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2024年7月号

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英語を使う環境が大きく変わりつつあるという航空自衛隊。
異なる立場で活躍するお二人に、業務で必要となる英語についてうかがいました。

業務遂行の精度を上げるために
一人ひとりの英語力向上が大切

松本 武蔵さん

航空自衛隊 第2航空団 整備補給群
装備隊 1等空曹

松本 武蔵さん

北海道千歳基地の整備補給群装備隊に所属。海外訓練をきっかけに学習を重ねてTOEIC L&Rを410点から820点まで伸ばす。部隊内での英語教育にも力を入れ、業務時間内で英語が学べるよう働きかけ、環境を整えた。

私が英語学習に取り組んだきっかけは、2008年に参加したアラスカでの海外訓練でした。私は戦闘機に搭載するミサイル等の整備を担当しており、アメリカ軍の担当者と英語でやりとりする機会が多くあることから、出発にあたり付け焼刃で英語を学んだのがすべての始まりでした。携帯ゲーム機の英語学習ソフトを使ったのですが、参考書などの書籍で勉強するよりも取り組みやすかったこともあり、以降も趣味として英語学習を継続しています。実は中学1年生のときに英文法で挫折し、学生のときはずっと英語の成績がよくありませんでしたが、高校生になってから洋画をよく観るようになり、リスニングはなんとなくできていたように思います。そして、いつかもっと英語ができるようになりたいという願望を持っていました。

学習効果を知るためにTOEIC L&Rを受験し始めたのが2010年で、せっかくやるならと5年間で700点台を目指すという目標を立てました。その1年後に、日米で共同使用する青森県の三沢基地へ異動となり、アメリカ軍の軍人やその家族と趣味のランニングやサイクリングを通じて、英語での会話やメッセージのやりとりができたのはいい経験でした。TOEIC L&Rのスコアも伸びたのですが、それよりも次第に仕事や生活で英語を活かせるようになったことがうれしかったです。

2015年には再び千歳基地に戻り、所属する装備隊の訓練係になりました。様々な訓練を行うなかで、隊員たちの英語の成績を知る機会があり、あと少しスコアが上がれば、航空自衛隊で設定されている基準を超えられる隊員たちが少なからずいることに気づきました。そこで希望者を募って勉強会を開くようになり、そこから隊全体の英語力の向上に貢献することを目標の1つにしてきました。

隊として目指すべき英語力がどれくらいか、過去の例をあげて説明すると、アメリカ軍担当者の英語での説明を聞いた7人のクルーのうち理解できたのは1人だけで、他のクルーに日本語に通訳する場面がありました。そうした際、仮に5人が英語を理解できれば聞き違いや誤認識が減り、やりとりする情報の精度が上がります。隊全体が、それくらいのレベルになるのが望ましいと感じています。

今後は、戦闘機の整備員たちにもますます英語が必要になるでしょう。すでに、三沢基地には、アメリカ製の最新鋭戦闘機の配備が進んでいます。そうした環境変化に急には対応できません。少しずつ学びを積み上げていくしかないのです。私は定年退職まであと数年なので、それまでに隊員たちが英語を勉強しやすい環境を作るとともに、英語を教えられる人材も育成したいと考えています。

通訳業務で求められるのは
端的で正確、場にふさわしい英語

阿部 静香さん

航空自衛隊 航空幕僚監部 防衛課
防衛協力班 事務官

阿部 静香さん

外語大学を卒業後、2019年に英語の専門職員として入省。航空自衛隊に所属し、沖縄県那覇基地にて通訳業務の経験を積む。2023年に航空幕僚監部所属となり、高官同士の会議などのハイレベル交流を担当。

航空自衛隊の高官と各国の軍上層部の会議や、高官が海外出張する際などの英語の通訳を担当しています。ただ英語を話せるというだけでは通用しない業務だと痛感しています。

安全保障の環境は日々、移り変わっていきます。自国の立場や主張はもちろん、その時々の相手の考え方もできる限り理解していないと、正確な通訳ができません。会議の準備には時間をかけ、最新情報や資料をしっかり読み込むのはもちろん、航空自衛隊として議論の着地点をどうしたいのかまで頭に刻んで現場に臨みます。

自衛隊や各国の軍隊では、独自の専門用語がいくつも登場します。まず気をつけねばならないのが、肩書きです。航空自衛隊でいえば航空幕僚長を筆頭に20近い階級があり、国によって呼び名が変わることもしばしば。他にも部隊名や、師団、中隊、小隊といった部隊編成名なども混乱を招かぬよう正確に訳さねばなりませんし、陸軍を「G」の一文字で表すなど、略語や独自の表現も数多くあります。会話の間に立つ者が進行を左右するようなミスをしてはならないため、不安な部分は発言者に確認をしっかりとりながら進めるようにしています。

会議は比較的フォーマルで、前置きなどは入れず端的に用件を話し合う雰囲気ですので、英訳がカジュアルな表現になりすぎないように気をつけています。たとえば、組織のトップである航空幕僚長が話す言葉であれば、軽い表現よりも威厳や重みのある表現のほうが適している場合が多く、そうして場の雰囲気に合わせた言葉遣いが求められます。

こうした独特なノウハウは、職場内訓練で身につけていくことになります。私も最初のころは戸惑い、誤って訳してしまうなど失敗も経験しましたが、そこで支えてくれたのが、先輩や同僚たちでした。航空自衛隊は海外との交流が多い組織のため、専門職でなくとも英語が堪能な先輩や同僚がたくさんいます。周囲のアドバイスで少しずつ通訳の正確性を高めていき、現在に至っています。

コロナ禍が収束に向かい、自衛隊でもそれまで控えられていた防衛交流や協力交流といった国際活動が増えました。日本国内に駐在するアメリカ軍との交流も日常に戻り、専門職でなくとも英語を使う機会が多くなっています。航空自衛隊でもさらなる英語力の底上げが求められると感じます。今後は専門職として、英語教育に関わる機会があるかもしれません。自分ができることを着実にこなしつつ、英語力に磨きをかけ、組織に貢献していきたいです。

航空自衛隊では、航空自衛官全員の英語力を高めるための教育施策に取り組んでいます。TOEIC L&RおよびTOEIC Bridge L&Rの導入も含めた組織づくりに関するインタビューはこちら。

https://www.iibc-global.org/toeic/corpo/case/com/22.html

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