Leader's Voice
コミュニケーションは相手との関係性ありき
プロフィール
安田菜津紀(やすだ・なつき)
1987年神奈川県生まれ。NPO法人Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル/D4P)所属フォトジャーナリスト。同団体の副代表。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で難民や貧困、災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。著書に『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)、他。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。
社会や政治に対して自分の意見を持つのは当然のこと
私はテレビのコメンテーターやラジオのナビゲーターの仕事もしていますが、少なくとも「叩かれそうだからこれを言うのはやめよう」とか、力のある側に忖度するとかいう発言はしないようにしています。そうした中でよく耳にするのは「メディアは批判ばかり」という意見。でも私はメディアの役割は、大きな力に対してどれくらいチェック機能が果たせるかということだと思っています。批判は、社会をより良くするために必要なエネルギーであり、「その進め方で本当にいいのか」「その議論の仕方で合っているのか」と、その都度レスポンスしていくことはとても大事なこと。日本は、社会や政治に関して発言したり自分の意見を持ったりという社会基盤自体が弱いように感じます。日本でも、コロナ禍を受け、政治や政策がこれほどまでに自分の生活を左右するということに気付いた人は少なくないはず。政治に対して自分の意見を持つのは当然であり、批判するのは空気が読めないことでもなんでもなく、むしろ社会を良くするために必要だというコンセンサスをもっと広めていく必要があるのではないでしょうか。
特に、演劇や音楽、写真など、カルチャーに携わっている人間はもっとスピークアウトしていくべきでしょう。日本ではアーティストが政治に口を出すなと言われますが、海外を見てみると、人気アーティストが「ブラック・ライブス・マター」を掲げるデモ行進に参加したり、意見を言ったりしていますよね。私の周囲を見ても、自分の好きな海外のアーティストが歌に込めた想いを知って、そこから政治や社会的な問題に興味を持ったという人たちは少なくありません。カルチャーは興味や関心の間口を広げることができるもの。そこに携わる人間が沈黙をしている場合ではないと思っています。
社会に対して企業が姿勢や考えを示すべき時代に
ビジネスでも同じです。ある世界的なスポーツ用品メーカーが、日本の中にある民族差別や見た目差別、いじめの問題に切り込んだ内容のCMを制作して反響を呼びました。この企業は、「ブラック・ライブズ・マター」に対して契約選手が声を上げたときもサポーティブでした。SDGsが課題とされる時代、企業体が社会に対して、どういう意識を持ち、どのように意思表示をしていくかは非常に重要になっていると思います。CMに反響があったのは、そういう企業体の姿勢を社会がよく見ているという証でしょう。個人にも軸は必要ですが、企業にももちろん必要です。たとえCMに賛否があっても、軸があれば、「自分たちの理念はこれだ」と毅然とした態度がとれるはずですから。
一方、真っ当と思われる批判を受けたときに、何がディスコミュニケーションだったのかをしっかり分析し、具体策を立てる柔軟性を持つことも必要です。明らかに女性蔑視と思われるCMを放送して批判を浴びた企業がありましたが、企業体は、人権意識に対応する仕組み、アップデートできる体制をつくっておくべきでしょう。人間の尊厳を傷つけたと批判される企業、「そうそう!」と共感の集まるCMを発信する企業。その違いは何かをあらためて考えなければいけない局面に来ているのではないでしょうか。企業は社会に対して大きな影響力を持っています。そのことをあらためて自覚する必要があると思いますね。
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