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江場日菜子氏「途上国の人々の生活をより豊かにするための一助となりたい」江場日菜子氏「途上国の人々の生活をより豊かにするための一助となりたい」

途上国の人々の生活をより豊かにするための一助となりたい

国際協力機構(JICA)に勤務する江場日菜子さんは、学生時代から、大学の留学生寮での共同生活、日仏の学生団体での活動、インドやバングラディッシュの教育支援を行うNPOでの活動などを通じて、国際交流・国際貢献に情熱を傾けてきた。その背景には、アフリカをはじめとする開発途上国の貧困問題の解決に貢献したいという中学生時代に抱いた思いがあるという。そんな江場さんに、海外留学や海外勤務を通じて学んだこと、国際協力という仕事の意義などについて語っていただいた。

    プロフィール
    江場日菜子(えば・ひなこ)
    中学生の頃にアフリカの貧困問題に興味を持ったことをきっかけに、大学ではアフリカ諸国で広く公用語として用いられているフランス語を学ぶ。在学中は大学の留学生寮で住み込みのアシスタントとして世界各国の留学生たちと交流を深め、また、半年間パリの大学に留学する。大学卒業後の2019年、独立行政法人国際協力機構(JICA)に入構。中東・欧州部中東第一課(北アフリカ)モロッコ担当に配属。モロッコ事務所や北海道センター(帯広)でのOJTを経て21年5月より国内事業部外国人材受入支援室に勤務。在留外国人の支援や多文化共生社会の構築に向けたさまざまな取り組みを行っている。

    モロッコで改めて実感した国際協力の意義

     フランスから帰国し、大学を卒業した2019年春、私は国際協力機構(JICA)に就職しました。子どもの頃からの夢だった国連も真剣に検討したのですが、現場から政策立案まで幅広いレベルで国際協力ができ、途上国の人々の生活を豊かにできるという点に魅力を感じ、JICAに決めました。

     最初に配属されたのは中東・欧州部中東第一課(北アフリカ)モロッコ担当で、8月から約3カ月間、現地での実地研修を経験しました。モロッコでは、タコやマグロなどの水産業振興に関する事業を展開したり、日本の算数ドリルを活用した教育案件を担当したり、オリーブオイルやアルガンオイル(モロッコに生育するアルガンツリーの実から採取されるオイル)のプロジェクトに関わったりと、さまざまな分野でJICAの活動に携わりました。その中でも特に印象に残った業務は、水産業に携わっている女性たちにインタビューをするというものでした。

    「ゼリージュ」と呼ばれる、モロッコの伝統的なモザイクタイルとともに。

    「ゼリージュ」と呼ばれる、モロッコの伝統的なモザイクタイルとともに。

     上司の命を受け、私は事前に質問事項を用意し、集合場所の海岸沿いの小屋に向かいました。私が到着するや否や、女性たちは口々に要望や改善点をぶつけてきたのです。まだ社会人になって数カ月という経験不足もあり、私はその場をうまく取り仕切ることもできず、ひたすら言葉の雨を浴び続けるだけになってしまいました。でも、彼女たちが熱弁をふるうのも私たち日本の協力に期待しているからにほかなりません。そう思うと、自分が携わっている国際協力という仕事の価値や重要性が改めて実感でき、モチベーションが一層高まったことをよく覚えています。

     モロッコとの関りで印象深かったのは、2020年12月に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策としてモロッコ向けに2億米ドルの円借款の形成を行ったことです。このプロジェクトは、交渉から事務対応までほぼすべての業務を私と上司の二人だけで手掛けなければならなかったため、かなりの重労働でした。でも、コロナ禍による経済状況の悪化に苦しむ人々のために貢献できるとあって、とてもやりがいを感じました。

    日本を外国人労働者にとって「働きたい国」にするために

     国際協力というと、病院や学校を建てたり橋をかけたり、医師などの専門家を派遣したりといった技術協力に目を向けがちですが、それ以外にもさまざまな形の国際協力が行えるのもJICAの仕事の魅力です。

     私が現在携わっている外国人材受入支援も、従来の国際協力の文脈ではあまり注目されることのない分野でした。

     現在、日本には170万人以上の外国人労働者が存在し、10年前と比べると約2.5倍に増加しています。また、日本が経済成長を続けていくには、2040年に670万人を超える外国人労働者が必要となるとの試算もあります。これまで以上に外国人に来日してもらうには、日本が彼らにとってより魅力的な国、働きたいと思える国にならなければなりません。ところが、現実はどうでしょうか。大きな希望を胸に日本に働きにきたのに、職場では限られた仕事しか任せてもらえず、母国に戻ってもキャリアにつながらない。日本での生活に馴染めず孤立してしまう。そんな外国人も少なくありません。そうした人たちを支援するのもとても意義ある国際協力の一つです。

     この業務は外国人労働者の受け入れ先となる企業や彼らの生活基盤を提供する自治体などの協力が不可欠な分野ですので、さまざまな立場の多くの人々と力を合わせ、日本を外国人労働者にとって働きやすく暮らしやすい国にしていくことが今の私の目標です。

    「日本を外国人労働者にとって働きやすく暮らしやすい国にしていくことが今の私の目標」という江場さん。さまざまな形の国際協力が行えるのがJICAの魅力だ。

    「日本を外国人労働者にとって働きやすく暮らしやすい国にしていくことが今の私の目標」という江場さん。さまざまな形の国際協力が行えるのがJICAの魅力だ。

    ――江場さんが大切にしていること

    世界中のどんな場所にいても、どんな時代であっても、自分の中に「これをやりたい」と思える軸を持ち、自分と異なる価値観や考え方を理解し対話することが重要だと感じます。その想いを持ち続け、行動すれば、どんな形であれ、遠回りになったとしても、想いは実現すると私は信じています。
    また、今後は日本においても外国人を含めてさまざまなバックグラウンドを持つ人々と関わることがますます増えていくでしょう。相手をよく観察し、異文化を理解することはもちろん、多様性を活かして仲間の力を最大化できるよう、私も日々精進したいと思います。

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    IIBCは、国境のみならず、あらゆる境界を越えて世界で活躍する人材を育てたいと考えています。グローバル化やデジタル化で世界がますます複雑化していく時代に大切な「個としての軸」「決断力」「戦略・ビジネスモデル創出力」「異文化理解力」「多様性活用力」「コミュニケーション力」。グローバル人材育成プログラムは、これらを学び、考え、育む機会を、EVENTやARTICLEを通じて提供していきます。

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