Global Frontline~グローバルな舞台でチャレンジする人たち~
「成功」の対義語は「挑戦しないこと」 果敢にチャレンジすれば世界は広がる
プロフィール
田中 晶子(たなか・しょうこ)
1984年熊本生まれ。熊本高校在学中、1年間カリフォルニアの公立高校に留学。2003年、慶應義塾大学経済学部に入学し、国際経済学を専攻。総合商社のムンバイ支店やリクルートでのインターンを経験後、2007年に総合商社に入社。機械部門で新興国での市場開拓や企業買収案件などに携わる。2017年より社費派遣にてコロンビアビジネススクールに留学中。2018年5月に卒業、MBA取得予定。
留学を機に商社ビジネスに興味をもつ
私は熊本の田舎で自然に囲まれてのびのびと育ちましたが、家族や親戚がファミリービジネスをしていたので、幼いころから海外やビジネスと接点がありました。好奇心旺盛な性格で、短期ホームステイや海外旅行を通じて、外国への興味が徐々に強まっていきました。
人生で最初の転機となったのは、高校時代に経験した1年間の米国留学。留学先でチアリーディングに魅了され、帰国すると、チアリーディング部の設立や資金集めのため、日本未進出のブランド品の輸入業を始めました。その経験から、商社のビジネスに興味をもつようになったのです。
大学在学中は国際経験を増やそうと、NHK報道局の国際部でアルバイトをしたり、総合商社のムンバイ支店でインターンをしたりしているうちに、新興国のビジネスにも興味をもつようになりました。
幸運にも、希望していた総合商社に就職が決まり、新興国のビジネスに携わるチャンスがある機械部門に配属され、建設設備のインドへの販売活動、工場設立に向けての調査、ベトナムの販売会社の立ち上げ支援などを担当し、瞬く間に数年が経っていきました。
ビジネススクールの社費派遣選考に挑戦
ビジネススクールを目指そうと思ったのは入社5年目のころです。ブラジル企業をプライベートエクイティファンド(※1)から買収する案件を通じて、買収後の企業統合や投資先企業の経営に興味をもったこと、また、ビジネススクールを卒業したばかりの先輩が買収先企業に派遣され、活躍している姿に影響を受けたのがきっかけでした。
その後、ビジネススクールの社費派遣選考に2度応募するも、英語力や志望動機の堀り下げが足りず不合格。海外出張が多く、日々の業務に追われ、勉強時間の確保は難しかったものの、毎日少しでも英語に触れるように心がけました。私は、特に文法に苦労しました。英語を話すのに文法はあまり重要ではないという人もいますが、文法は語学力の土台だと思いますし、国際社会では文法力で教養の深さを判断されることもあるので、しっかり勉強しておくことをお勧めします。
社費派遣選考に3度目も不合格だったら一度退職し、私費で留学しようと考えていましたが、周りの方々の温かいサポートもあって、無事に合格することができました。さっそく、志望校を絞るためにキャンパス訪問をスタート。コロンビア大学を初めて訪れたとき、キャンパスや学生の雰囲気が母校の大学と似ていて親しみを覚えました。「私はここで勉強する」という直感を信じ、出願は1校のみ。TOEFLやGMATのスコアが合格者の平均点よりも若干低かったので不安はありましたが、何度もキャンパスを訪問して在校生や卒業生のネットワークに関わるなど、自分なりにベストを尽くしたことが合格につながったのかもしれません。入学前から、国内外で合格者と交流を深め、これから始まるビジネススクール生活を思い描きながら、ワクワクしていたことを思い出します。
1 プライベートエクイティファンドは、複数の機関投資家や個人投資家から集めた資金で、非上場事業会社の株式を取得し、同時にその企業の経営に深く関与して、企業価値を高めた後に売却することで、高いリターンを獲得することを目的とした投資ファンドである。
議論に参加できず、涙がこぼれたことも
コロンビアビジネススクールの入学時期は9月と1月の年2回。1月入学は夏休みがないことから、就職活動が必要ないファミリービジネスや企業派遣の留学生が約7割を占めます。「留学生が多ければ、私の英語力でも授業についていけるかも」と入学前は思っていましたが、それは間違いだとすぐに分かりました。仕事で英語を使っていたにもかかわらず、思った以上に英語を聞きとることができず、会話や議論に入ることができないのです。また、大学生のときに、経済やビジネスに関する基礎科目の勉強は、一通りしていたつもりでしたが、他の生徒との基礎学力の大きな差を感じました。海外の大学は、勉強量も内容も、日本の大学とは比べものにならないレベル。結果を出さないと生き残れない世界で戦ってきたクラスメイト達は、卒業後のキャリアプランを想定し、それに必要な基礎学力をしっかりと身につけていました。このままでは学びを最大化できず、クラスやラーニングチームに何も貢献できないのではないかと、不安と悔しさで涙がこぼれたこともありました。
つらい状況ではありましたが、コロンビア大学では、教授もクラスメイトも卒業生も、周りを助けることの労力や時間を惜しみません。私の周りの学生も、授業や課題、クラブ活動、就職活動、ネットワーキングに追われ、分刻みの生活を送っていましたが、時間をつくって私を助けてくれる友人がたくさんいました。感謝の気持ちを込めて、日本食をふるまったり、和食料理教室を開いたりして、友達の輪はさらに広がっていきました。ただ、英語に対する自信はなかなかもてず、自分らしさを出せないもどかしさは、その後もしばらく続きました。
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