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多様な意見を取り込む土壌がイノベーションを推進する確かな源泉となる 江田麻季子 氏 インテル株式会社 代表取締役社長多様な意見を取り込む土壌がイノベーションを推進する確かな源泉となる 江田麻季子 氏 インテル株式会社 代表取締役社長

多様な意見を取り込む土壌がイノベーションを推進する確かな源泉となる

半導体メーカーとして世界のIT業界を牽引するインテル。日本法人初の女性社長として脚光を浴びた江田麻季子さんは、ビジネスに勝つためには「ダイバーシティ&インクルージョン」が不可欠だと言う。多様な人材を受容するその姿勢は、自らもグローバルな環境に身を置き、チャレンジを重ねてきた経験に基づく。持ち前の好奇心を武器にキャリアを切り開いてきた江田さんのスピリットは、挑戦を続けることの大切さと勇気を教えてくれる。

    プロフィール
    江田 麻季子(えだ・まきこ)
    1988年、早稲田大学第一文学部卒業。1990年、米国の大学院修了。その後、ペンシルベニア州のトマス・ジェファソン大学病院などでマーケティングに携わる。1997年に日本に帰国し、企業での勤務を経て、2000年インテル株式会社へ入社。マーケティング本部長として、ブランド戦略、マーケティング・キャンペーンやインターネット・マーケティングなどを統括する。2010年からはマーケティング&コンシューマー・セールス担当ディレクターとして、香港を拠点にインテルのアジア太平洋地域のマーケティング活動を指揮する。2013年から現職。

    コミュニケーションは「オープン&ダイレクト」

    アジア勤務時代の部下達と。相談事があると今でも連絡をくれる何ものにも代えがたい宝物だという。

     マーケティングリサーチ・マネージャーとしてインテルでのキャリアをスタートさせたわけですが、アメリカに本社がある企業とはいえ、お客様や市場は日本。挨拶の仕方からプレゼンの方法、ビジネスの段取りに至るまで、非常に気を使ったことを覚えています。最初の社会人経験がアメリカだったので、日本における社会人としてのふるまいを、意識的に学ぼうと心がけました。
     インテルに入社して11年目に、再び海外で働くチャンスがめぐってきました。アジア太平洋地域を統括するマーケティングディレクターとして香港に赴任することになったのです。当時の部下達の出身地は28の国と地域にまたがっていました。さまざまな文化背景をもつ彼らの考え方は実に多種多様です。初めは、ビジネスがうまくいくのかどうか、スタッフと心が通わせられるのかどうか、不安がなかったといえば嘘になります。でも、目的を明確化してスタッフが働きやすい環境を整える、というマネジメントの基本は変わりません。もちろん、日本人同士のようにあうんの呼吸というわけにはいきませんが、会社として目指している方向は同じなのですから、価値観の違いを理解し、相手の立場に立って考えれば、おのずと道は開かれるのだと実感しました。
     特に大切だと感じたのは、彼らの話をしっかり「聞くこと」。じっくり話を聞いてみれば、こちらが理解しにくい彼らの行動や発言にも、何らかの背景があることが分かります。国や文化の違い以上に、個々人が何を大切だと思うかといった価値観の違いも大きい。彼らの声にとことん耳を傾けることで、互いの理解を深めることができました。もちろん、相手にとって話しやすい環境をつくることも大事でしょう。今でも、相談事があると連絡をくれるスタッフがいます。そのつながりは、何ものにも代えがたい宝物だと思っています。
     こうした考え方は、日本法人の社長に就任してからも変わりません。コミュニケーションで心がけているのは「オープン&ダイレクト」。オープンに率直に話してもらえるような機会を数多くつくりたいと思っています。実際に現場でビジネスを突き進めている人たちが、物事の事情を一番よく分かっているもの。彼らの意見がトップに届かない会社は、いずれ退化するといわざるを得ません。もちろん私自身も、自分が把握していることはきちんと話しますし、ネガティブなことも臆さず説明しようと思っています。

    挑戦を続ける原動力はたゆまぬ「好奇心」

    他国の女性管理職と。「各界で奮闘されている方々と意見交換をさせていただくのは、大変刺激になります」と江田さん。

     インテルには今も、アンディ・グローブの考え方が脈々と受け継がれています。リスクを恐れない文化、規律をもってビジネスを推進する風土、結果主義という考え方……。もちろん、時代とともに変化することはありますが、創業者のDNAはしっかりと私達に刻み込まれ、スピード感、ダイナミック感あふれるビジネスを展開し続けています。気がつけば私達の身の回りには情報があふれていますが、インテルはこうした環境づくりにこれまで貢献してきたのだと自負しています。そしてこれからも、時代の動きを読みながら未来を見据えて活動していきたい。それが、社会を良くするため、人々の暮らしを良くするための原動力になるのだと信じています。
     こうした未来を切り開いていくためには、社員一人ひとりの力が大切になってきます。今は「ダイバーシティ&インクルージョン」などといいますが、まさに多様性を受容することで、ビジネスを前に進めるイノベーションが起きるのです。一人でできることは限られています。アイディアをぶつける人がいればいるほどアイディア自体が深化する。社員が多様であればあるほど、ビジネスが成功する可能性は高まるのです。だから、社員達には、社内に仲間をつくり、ネットワークを広げ、大いにアイディアをぶつけ合ってほしいと願っています。社長になって2年半が経ちますが、いま自分がやらなければならないのは、こうしたさまざまな意見が飛び交う文化をつくり、そこから出てきたアイディアを取り入れ、枠を広げていくこと。困難が立ちはだかると、人はどうしても内向きになってしまうものですが、私が挑戦しなければ社員も挑戦できない。そう自分を奮い立たせています。
     振り返ればこれまで、好奇心の赴くままに挑戦を続けてきました。私が挑戦することをやめるのは、この世を去るときでしょうか(笑)。そのパワーの源は何かと聞かれますが、もちろん自家発電しているわけではありません。各界で奮闘されている方々と意見交換をさせていただくことは大変刺激になりますし、社員からエネルギーをもらうこともたくさんあります。自分はまだまだだと思いながら、日々を楽しんでいます。
     いまの若者達は、生まれたときからインターネットが身近にあった世代だからでしょうか、とても知識が豊富で感心します。型にはめて物事を考えないことも素晴らしい。ビジネスや政治の世界に興味をもつ若者も増えてきて、とても頼もしく思っています。ただ反面、何かをやる前にまずは調べて、知りすぎてしまったがために行動に移すことを躊躇するような場面も見受けられます。思い切りのよさは若さの特権。何事にもどんどん挑戦していってほしいですね。

    グローバル人材育成プログラムについて

    IIBCは、国境のみならず、あらゆる境界を越えて世界で活躍する人材を育てたいと考えています。グローバル化やデジタル化で世界がますます複雑化していく時代に大切な「個としての軸」「決断力」「戦略・ビジネスモデル創出力」「異文化理解力」「多様性活用力」「コミュニケーション力」。グローバル人材育成プログラムは、これらを学び、考え、育む機会を、EVENTやARTICLEを通じて提供していきます。

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