Global Frontline~グローバルな舞台でチャレンジする人たち~

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NECの技術を活用して世界中の社会課題の解決に貢献したい

大手電機メーカーの日本電気(NEC)でアフリカ事業を担当する北濱満里子さんは、もともと海外で働くことに興味があったわけではなく、大学時代までは受験勉強以外に英語を学ぶこともなかったという。今でこそ、流ちょうな英語で海外の現地法人のスタッフやクライアントと円滑にコミュニケーションを行っているが、「実は英会話が苦手で、長くコンプレックスを持っていました」と打ち明ける。そんな北濱さんは、どのようにして世界を舞台に働くことを考えるようになったのか、そしてその実現のためにどのような方法で苦手な英会話を克服していったのか。

    プロフィール
    北濱満里子(きたはま・まりこ)
    国際基督教大学教養学部卒業後、2014年に日本電気株式会社に入社。欧州・中近東・アフリカ本部にてアフリカ事業を担当。2019年から2022年までNECアフリカ社ナイロビ事務所(ケニア)に赴任。日本政府の支援や国際機関との協業などを通じて、生体認証を活用した安心安全なまちづくりに係る事業に携わる。2022年3月より同社グローバル事業推進統括部アフリカ事業開発グループに所属。

    大学入学後に痛感させられた英会話力の乏しさ

     海外志向が強い人の中には、中学・高校の頃から将来を見越して英会話の勉強などに励む人も少なくないと思いますが、私にはそのような考えはまったくありませんでした。英会話の勉強に初めて触れたのも、国際基督教大学(以下ICU)に入学してからのことでしたし、そもそもそれまで将来は海外を舞台に働きたい、グローバルな人材になりたいという発想もありませんでした。

     ICUに進んだのも、当時は自分の将来のために何を専攻すべきかなかなか決めることができず、1、2年生時が教養課程で3年生に進学するまでに専攻を決めればいいという猶予期間があるカリキュラムになっていることが大きな理由の一つでした。ただ、これは入学してから実感することになったのですが、ICUは英語教育にとても力を入れている学校で、私にとってはけっこうハードな英語教育プログラムを履修しなければならなかったのです。

     20人程度のクラスに分かれて実践的な英会話を学ぶというプログラムで、授業中は英語オンリーの環境におかれました。それまで英語といえばもっぱら受験勉強のために学ぶもので、英会話はほとんど初めての経験だった私には厳しい環境といえました。たくさんのディスカッション、課題図書やエッセイに追われつつ、同じ悩みを抱える友人たちと励まし合いながらどうにか乗り越えることができました。

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    英語の習得には苦労した思い出もあると振り返る北濱さん。しかし、その英語をきっかけに海外への関心を抱き、体験を重ねて、今ではビジネスで活用する自信も持てるようになった。

     大学1年生の夏には、大学のカリキュラムの一環でオーストラリアのメルボルンに1カ月ほど滞在して語学学校で英語を学びました。語学学校の入学前にクラス分けの参考にするためのペーパーテストを受けたのですが、受験勉強での学習効果がまだ残っていたのか、かなりいい点数がとれたのです。本来は喜ぶべきことなのでしょうが、おかげで最上位のクラスをあてがわれてしまったとあっては喜びも吹き飛びます。

     授業が始まるとクラスメイトたちとの英語力が違いすぎて、まったくついていけないのです。クラスメイトも語学留学に来ているので完璧な英語を話せるわけではなく、英文法などの知識であればもしかしたら私のほうが正確ではないかと感じる場面もありました。それでも間違いを恐れずに積極的に手を挙げて発言する彼ら彼女らを前に、いざ話そうとすると言葉が出てこないんです。これは本当につらかったですね。

     そんな気持ちがやわらぐきっかけになったのは、ホストファミリーとの交流でした。あるとき、一緒に映画館に映画を観にいったのですが、その帰り道に映画の感想を聞かれました。ややストーリーが複雑だったこともあり、私の乏しい英語力で場面の説明と感想を伝えるのはとても難しかったのです。それでも何とか言葉を絞り出していると、ホストファミリーの人たちはニコニコしながら耳を傾けてくれるのです。そんな彼らの笑顔が、私にとても大切なことを気付かせてくれました。「下手でもいいんだ。伝えようとする気持ちが大事なんだ」と。

     それからはずいぶんリラックスして授業に臨めるようになりましたし、徐々にですが発言することへの積極性も増したと思います。おかげで楽しく充実した日々を送ることができました。もっとも、それを機に劇的に英語力が向上した、などという都合のよい展開にはなりませんでしたが(笑)。

    ボランティアとインターンで海外との交流を深める

     オーストラリアでの体験は、私にとって外国や異文化への興味を深めるきっかけとなり、以後、海外と交流ができる取り組みに積極的に関わっていくようになりました。

     その一つが、大学の教授が進めていた南アフリカと三鷹市の理数科教育を通じた交流プロジェクトでのボランティア活動です。これは両国の小学校の理数科教育で行われている取り組みを子どもたちがオンラインで紹介し合うことで学びと交流を深め、相互にカリキュラムの改善を図るというものです。

     例えば、日本の小学校の理科の授業ではよく実験が行われます。一方、南アフリカは座学が中心で子どもたちが学んだことを実験によって確認する機会がほとんどありません。そこで、日本の小学生が授業で実験を行う模様を子どもたちが自ら説明しながらオンラインで中継する形で、南アフリカの子どもたちにも理科の実験を疑似体験してもらうのです。南アフリカからは、日本にはない草花などを撮影してもらいつつ、現地の子どもたちがその生態を説明するといったことなどを行っていました。

     私たち学生ボランティアの役割は、主に通訳や議事録の作成といった裏方仕事です。通訳には同時通訳ができるくらいの英語力が必要なので、それは英会話が得意なボランティア仲間に任せて、私はもっぱら議事録の作成に勤しんでいました。

     このボランティア活動には大学2年生から3年生にかけて約2年間携わりました。インターネットを通じて、南アフリカという日本からははるか遠い外国で暮らす子どもたちの日常の姿に触れることができたのは貴重な経験でしたし、後に私がケニアに赴任した際に思わぬ形で役立ってくれることにもなります。

     また、大学2年生の夏には大学のインターンのプログラムを利用してフィリピンに1カ月ほど滞在しました。受け入れてくれたのは、リゾート地として有名なセブ島の隣にあるネグロス島で環境問題に取り組む現地のNGO団体です。このプログラムには私たちICUの学生以外にも韓国とフィリピンの大学生たちも参加しており、10名ほどの少数ながらも国際色豊かなグループが形成されました。

     私が主に携わったのは、そのNGO団体が実施する、貧困地域への「ゴミ山」問題に関する啓発活動などの取り組みでした。同世代のフィリピン・韓国の大学生と、非常に短い期間ながら目の前にある貧困問題に部分的にでも触れ、その改善に向けて英語で議論を重ねる日々を送るという貴重な経験を積むことができました。

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