ビジネスのグローバル化がますます拡大するなか、日本の企業ではどの程度英語力が重視されているのか。就職人気企業にアンケートを実施し、英語力の指標として多くの企業が採用するTOEICの活用状況とともに、実態を調査した。
日本企業のグローバル化で求められている、実践で使える英語力
世界的に経済のボーダーレス化が進んでおり、ビジネスにおいても英語に対するニーズは今後ますます高まると予測される。文部科学省が組織する、産学連携によるグローバル人材育成推進会議(2011年設置)ではグローバル人材育成を急務としており、「語学力・コミュニケーション能力」「主体性・積極性、チャレンジ精神」などを挙げている。そこで今回、「マイナビ・日経2022年卒大学生就職企業人気ランキング」の文系・理系学生の人気上位各100社(実際は重複分を除いた165社)にアンケートを実施した。47社から回答を得た結果を紹介する。
グローバル化でニーズが急増?企業が求める英語力の実態
まず、Q1「3~5 年前と比べて英語力の必要性は高まっている?」という問いに対して、4 割近くの36.2%が「全社的に高まっている」と回答。次に「英語が必要となる業務はある?」という問いでは、「英語力が求められる業務はない」と回答した企業はゼロだった。つまり、どんなビジネスでも多かれ少なかれ英語が求められるシーンが出てきているということが読み取れる。
合否に直結はしないが考慮する企業が多い
では、就職時に英語力は重視されるのだろうか。新卒採用では「英語力を考慮する」と答えた企業は57.4%。「考慮するが、"英語力が高いから採る"のではなく、英語力が高い人は能力を生かせる仕事に従事していただくことが多い」(ベネッセコーポレーション)というコメントもあった。採用の判断材料になるものの、合否を直接左右するものではないという企業が多かった。では、即戦力が求められる中途採用ではどうだろうか。「考慮する」と答えた企業は、新卒よりも多い73.9%。「将来的には考慮したい」という企業の数を入れると、9割以上が英語力を考慮すると回答した。
新卒・中途、どこまで見てる?採用での英語力評価
海外駐在や社費留学では基準があるケースも
多くの企業が英語力の指標として採用しているTOEICだが、スコアはどこまで参考にするのだろうか。実際、採用の合否には直結しないという企業が多かったものの、「中途採用では一部のポジションで英語力を考慮している。この場合、"ビジネスレベルの英語力"を求めているが、具体的な基準は特段設けていない」(りそなホールディングス)のように、スコアを参考にすることがあるという意見が多かった。一方、「海外向けの開発部門の中途採用ではTOEIC700点以上が採用基準」(SUBARU)など、明確な基準として採用する企業もあった。
次に昇進や昇格に英語力はどのくらい影響を及ぼすのか、見ていこう。昇進・昇格の際に、英語力を考慮すると答えたのは約4割。将来的に考慮したいという企業も含めると6割近くなる。TOEICのスコアは昇進・昇格の必須要件かという問いに対しては、一部の企業では昇進や昇格に具体的なTOEICスコアの基準を設けているところもあるが、あくまで参考という企業が多かった。海外派遣に関しては、現地に長期滞在する海外駐在や社費留学では25.0%が「クリアすべき基準点がある」と回答。特に社費留学では「社費留学(海外ビジネススクールと連携した企業内大学留学制度)の応募には、TOEIC730点以上が必須要件。派遣までにTOEIC860点以上、TSST6以上の英語力向上を推奨」(損害保険ジャパン)などのように高いスコアを求める企業もあった。
入社後の昇進・昇格、海外派遣etc. 働き始めてから英語力はどこまで評価に影響する?
英語力を測るさまざまな試験がある中で、企業はTOEICをどう評価しているのだろうか。「高く評価している」「評価している」を合計すると、91.1%もの企業が評価するという結果に。理由としては、長年、英語力を測定する指標として広く活用されていることや、スコアを上げるために努力することで英語力がアップするという回答が多かった。一方、スピーキングの運用力が測れないといった声もあった。TOEIC以外に指標としている試験について尋ねると、ほかにはないと答えた企業が多かったが、TOEFLiBTや英検、IELTSなどが挙がった。長年、英語力の指標として使われてきたTOEICやTOEFL、英検が今も活用されているようだ。
企業はどう見る?TOEICの評価
文化や考え方の違いを学べる研修も登場
企業が英語力向上のために行っている取り組みとしては、「オンラインでの英語学習、通信教育、e-ラーニング受講料の補助」を行っているのは76.6%。「TOEIC等の受験料の負担」は55.3%だった。具体的な取り組みを自由回答形式で聞いてみると、さまざまな施策が上がってきた。2012年7月から社内公用語が英語に正式移行した楽天グループは、「対話型オンラインプログラムやCross-culturalManagement、グローバルリーダー育成研修など、読み書きだけではなく、スピーキングやクロスカルチャーを重視した実践的な英語教育に取り組んでいる」とコメント。ほかにも「2019年度までは、社員を1~3カ月の短期留学に派遣することで、語学力の向上に加え、異文化理解の促進を図っていた(コロナの影響により中止)」(東日本旅客鉄道)なども。国や言語が違えば、文化や背景が違うのは当たり前だが、自国の常識が他でも通じると勘違いしがち。そうした考えを改めるような実践で役立つ取り組みを行っている企業など、本当の意味でのコミュニケーションを考え、支援を行う企業も出てきている。今後はデジタルトランスフォーメーション(DX)化が進み、"話す、聞く、読む、書く"という全ての英語力のニーズが高まるだろう。
ニトリ ホールディングス |
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アサヒグループ食品 |
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損害保険ジャパン |
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サントリー ホールディングス |
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アサヒビール |
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クボタ |
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村田製作所 |
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電通 |
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東日本旅客鉄道 |
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楽天グループ |
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住友生命保険 |
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三井住友海上火災保険 |
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※承認番号23-2179
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