん、はっきりとは明言されていないが、内包されている意味も理解できているかといった点も評価対象になっています。
全国的なレベルと比較するために外部試験を活用
一方、生徒たちの実力を全国的なレベルと比較して把握することも重要になるため、外部試験の結果をその指標にしています。現在は、さいたま市で活用している外部試験(英語4技能)を生徒全員が受験しており、全国平均を上回る実力があることが分かっていますが、他の試験でも同じことが言えるのか大変興味があり、今回、TOEIC Bridge Testsを初めて実施することにしました。特に、「話す」「書く」という試験を実施している外部試験は選択肢が限られており、評価の機会を増やしたいという考えもありました。
また本校には、ネイティブスピーカーの教員が十数名在籍しており、日本人の教員たちは、彼らと英語でコミュニケーションしなければなりません。毎朝実施する英語でのアクティビティもありますので、全ての教員にとって英語力は必須です。そのため生徒だけでなく、新しく本校に赴任する教員の英語力を測定するテストとしても、TOEIC Bridge Testsを活用することができるのではないかという別の思いもありました。
授業との親和性が高いTOEIC Bridge® Tests
今回、本校の1~3年生(通常の中学1~3年生)がTOEIC Bridge Testsを受験しましたが、その結果、特にスピーキングとライティングのテストにおいて、全生徒が躊躇せず、スピーディーに問題を解くことができており、かつ、スコアを見ても全国的に高い数値であることが分かりました。日頃行っている授業の成果を実感するとともに、それが強みであることも再認識することができました。
また本校では、伝わる英語であるかどうかを評価することに重きを置いていますが、TOEIC Bridge Testsのスピーキングとライティングのテストでも同様な評価を行っていたため、授業との親和性も高いということが分かりました。
実社会で英語を使うことが求められる今、いろんなシーンにおいてその力を発揮していくことが重要になってきます。そのため授業では、様々なシーンを設定しながら進めていますが、TOEIC Bridge Testsの問題は、日常的で身近なシーン設定がなされているため、それ自体をテキストとして活用していく方法もあるのではないかと考えています。
一方で、スピーキングとライティングに関して、中にはあまり芳しくないスコアの生徒がいることも分かりました。それはな_ぜなのか、原因を突き止め、改めて生徒にフィードバックしていく予定です。
今回、初めて受験しましたが、「またTOEIC Bridge Testsに挑戦したい」と思っている生徒が多くおり、さらに学習意欲が高まったのではないかと、大変喜ばしく思っています。
テストを受験した生徒の声
アウトプットに関して実力が発揮できた
左から順に、松本 乃々葉さん(3年生)、田島 萌楓さん(2年生)
※テスト受験時は2年生と1年生
試験問題に日常的なシーンが多く登場するため、全体的に親しみやすく、スピーキングでも英単語が自然に出てくるなど、授業で身につけた英語力を発揮することができました。
ライティングは、パソコンで入力する解答形式でしたが、普段の授業でも使用しているため、手書きよりも早く入力することができ、修正するのも楽に感じました。
ただリスニングでは、ネイティブスピーカーの話す速度が速く聞き取れないところがあったので、その力をもっと高めていきたいと思っています。
TOEIC Bridge Tests は結果がスコアとして出るため、自分の英語力が数値で分かり、次はもっと上げていきたいというモチベーションにつながっていると感じています。将来は英語を生かした仕事に就きたいと思っていますので、これからも英語力に磨きをかけるために、機会があれば、またTOEIC Bridge Tests を受験したいですし、さらにはTOEIC Tests にも挑戦し、そのスコアアップを目指していきたいと考えています。
(2024年4月取材)