外資系企業人事担当者に聞く、キャリア採用で重視する英語力
公開日:2024年11月08日
外資系化粧品会社 人事業務担当 Tさん(30歳代)
TOEIC Listening & Reading Test(以下、TOEIC L&R)870点のスコアを持ち、より英語力を活かせる仕事を求めて日系企業から外資系化粧品会社に転職しHR(ヒューマンリソース)の業務に携わるTさん。現在、人事評価や新入社員研修、オリエンテーションの業務を担っています。即戦力を求める同社ではキャリア採用が多いそうです。外資系企業では応募者の英語力をどのくらい求めていて、どういうスキルが必要なのでしょうか。外資系企業への転職を志す皆さんに参考にしていただけるように、Tさんが勤務する外資系化粧品会社について伺いました。
外資系企業へのキャリアチェンジに英語力は必須? 求められるTOEIC L&Rのスコアは?
貴社ではやはり採用時に英語力を重視していますか?
ポジションによってどの程度の英語力が必要かは異なっていますが、英語力が必須なのはマネージャークラス以上です。マネージャークラス・ディレクタークラスでは、おおむねTOEIC L&Rのスコアで700点以上を取得されている場合が多いです。一般社員は、グローバルとのコミュニケーションを業務上求められなければ、読み書きが多少できて、日常会話ができる程度でも業務にさほど支障がありません。TOEIC L&Rのスコアですと、だいたい500点台以上を取得している場合が多いです。
英語力の中でもどのような力を求めていますか?
マネージャークラスは英語でのミーティングがあるため、英語を聞き取って英語で発言できること、英語でのメールのやりとりに支障がないことが求められます。すなわち、英語4技能の総合的なスキルが求められています。
マネージャークラスに必要な会話力とディベート力+αのスキルとは?
英語力という点でどのような人材を求めていますか?
弊社はグローバル企業なので、APAC(アジア太平洋)圏内や本社など、他国の拠点とは英語でやりとりをします。たとえば、ブランドマネージャーはブランドをどんなふうに打ち出していくかを考え、グローバルな承認を得ることが必要です。そのため、英語での説明・ディベートができるような人材を求めています。
一般社員は、雇用形態や業務によって求められるレベルが異なります。雇用形態を問わず、パートタイム社員や派遣社員も、日本語より英語が得意な方への対応を要する場合は、社内外のコミュニケーションで英語力が必要になります。
採用面接時の英語力の評価ポイントは?
スピーキング力に関しては社員のグレードにもよりますが、マネージャークラス以上への応募者には英語での採用面接を実施して、どれだけ話せるのかを判断していることが多いです。
評価基準としては、一般的な質問にどれだけ的確に答えられているか、ふみこんだ話への応答の仕方、ボキャブラリーの質などを見ています。あまりにもフランクな日常英語の場合は、ビジネスシーンにふさわしくないため、採用につながらない場合もあります。その他、論理的思考があるか、戦略的思考ができるかなど、ポジションごとに評価基準があります。
英語力が不足していても採用になる場合があれば教えてください。
たとえば、会社の受付窓口担当ですと英語は必須ではありません。ただ、英語しか話せないお客様が来社されるときもありますので、英語が話せるにこしたことはないですね。
店舗の接客要員も英語は必須ではないのですが、インバウンドによって海外のお客様の接客も増えています。英語力が身についているとコミュニケーションに不便がなく、また昇給昇格に結びつきやすいですが、最重要スキルはやはりお客様が求めているものを察するコミュニケーション能力や洞察力です。
英語力が不足していても、この人なら採用したいと思う場合のポイントは?
英語力が多少不足していても、職歴や業務スキルがあって日本語で業務に必要とされているスキルや経験を持っておられる場合、ポジションによっては日本語枠の業務で採用することもあります。ただ、マネージャー以上のクラス、グローバルな職種は英語必須となります。
弊社は、「その人のキャリアステップをどれだけ思い描けるか」を面接の基準に入れています。すなわち、ポテンシャルの高さをよく見ます。英語はそれほど勉強してこなかった人だとしても、「こういう資格の勉強をしてきた」、「こういうことに取り組んできた」と、何かに取り組む心意気が明確にあれば、「英語に興味をお持ちでしょうか」と質問して、そのときの反応を見ることもあります。
英語力を含め社員の成長を評価する社風
入社後の英語研修は実施していますか?
昇格にあたり、会社の福利厚生として語学研修を受けていただくこともあります。たとえば、マネージャークラスや海外とのやりとりがある部門にいる社員などです。また、パートタイム社員から正社員になった人に、よりキャリアアップして別の業務にも携われるように英語研修を受けてもらうケースもあります。
社内では業務以外でも英語に触れる機会は多いと思いますが、具体的な例があれば教えてください。
会社としては、社内にあるオープンな空間でパーティーやイベントを定期的に開催しています。最近は月1度くらいの開催です。社長は「豊かさが感じられる空間づくり」を大切にしており、社内でのコミュニケーションのチャンスをフル活用できる場をつくっています。そういった英語でコミュニケーションを取る場が多々あることは、英語で会社について理解することを深める機会にもなっています。
英語力も含めて、総合的に社員の成長に期待するもの、求めるものは?
総合的な英語力に加えて、自分の意見をどれだけ発言できるのかというアピール力、つたない言葉でもきちんと伝えようとする意志、どれだけその人が成長したのかを評価する社風があります。会社として業績評価時に期待することは、1年間でどのように成長したかということです。たとえば、語学力やコミュニケーション力、業務効率をどのくらい上げられたか、本人が立てた自己実現するための目標にどれだけ近づいたかなどになります。
社員に求めるアピール力とは具体的にどのようなものですか?
会社の中で最も重要視しているのはリーダーシップ力です。一つのプロジェクトを進めるにあたって、プロジェクトにどう関与して、どのようなことをしてきたかなどを見ています。あえて先陣を切るリーダーシップではなくても、得られた結果に対しどのような立役者として関与したのかを評価されることが多いです。
たとえば、社内イベントの裏方業として、登壇者への連絡やタイムスケジューリングなどでとても細やかに動いていたとすると、その一つひとつを上司が詳細に見てくれていて、「こういうところがすごくよかった」と常にフィードバックをもらえるといった感じです。ちょっとした気遣いや発想に対しても評価してもらえる社風がありますね。
社内での評価の仕方について教えてください。
年に3、4回、直属の上司と1on1ミーティングをする制度があります。その中で個々の現在の状況を確認しています。ディレクターとも、社長とも距離が近いですね。普段個室に入っていることが多い社長やディレクターも、ドアが開いていれば、「いつでも入っていいですよ、コーヒーを一緒に飲みましょう」というフランクな雰囲気があるのです。
また、創業者の文化が受け継がれていて、グローバルであることはもちろん、思想・理念がしっかりしています。このような企業は日系企業ではなかなかないかな……と感じています。
弊社では、より自己研鑽する人を評価する傾向があります。自ら手をあげればグローバルなやりとりをするようなポジションに就くこともできます。
入社後、TOEIC Testsを受験することを推奨していますか? また、スコアアップは評価の対象となりますか?
TOEIC Testsは、ビジネスシーンで使える英語を測定できることから、現在、社員の英語力を測るため定期的にTOEIC Testsを受験していただくことを検討中です。実現すれば、社員のモチベーション向上が期待できると思います。また、私自身、学ぶ立場としてビジネスの場でどういった英語が必要で、どういうシーンで活用されるのかがテストの内容で想定されている点がとてもありがたかった覚えがあり、現場で活かせる即戦力にもつながっていくと考えています。
スコアアップの評価については、昇進・昇格に関する英語の客観的な指標として、自らTOEIC Testsのスコアを提出する人もいます。
入社後、英語を使って活躍するには?
貴社では海外勤務になる場合もありますか? また海外出張が多い部署は?
海外勤務も海外出張もあります。海外で実施するマネージャーやハイポテンシャルな社員向けの研修、もしくは新しい試みやイベントで海外視察を兼ねた海外出張が多いですね。また、海外出張で海外の同じ部署に関わった際に課題を引き受けたり、海外支社へ異動したりなど、クロスキャリアの実績もあります。
海外勤務や海外出張を希望することは可能でしょうか?
基本的には、マネージャークラス以上でないとその機会は得られません。ハイポテンシャルな社員の場合は、先述したように海外での研修合宿などの機会があります。ただ、今はオンライン会議が主流になっています。
採用面接時に海外勤務や海外出張を希望される人は多いですか?
必ずしも多くはないですね。海外出張が多いといわれているポジションはいくつかありますが、弊社の場合それを志すというより、「ブランドに魅力を感じている」、「よりグローバルに発展している企業で働きたい」という人が多いです。
入社時は英語力が不足していても、入社後海外業務に就くチャンスはありますか?
入社後英語を使わないポジションで活躍している人でも、よりグローバルに活躍できるように、英語力を向上させて昇格を目指す人も多いです。あくまで、英語を学んでキャリアを積みたいという意志が本人にあるかどうかを重視しています。
外資系企業への転職に必要なものは?
AIの発達が著しい現在、外資系・日系問わず、ビジネスで求められる英語力は今後どのようになっていくと感じますか?
基本的なコミュニケーションとしてはAIより生の声で話すことを大事にしている文化があるので、リスニングとスピーキングではこれまで同様の英語力が求められると思います。リーディングとライティングは機械翻訳を使うこともありますが、ニュアンスが変わり概念が異なってしまうこともありますので、言葉のニュアンスを感じたり、相手が本当に伝えたいことを察したりするためには「人」がニーズとしてあると感じています。
今後も、新卒・中途の採用では英語力が求められるということですね。
はい、そうです。そして、書類選考の際に英語力を判断する上で、客観的な指標となるスコアが書かれていることは必要だと思います。TOEIC Testsはグローバルな指標がしっかりしているため、グローバル企業としては、どこで受けてもスコアが同じ基準なので重視しています。
外資系企業に転職を希望するなら英語力以外に向上させるとよいスキルは?
一概にはいえませんが、弊社の場合から推測すると、どれだけチャレンジ精神を持っているか、ステップアップにがむしゃらになれるか、などが外資系企業では求められる傾向があると思います。
たとえば、弊社では業務などの改善に向けてどのようにアプローチしていくかといった前向きな姿勢はリーダーシップがあるとして、高く評価されます。弊社を含め外資系企業ではマニュアルやオリエンテーションは少ない傾向があるようなので、自ら進んで学んで、提案し、新たな仕事を創造するスキルが重要だと思います。
外資系企業で働きたいけど自分の英語力では難しいと感じている人に向けてメッセージをお願いします。
まず、TOEIC Testsは、自分がどれくらいのレベルなのかを客観的な指標として見るために受験するとよいと思います。
外資系だと敷居が高いと感じるかもしれませんが、弊社ではポジションによって英語が必須かどうか異なっています。英語が全くできないのでなければ、その人がどう成長していくかを見る企業もありますので、英語が得意ではないことを理由に可能性を閉ざさないでほしいなと思います。
そして、面接で「TOEIC L&Rのスコアは400点ですが、これからがんばります」といわれる人がいれば、英語に対する向上心があるかもしれないと判断する指標になります。自分のスコアを把握してそれを向上させる意志を伝えられれば、英語への関心があるということを見せるための武器になります。英語への関心があるのなら、ぜひ積極的にアピールしてください。
外資系企業へのキャリアチェンジ、Tさんからの面接時のアドバイス
- 英語力がどんなレベルでもTOEIC Testsのスコアを武器に
→スコアが足りないと思っても向上させたい意思を伝える - キャリアステップを描き躊躇なく伝える
→本人の意欲は採用時のみならず入社後も重視される - アピール力、リーダーシップ力、チャレンジ精神が重要
→これを意識して自分を表現!
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