Global Frontline~グローバルな舞台でチャレンジする人たち~
リーダーの「フォロワーシップ」と「スタイル」の確立が、チームを強くする
プロフィール
中竹竜二(なかたけ・りゅうじ)
1973年福岡県生まれ。早稲田大学人間科学部卒。大学時代はラグビー蹴球部の主将を務め、全国大学選手権で準優勝。レスター大学大学院社会学修士課程修了。2001年、三菱総合研究所に入社。06年に、早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任すると、翌年から2年連続で大学選手権を制覇した。10年、日本ラグビーフットボール協会、初代コーチングディレクター。12年より3期にわたり、U20日本代表ヘッドコーチ、16年には日本代表ヘッドコーチ代行を兼務。14年、企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックスを設立。18年には、一般社団法人スポーツコーチングJapan を立ち上げ、その代表理事も務める。『新版リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』(CCCメディアハウス)など著書多数。
自分の弱さに気づくことは、学びのスタートラインに立つこと
私は大学卒業後すぐに、イギリスに留学していた時期があります。「ラグビー部の主将」というのは、一般的には就職にあたって有利な要素だったかと思いますが、そのようなレッテルで就職先が決まることに、私は魅力を感じませんでした。初めにロンドン大学で人類学を勉強し、その後、レスター大学の大学院で社会学を専攻しました。ふたつの学問領域を通じて、人間や社会について深く考える機会を得て、自分のなかに「軸」をつくれたのはラッキーだったと思います。
特に社会学の知見は、いまの仕事において私の考えの根底を成しています。物事を良し悪し抜きで客観的に見ることを学んだことが、とりわけ大きかったですね。大学院では、「こうあるべきだ」につながるフィロソフィーは一切もたずに、ひたすら客観的に物事を分析していくトレーニングを受けました。
もちろん、留学生活には苦労も伴いました。イギリスでは誰も自分のことなど知らないし、当時の地方都市には、アジア人に対する偏見も残っていました。そのような環境では、素の自分しか勝負できるものがありません。英語も苦手で、たくさん失敗をし、嫌なこともたくさん経験しました。しかし、そんななかで「恥ずかしい」と思う経験をしたことが大きかった。そう思うことは、自分の弱さを認めて、学びのスタートラインに立てることなのだと考えるようになったのです。人が自分を見つめて「スタイル」を確立する過程では、いわば「『恥ずかしい』と思うことを恥ずかしくないと思える」ことが大事だと思っています。
何かを始めるときには、まず自分を見つめる
日本人は、すでに誰かがやったことをより上手にやるのは得意ですが、未知のことにチャレンジするのは概して苦手だと思います。それは良し悪しでも、優劣でもありません。いわば日本の「スタイル」なのです。島国では、大陸よりも「継承」が重んじられます。そんななかでイノベーションが起こりにくいことは、ある意味では当然かもしれません。日本人はそれを嘆くよりも、自分達の特徴に目を向けてもいいように思います。
会社等の組織のレベルでも同じです。どんな組織にも何らかの欠陥があるものですが、それを特徴と捉えて、「組織としてのスタイル」を認識することも大事だと考えています。
そして、ほとんどの人は何かを達成しようとするとき、まず外を見る。そうではなくて、まずは自分をよく見て、自分のスタイルを見つけることから始めてほしいと思っています。よくいわれる「多様性」という言葉にも、揺さぶられないほうがいい。「人と違ったことをやろう」と考えるのは本末転倒です。全員が自然体でいることが先決なのです。多様性というのは、その結果として、自ずと生まれるものだと考えています。
―― 中竹さんが大切にしていること
企業のリーダートレーニングでもスポーツのコーチ育成でもまったく同じなのですが、私は参加者に、「自らが素直に学んでいるか」「選手や部下の成長を信じているか」「成果も失敗も自分の責任として受け止めているか」と、いつも問いかけています。それらをそのまま自分自身にも問いかけ続けています。
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