Global Frontline~グローバルな舞台でチャレンジする人たち~
「ワクワク」する気持ちを大切に未知の分野への挑戦を続けたい
プロフィール
瀧 信彦(たき・のぶひこ)
1994年、青山学院大学国際政治経済学部卒業。大手商社、外資系銀行等を経て、2013年にメットライフ生命に入社。カスタマーセントリシティ部部長を経てカスタマーエンゲージメントマネジメント本部本部長、2018年2月執行役員に就任。「お客さま中心主義」を推進し、「顧客本位の業務運営」実現のための態勢整備の責任者として、お客さまの声から改善すべき課題を掘りおこし、社内横断的な施策を指揮。より多くのお客さまと強固で長期にわたる関係を築き、ビジネスの成長につなげる職責を担っている。
友の言葉に背中を押され、門外漢だったITを克服
そこで次に勤めたのが、日本で新たに開設するという外資系銀行でした。この会社には選ばれた優秀な人材が、2、3年ごとに世界中を移動しながらキャリアを積んでいく、インターナショナル・プログラムがあります。功績が認められれば、海外で仕事をするチャンスが得られるかもしれません。
ここでの私のポジションは、カスタマー・エクスペリエンス部門のヘッドです。そして最初のミッションが与えられました。お客さまとの最初の接点である口座開設のカスタマー・エクスペリエンス(顧客経験価値)のデザイン、その一連のエクスペリエンスを提供するためのテクノロジー導入と、管理システムをゼロから構築せよというのです。
それはどう考えてもITのプロジェクトでした。事実、国内外にまたがる20名ほどのチームは、全員がIT部門のメンバーで、唯一ITのバックグラウンドをもたない私がプロジェクトのリーダーとして、IT用語を駆使して業務要件を作成し、それをもとにシステムの構築を指示しなければならないのです。私はかなりタフなつもりですが、この時ばかりは参りました(笑)。本来の仕事はカスタマー・エクスペリエンスの向上なのに、システム構築をやらされていること自体、釈然としないのです。
そんなとき、たまたまかつての職場の友人と食事をする機会がありました。彼は、これからはITができないと生き残れないと判断し、自ら手を挙げて本社のIT部門に異動して、保険部門の営業職からITの専門家になったというのです。話を聞いて、「そういうふうに考えればいいのか!」と、目からウロコが落ちた気がしました。
自分は今後、いろいろなカスタマー・エクスペリエンスのプロジェクトをやっていくだろうけれど、IT化が進む社会で、大きなITプロジェクトをリードした経験は、本来の仕事にも必ず役立つはずだと、腹に落ちたのです。
やらされているという気持ちで仕事をしていては、何事もうまく行くはずがありません。マインドセットが前向きに切り変わると、今までさっぱり分からなかったIT用語が、だんだん分かるようになってきて、物事は再び前進し始めました。システムは予定通りに完成し、ITを活用したカスタマー・エクスペリエンスとして、賞までもらうことができたのです。あのとき話をしてくれた友人には、今も感謝しています。
そうした苦労はあったものの、仲間の国籍もさまざまなら、社内公用語も英語、しかもみんなでゼロからビジネスをつくり上げながら仕事ができた点でも、非常に良い環境でした。しかしリーマンショックの余波で、グループ全体のグローバル戦略が変わり、残念ながら5年ほどで、そのビジネスは日本から撤退することになりました。
カスタマーセントリシティは、日本の強みが活かせる分野
その後は2年間ほど、コンピューター関連製品とサービスを提供するアメリカ大手の日本法人に勤務し、カスタマーセントリックな企業づくりを、外部からサポートする仕事に携わりました。
そして2013年7月に、カスタマーセントリシティ部の部長として、メットライフ生命に入社し、およそ5年が過ぎたところです。メットライフは40カ国以上で事業を展開するグローバル企業です。戦略の柱のひとつが、お客さまの声をもとに品質や業務を改善していく、カスタマーセントリシティです。新規顧客の獲得が困難な時代、保険ビジネスでも顧客ケアは重要度を増しているのです。日本は個人向け保険がメインですが、お客さまの声を聞き、評価、要望、苦情などを分析していくと、本質的な部分は他の国とほとんど変わりません。
保険という商品を買う背景には「不安」があり、「不安」を解消するひとつの手立てとして、人は保険を買うのです。しかし日常的に保険を意識して暮らすことはまずないため、契約内容などは忘れがちです。こうしたお客さまの無数の小さな気がかりや疑問を解消し、保険金・給付金を支払う場面には責任をもって確実に対応するなど、本質的な顧客ニーズに応えていくのが、保険会社のカスタマーセントリシティです。
日本の「おもてなし」精神は、それ自体がカスタマーセントリシティのようなものですし、日本企業には「改善」という文化もあります。ですから私のチームには、「錦糸町(チームのオフィス所在地)から世界へ!」と、キャッチフレーズのように言っています。日本のお客さまサービスの良い点を、体系立てて新たな形にしていけば、私達が先頭に立って、世界中にいる仲間に役立つ情報を発信できるでしょう。そう思うと、仕事がとても楽しくなります。
グローバル人材を目指すなら、誰にも負けない領域をもとう
ここまで駆け足でお話ししてきたように、私は転職を繰り返しながら、それぞれの職場で新しいことを学ばせていただき、経験を積ませていただいて、今日まで歩んできました。グローバルな環境で仕事をしたいという少年時代の希望も、それなりに実現できましたが、日本の外で異文化チームをマネージするという経験は、まだやり残していますから、今後実現したいと思います。
もうひとつ、グローバル人材の育成にも、将来、何らかの形で関わっていければという夢もあります。私が考えるグローバル人材とは、高い専門性と柔軟なマインドセットをもつ人です。英語力も大切ですが、それ以上に、「これに関しては誰にも負けない」という領域をつくれるかどうかが重要だと思うのです。
例えばNPS(顧客ロイヤルティを数値化する指標)や、カスタマー・エクスペリエンス領域に関しては、私はメットライフのニューヨーク本社の担当者が相手でも、知識的にも経験値でも負けない自信があります。そうした領域があれば、たとえ英語が完璧ではなくても、言いたいことは言えますし、相手も敬意をもって耳を傾けてくれ、こちらの主張を通すこともできるのです。いつかグローバルな環境で仕事をしたいという方は、ぜひ自分が得意な領域を探し、力を伸ばす努力をしていただきたいと思います。
―― 瀧さんが大切にしていること
大切にしているのは「ワクワク」する気持ちです。私の場合、モチベーションが上がっているのは、決まって夢中で何かに挑戦したり、未知の分野に乗り出したりして、心が「ワクワク」しているときなのです。転職の際も、「ワクワク」できる仕事かどうかを、最も重視してきました。日常の仕事についても、「ワクワク」できる状態に自分をもっていくよう、努めて意識しています。今までのキャリアを振り返り、一切後悔がないのも、この「ワクワク」のおかげだと思っています。
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グローバル人材育成プログラムについて
IIBCは、国境のみならず、あらゆる境界を越えて世界で活躍する人材を育てたいと考えています。グローバル化やデジタル化で世界がますます複雑化していく時代に大切な「個としての軸」「決断力」「戦略・ビジネスモデル創出力」「異文化理解力」「多様性活用力」「コミュニケーション力」。グローバル人材育成プログラムは、これらを学び、考え、育む機会を、EVENTやARTICLEを通じて提供していきます。
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