“完璧な英語”より大切なのは、「伝えたい!」という気持ち
〜アバナード株式会社 日野紀子さん

公開日:2024年09月11日

ニューヨークでNPO法人を設立し、活動した経験をもとに、外資系企業で社会貢献活動を推進している日野紀子さん。「伝えたい!相手の気持ちを理解したい!」という熱い思いで、コミュニケーションの輪を広げてきたそうです。英語を話す上で大切にしていることを伺いました。

海外に憧れ、ニューヨークの街に魅了された

日野さんと英語との接点について教えてください。

叔母がアメリカ人と結婚していたり、父も英語を話せたりと、英語と接する機会が多い環境で育ちました。旅行代理店を経営していた叔父のおかげで、アメリカやフィリピンなど海外にもよく旅行に行きましたね。最初は英語がどうこうというより、海外のラグジュアリーな世界に憧れました。ご近所にも商社勤務やパイロットなどグローバルに活躍する大人が多くて、子どもながらに「英語が話せるってカッコいいな」と思っていました。

英語がすぐ身近にあったんですね。

そうなんです。叔父の家に行くと朝食にコーンフレークが出てきたのですが、「Another one, please」といえばおかわりをもらえたし、海外の旅行先でお手洗いに行きたくなった時も、「Bathroom」とか「Restroom」と言えば連れて行ってもらえました。英語を話すことができれば、アクセスできる世界が広がることを身をもって知りました。

幼い頃に聴いていた音楽の影響も大きいですね。ジャズ好きだった父が家でいつもジャズをはじめとする洋楽を流していて、MTVも食い入るように観ていました。

ニューヨークに移住された経緯についてお聞かせください。

テレビドラマや映画を通して、アメリカの女性たちは自立していてかっこいいなと感じていました。その影響で自然とニューヨークに住みたいと思うようになり、20歳で初めて現地を訪れました。すっかり魅了されて、「次に来る時は住む」と心に決めましたね。母の病気などもあって、実際に渡米したのはその5年後です。

私は体が大きくて、幼稚園の頃からいつも、背の順で並ぶと必ず一番後ろで、コンプレックスに感じることもありました。ニューヨークでは多様な人々が暮らしていて、体格は関係ないんですよ。コンプレックスから初めて開放されて、とても自由に感じました。価値観が違う世界は楽しかったですね。

「話す」の基本は、コミュニケーションしたいという気持ち

日野さんの英語の学習法を教えてください。

 

渡米前には、NHKテレビの英語学習番組のテキストブックを何度も復習しました。ニューヨークに行ってからは語学学校や大学に通って、『セックス・アンド・ザ・シティ』や『フレンズ』などのテレビドラマもよく見ましたね。最初は字幕なしで観てその後に字幕を見る、を繰り返すと、テキストだけだと難しさを感じていた冠詞などの使い方もよく理解できますし、フレーズが自然と口から出るようになるんです。

 

ニューヨークでは、自分から英語を話さないと何事も始まらない環境に置かれていたので、とにかく“通じる”ことを重視して、「英語力」を磨くのと同時に「コミュニケーション力」を意識しました。もともと社交的な性格で、人と話すこと自体が楽しいんです。話したい、相手の言うことを理解したい、という気持ちが私の原動力。その一心でコミュニケーションしているうちに英語に慣れてきて、どんどん世界が広がりました。

帰国後にはTOEIC L&Rを受験されたとお聞きしました。

20年間ニューヨークに住んだ後、帰国して就職活動を行った時、自分の英語力を客観的な数字で証明する必要があったので、TOEIC L&Rを受験しました。
リーディングの問題にはフライヤーやポスターが登場しますが、レイアウトを見ただけでどのような情報なのかがおおよそ想定できるのは、ニューヨークに住んでいた強みかもしれません。会話についても、20年暮らした中で「こう言えばこう返す」というパターンをコミュニケーションの中で学んだので、だいたい想像がつきました。テスト準備として本を1冊購入して学習しましたが、一番意識して勉強していたのは時間配分ですね。

現在のお仕事では、英語をどのように活用されていますか。

帰国後に米系や日系のIT企業に勤めた後、2022年からは、アクセンチュアとマイクロソフトのジョイントベンチャーであるアバナードの日本法人で、コーポレート シチズンシップ(企業市民活動)とESG(環境、社会、企業統治に配慮した企業の活動)に従事しています。コーポレート シチズンシップの担当者は世界各国のオフィスにいて、直属の上司はブラジル人、その上の上司はシアトルにいるエジプト人で、他の同僚はトルコ人、オーストラリア人、イギリス人、ヒスパニックなど。母国語が英語ではない人が多いので、英語をツールとして“意思を伝える”姿勢で話しています。メールもチャットも、ビデオ会議も全て英語で進めています。まだ誰にも直接会ったことはないのですが(笑)、いつか直接会って話してみたいですね。

現在手がけている仕事の具体的な内容を教えてください。

私の担当は、会社がグローバルで取り組んでいるコーポレート シチズンシップ活動の日本での展開です。わかりやすく言えば、企業の社会貢献活動の推進ですね。企業も社会の一員です。社会課題に対して企業がマインドセットとスキルを活用して、事業と絡めて社会に貢献するソーシャルイノベーションを創出し、さらにはその先に新しいソーシャルビジネスを生み出すことが究極の目標です。
CSR(企業の社会的責任)だけでは、業務中の隙間の時間にできることしかないので、社会に与えるインパクトはそう大きくはありません。だから本業でできることがすごく大事。
これまで、高校生・大学生など未来を担うチェンジメーカーの育成や、アバナードの専門性を生かしたCSV(新しい価値の創造)への社員の挑戦を推進しています。例えば、ChatGPTを活用した点字変換サービスや、災害時の避難をサポートするアプリの開発などを実現してきました。

私はソーシャルな活動には3段階のステージがあると思っています。まずはボランティアのソーシャルアクション、次に専門性を生かすソーシャルイノベーション。それからビジネス化するソーシャルビジネス。第2・第3ステージを目指す中で、社員が自主的に社会課題の解決につながるシステムを開発したり、若い世代が「未来を変えられる」というマインドセットを身に付けていく姿を見ることができたり、とてもやりがいを感じています。

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「完璧な英語」にとらわれず、まずは話しかけてみて

日野さんはニューヨーク時代にNPO法人「NY de Volunteer(以下、NYdV)」を立ち上げられていますね。

私、“社会貢献オタク”なんですよ(笑)。20年以上、社会貢献に取り組んでいます。NYdV発足のきっかけは、ブルックリンのコニーアイランドビーチでのゴミ拾いです。ドラマや映画で憧れていたコニーアイランドの砂浜にゴミがたくさん落ちていることにショックを受けて、自発的にゴミ拾いに行っているという話を友人にしたら、感動して参加してくれるようになりました。彼女はプロモーションのプロだったので、プレスリリースを発信したらたくさんのメディアに取り上げられて、次第に参加を希望する人が増えてきたんです。そこで2002年に法人化しました。

その経験が、帰国後のお仕事にもつながっているわけですね。

そうです。現在の仕事に就けたのも、2003年から私がニューヨークで日本人に対して社会参加を推進し、チェンジメーカーの育成に取り組んできた経験が認められたからです。NYdVとアバナードでコラボしている企画もあるんですよ。日本の学生がニューヨークに研修旅行で来た際にグローバルキャリア教育プログラムを実施するという内容で、今年で3年目を迎えました。これはもともとNYdVで長年行っていた企画です。ニューヨーク時代にさまざまなIT企業で働き、NYdVで得た知見があるからこそ実現できました。英語力だけではなく、ニューヨークに住んで働いてきた経験があったことが、今に生きていると実感しています。

日野さんの熱い思いが、どんどん形になって広がっているんですね。最後に、英語を学習している方に向けて、アドバイスをお願いします。

英語ができるようになったら「これをしたい」「こんなことを伝えたい」という目標を明確に持つと、英語力が一気に伸びますよ。ボランティアでもそうです。NYdVでは、参加者に英語力やボランティアの経験、専門スキルは一切求めていません。大事なのは、ボランティアをしたい、誰かのために役立ちたいという気持ちです。英語に苦手意識がある人でも、目の前の人に真剣に向き合っていると、結果的に1時間でも、英語でコミュニケーションができる。それができればもう、英語を話す緊張や重荷がなくなります。

多くの日本人が「完璧に話さないと……」というプレッシャーにとらわれたり、「英語が下手ですみません……」と必要以上に謙遜したりしていて、もったいない! と感じています。私自身、英語は母国語ではないので、完璧に話せるわけではないですし、完璧を目指す必要もないと思っています。目的は、相手としっかりコミュニケーションをして、通じ合うことですから。英語は、そのための一つのツールです。

 

実際に英語で会話して「伝わった!」という喜びを体験することで、「もっと話したい!」と前向きなマインドが自然に湧いて、結果として飛躍的に英語力が伸びると思います。例えば街中で困っている海外からの観光客がいたら英語で話しかけてみるとか、身近なところからぜひ、分かり合う喜びを感じて、コミュニケーションを楽しんでみてくださいね。

アバナード株式会社
コーポレート シチズンシップ ジャパン リード
日野 紀子(ひの・のりこ)さん


幼少期から家族の影響で世界各地の文化に触れ英語の世界に憧れを持ち、1993年に初渡米。20年にわたりニューヨークで暮らした経験を持つ。現地でNPO法人の設立に携わり、2012年に帰国。2022年よりグローバルIT企業のアバナードで企業市民活動に従事。国際的なCSR活動にも取り組む。

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