日本のおもてなしを提供する
ザ・ペニンシュラ東京の英語力とは
インバウンドで盛り上がりを見せる日本の観光業界。毎日たくさんの海外観光客がホテルに宿泊しています。そんなホテル業界で活躍するために重要なのは、やはり“語学”。特に世界の共通語ともいえる“英語”は、習得しておきたいスキルです。
そんな英語力のチェックと向上に取り組んでいるのが、ザ・ペニンシュラ東京。世界有数の高品質なサービスを提供する同ホテルは、社員の英語力強化を目指し、さまざまな施策を行っています。
今回は、そんなザ・ペニンシュラ東京で働く社員のおふたりに、インタビューを実施。同ホテルにおける英語力向上を目的とした取り組みのほか、採用についてもお聞きしました。
目 次
- Profile -
ザ・ペニンシュラ東京
執行役員
ピープル&カルチャーディレクター
本間さん
人事業務の統括を担当。採用や人事戦略だけでなく、約500名の従業員を対象とした人材育成、報奨(報酬・福利厚生)、社員向けプログラムやイベントの企画、指揮、調整も行う。2016年よりマニラ・イングリッシュ・プログラムを導入し、言語開発プログラムの強化を推進した。
- Profile -
ザ・ペニンシュラ東京
フロントデスク エージェント
有川さん
主に、お客様のチェックイン、チェックアウトの手続き業務を担当。急遽入った予約のアサインやメールのやりとり、貴重品のお預かりなども行う。
150年以上の歴史を持つ外資系ラグジュアリーホテル
まずはザ・ペニンシュラ東京についてご紹介をお願いします。
本間さん:ザ・ペニンシュラ東京は、2007年に皇居外苑と日比谷公園の向かいに一棟建てで開業した外資系ラグジュアリーホテルです。「ホテルが建つ土地の文化を取り入れる」という経営哲学のもと、ホテル外観やインテリア、客室などに“本物の和”を取り入れた造りが特徴で、その哲学はご提供するプロダクトやプログラムにも反映し、世界各国からお客様をお迎えしています。また、1928年に“スエズ運河より東側で最高のホテル”を目指して香港で初めて建てられた旗艦ホテル「ザ・ペニンシュラ香港」から続く歴史と伝統、そして家族のような温かみを感じるおもてなし“ペニンシュラ・ホスピタリティ”を継承しながら、最高のプロダクトとサービスをご提供し続けています。 ザ・ペニンシュラホテルズを運営する親会社は香港上海ホテルズ社で、現在ヨーロッパ、アメリカ、アジアに12軒のホテルを運営しています。
ザ・ペニンシュラ東京はどのような職場なのでしょうか。「働きやすさ」を感じるようなエピソードがあれば教えてください。
有川さん:フロントデスク業務は、さまざまな部署と関わることが多い環境です。ときには、緊急で他部署へ業務をお願いすることもありますが、同じおもてなしの気持ちを持ったワンチームなので、スムーズに物事が進むことがほとんどです。スタッフ同士がペニンシュラ・ファミリーとして、互いを家族のように思い、リスペクトし合う文化があるので、非常に働きやすいです。
本間さん:人事という仕事は全部署と関わりがあるのですが、有川がいうように横の繋がりがスムーズで何でも相談できるような職場だと思います。部門長とミーティングすることも多いのですが、お互いの部署や仕事についても遠慮なく意見交換しています。私たちはスタッフのみならず、お客様もペニンシュラ・ファミリーとして、家族のような温かいおもてなしでお迎えしているので、お客様・スタッフが心地良く過ごせる環境を創り出すうえで、良いことも悪いことも積極的に話し合い、お互いを高めあっています。おかげで意思決定も早く、それがサービスの質を高めることに繋がっています。
部署を超えたつながりや円滑なコミュニケーションが組織文化として根付いているのですね。
本間さん:そうですね。それこそ本社との関係性も同じです。外資系ですと、本社から一方的に指示が降りてきて、対等な関係とは言い難いこともあるかもしれません。しかし、当ホテルは、カドゥーリー一族というワンオーナーによる、150年以上の歴史がありながらも世界12軒のホテルを所有・運営する小さなホテルグループです。本社や他のグループホテルのスタッフともペニンシュラ・ファミリーとして良い関係を築けていて、コミュニケーションもスムーズです。
- ホテルが建つ土地の文化を取り入れながら、最高のプロダクトを提供している。
- スタッフ同士がペニンシュラ・ファミリーとしてリスペクトし合う文化があり、横の繋がりがスムーズ。
- 本社や他のグループホテルとのコミュニケーションも円滑で、風通しの良い職場になっている。
ザ・ペニンシュラ東京では多くの業務で英語力が必要
ホテルというとやはり業務で英語が必要となるイメージがあります。ザ・ペニンシュラ東京で英語力が求められる部署や業務について教えてください。
本間さん:やはりお客様と接する部署は、英語が必要になることが多いです。たとえば、フロントデスクやコンシェルジュ、レストランのホールスタッフなどです。また、私のようなピープル&カルチャーやセールス&マーケティングなどバックオフィスの業務でも英語は必要です。本社スタッフとのコミュニケーションや、外国人スタッフと話す機会も多いです。一方で、英語をあまり使用しない業務もあります。しかし、一緒に働くスタッフにも外国人はいるので、英語ができるに越したことはありません。
有川さん:お客様は、平日ですと8~9割、土日でも半分以上は外国人の方がいらっしゃいます。ですので、私のようなフロントデスクは英語力が必要です。現在は特に様々な国のお客様がいらっしゃるので、日本語と英語、さらに別の言語を話せると自分のおもてなししたい気持ちを表現する機会が増えるかもしれないですね。
ザ・ペニンシュラ東京ではスタッフの方の英語力強化を推進しているとお聞きしています。その背景について教えてください。
本間さん:最初から流暢に英語を話せるスタッフも多いのですが、これからより英語力を高めたいと考えているスタッフもいます。お客様にも外国人の方が多いので、会社として啓蒙する必要もないくらいスタッフ自身が英語の重要性に気づいているはずです。実際、英語力を身に着けることで仕事が楽しくなり、キャリアアップもしやすくなります。そのチャンスを作るためにも、会社としてスタッフの英語力強化のサポートに取り組んでいます。
実は、有川が英語力を身につけてキャリアアップを実現したロールモデルなんです。入社時は、それほど英語力が必要ないハウスキーピング業務からスタートしたのですが、有川はずっと「ページ(白い制服に身を包み、正面玄関でお客様をお迎えし、お見送りするペニンシュラならではの職種)」に憧れていたそうで、異動するために英語力を身につけたいといっていました。ザ・ペニンシュラ東京には、そんなスタッフを後押しするためにも英語力の強化に繋がるサポート施策を用意しています。有川はそうしたサポートを活用し、夢を実現させたのです。
- コミュニケーションを取るために、お客様と接する部署のほか、セールス&マーケティングなどのバックオフィスの業務でも英語が必要。
- 流暢に英語を話せるスタッフもいるものの、これからより英語力を高めたいと考えているスタッフもいる。
- 英語力を身に着けることで仕事が楽しくなるだけでなく、キャリアアップもしやすい。
- スタッフの夢を後押しするためにも、英語力を強化できるようなサポート施策が用意されている。
2ヶ月半のマニラ研修で向上した英語力をTOEIC Speakingでチェック
社員の英語力をアップさせるための支援施策について教えてください。
本間さん:まずはザ・ペニンシュラマニラでのイングリッシュプログラムです。もともとは社員向けに週1回の英語レッスンを開催していたのですが、週に1回1時間程度のレッスンを行うだけでは英語学習が継続できないということが多く……。だからといってレッスンを増やしても、仕事の都合で出られない人が多くなるだけでした。
そんなとき、ザ・ペニンシュラマニラで英語の研修が行われていることを知りました。そこで、英語でコミュニケーションをとる機会を作るべく、ザ・ペニンシュラマニラに2ヶ月半滞在し、ザ・ペニンシュラマニラでの英語の研修に参加することで、英語を学ぶプログラムを作ったらどうかと考えたのです。研修中であっても、週に2日間はザ・ペニンシュラマニラで働くこともできるようにしたので、ほかの学びが得られる点もメリットだと感じています。
有川さん:私もマニラ・イングリッシュ・プログラムに参加しました。授業は大変だったのですが、やりがいがありました。また、ザ・ペニンシュラマニラでページの仕事を経験することもできて勉強になったと共に、その経験から英語学習のモチベーションがさらに高まり、研修後も学習を続けることができました。そして、念願だったページへの異動も叶いました。そこからさらにさまざまな部署を経験し、現在はフロントデスクにいます。こうしてキャリアアップし続けられているのは、会社からの支援で英語を学べたからだと思います。
本間さん:ただし、マニラに行って戻ってくるだけだと、自分の英語力がどれくらい向上したのかがよくわかりません。そこで当ホテルではTOEIC Speakingを導入し、研修に行く前の英語力、帰国直後の英語力、それから半年後の英語力と3回にわたって英語力を確認するようにしています。
有川さん:TOEIC Speakingでスコアとして英語力を可視化したおかげでモチベーションも向上しました。目標があるとがんばれますし、ちゃんと学ぼうという気になります。
本間さん:英語は語学ですから、話さないと上達しません。ですので、当ホテルでは、英語を話せるスタッフと英語学習中のスタッフが気軽にコミュニケーションをとれる「英語カフェ」を常設し、英語を使う機会を提供しています。
- ザ・ペニンシュラマニラと合同で英語の研修をマニラで行う、2ヶ月半のイングリッシュ・プログラムがある。
- 研修中は、授業のほかに週2日間ホテル業務ができるのでアウトプットの場になり、英語学習を深めることができる。
- 自分の英語力を計るべく、TOEIC Speakingを導入し成長を可視化している。
- TOEIC Speakingで目標スコアを定めることでモチベーションの維持に繋げている。
- 気軽に英語でコミュニケーションが取れる「英語カフェ」を常設し、英語を使う機会を提供。
「英語で何をしたいか」を明確にすることがモチベーション向上につながる
おふたりが続けている効果的な英語学習法はありますか。
有川さん:外国人スタッフに積極的に話しかけ、英語を使うようにしています。また、スタッフがお客様と英語で話しているのを聞き、使えそうな表現などは自分でも取り入れるようにしています。
本間さん:私は、普段の仕事のなかでは英語で届いたメールを読んで、便利なフレーズをノートに書き留めています。それを繰り返していくと、文章の作り方がだんだんわかってくるんです。そこに自分なりのアレンジを加えて、自分らしい英文にしています。
英語学習のモチベーションを高く保つコツはありますか。
有川さん:私は、お客様とのスモールトークに力を入れています。お客様にお話を伺うのは面白いですし、その結果、お客様と少しずつ色々な話ができるようになりました。それがやりがいにもなり、もっと英語力を高めたいというモチベーションに繋がっています。
本間さん:「英語で何をしたいか」を明確にすることでしょうね。単に英語を身につけることだけを目的にしてしまうと長続きしないです。英語を学ぶ目的を明確化させることで、その目的への想いが英語学習のモチベーションにつながると思います。
- 外国人スタッフに積極的に話しかけて英語を使うように日常から意識する。
- 英語で届いたメールをチェックし、便利なフレーズをノートに書き留めておき、自分なりのアレンジを加えることで、自分らしい英文に変換。
- スモールトークを意識することで、英語の引き出しを増やす。
- 「英語で何をしたいか」という目的の明確化が、英語学習のモチベーションにつながる。
今後もスタッフの英語学習をサポートし続けていく
ザ・ペニンシュラ東京としての今後の展望について教えてください。
本間さん:インバウンドはまだまだ盛り上がっていくと思うので、今まで以上に英語力の必要性は高まっていくでしょう。多様性を大切にしている当ホテルは今後も変わらず外国人スタッフやバイリンガルスタッフを採用しつつ、スタッフの英語学習をサポートしながら全体の英語レベルを上げていきたいと考えています。
今後、ホテル業界で働いてみたいと考えている人に期待することや、若手ビジネスパーソンへのメッセージをお願いします。
本間さん:ホテルは語学だけでなく、カルチャーや多様性についてもさまざまな体験ができる職場です。外国人スタッフも多く、いろいろな考え方や物事の見方が経験できます。英語力を高めて海外のスタッフと働いたり、海外からのお客様との交流を通じて、グローバルな職場環境を“仕事のやりがい”につなげていただきたいです。
有川さん:スキルが不足していると、そこであきらめてしまうこともあると思います。でも、あきらめずに小さな努力を少しずつでも積み重ねることで、いつか大きな目標に手が届くこともあるはずです。ですので、英語学習に励んでいる人と一緒に今後もがんばっていきたいです。
写真:深山徳幸 文:山田井ユウキ