Leader's Voice
経営者として、人として、ワクワクする好奇心を大切に
プロフィール
松浦 清(まつうら・きよし)
慶応義塾大学卒業後、大手生命保険会社に入社。その後、米コロンビア大学でMBAを取得し、コンサルティング会社を経て、伊ラグジュアリーブランド等の日本法人を立ち上げる。30代で投資ファンドの社長などを歴任後、2009年にプレミアアンチエイジング株式会社を設立。デュオ ザ クレンジングバームを中心としたDUOブランドのEC販売で急成長し、19年に新ブランドCANADEL(カナデル)、20年にはsitrana(シトラナ)とimmuno(イミュノ)を発売。同年10月に東証マザーズ上場を果たす。現在、中国本土を中心とした海外への展開を推進中。
創業家一族に生まれ、自然体で起業を志す
私は、「DUO」や「CANADEL」を中心とした化粧品ブランドを展開している会社を経営しています。KinKi Kidsさんや米倉涼子さんが出演されているCMを通じて、ご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
2010年に発売開始したDUOの主力商品であるクレンジングバームシリーズは、昨年12月末に、累計出荷数2千万個を突破し、一つのブランドで年間200億円以上の売上を達成いたしました。このようなケースは、大手化粧品メーカーでもめったにありません。しかし、そのようなヒットブランドをつくった私は、化粧品メーカーの出身でも、化粧品開発の専門家でもありませんでした。
私の一家は、代々さまざまな事業を営んできました。そのおかげで、「仕事」というのは、自分で事業を創出するところから始めるものだという考えが培われました。
大学卒業後、就職して社会経験を得たのちに、米コロンビア大学のMBAプログラムに留学しています。ただ、いつか起業すると固く決めていたものの、当時の私は事業の題材は具体的に決めておらず、まして将来、化粧品を売ることになるなど想像もしていませんでした。時代の移り変わりはとても早く、ほんの数年で、世界の様相はガラリと変わってしまいます。だから、早い段階でこの事業をやると限定するより、可能性はオープンにしておいたほうがいい。この考えは間違っていなかったと思います。
起業のキーワードはECのブランドビジネス
MBAを取得して日本に戻ったあとは、いくつかの会社の設立や経営に携わり、実務を経験しました。家業で宝石商を営んでいたこともあり、まずはイタリアのジュエリーブランドの日本法人を立ち上げました。しかし、当時すでにジュエリー市場はシュリンクしつつありましたので、ブランドビジネスをするなら、より成長性のある市場を探さなくてはならないと考えました。
2008年に、世界最大手のテレビ通販会社に入社できたのは、今思えば幸運だったと思います。リーマンショックの直後で、あらゆる業界が低迷するなか、通販業界だけが大きく伸びており、通販市場の将来性を確信しました。実は2003年に一度、ECの会社を立ち上げたことがあったのですが、市場は未熟で時期尚早でした。しかし、今度は違います。2009年の日本では、ネット通販はすっかり社会に定着し、まさに機は熟していました。
業態はECでいくとして、次に考えるべきは商材です。ECでは、顧客の属性や購買履歴など、膨大な顧客情報をデータベース化し、それを精緻に分析してターゲットにアプローチするデータベースマーケティングが重要です。データベースをフルに活用することを考えると、顧客がリピートして購入する商材がよいと考えました。そこで、化粧品に知見のあるビジネスパートナーを開発ディレクターとして迎え、「プレミアアンチエイジング」は化粧品販売の第一歩をスタートすることになりました。
このような経緯から、起業当時の私のキーワードは、「化粧品」ではなく、あくまでもECであり、ブランドビジネスでした。デジタルマーケティングや、自ら企画製造した商材を自社サイトで顧客に販売する、D to C(Direct-to-Consumer)型のビジネスモデルも、早いうちに確立できたと思います。
20代も関心を寄せるアンチエイジング新時代
創業1年で、DUOのザ クレンジングバームは「@cosme」(コスメや美容に関する日本最大級のポータルサイト)のランキングで1位を獲得しました。その後もお客さまの高い支持が続いているのは、商品企画力とマーケティング力に尽きます。
当然のことながらマーケティング力で一時的にヒットしても、商品力が高くないことにはリピート購入してもらえませんので、DUOの商品開発にはとても時間をかけました。その結果、安全で質の高い、顧客ニーズにしっかりと応えられる商品を生み出すことができました。
一方、この商品をベストセラーかつロングセラーに育て上げられたのは、マーケティングの力も大きく寄与していると考えます。ジュエリー会社のブランドビジネスを経験していたこともあり、「通販化粧品のブランド構築」という、新しい概念を盛り込んだ広告を最大限に活用して、DUOのブランドイメージを定着させていきました。
とはいえ、当社が将来の姿として目指しているのは、社名が物語るようにアンチエイジング事業を展開する会社です。現在は化粧品のみの取り扱いですが、化粧品だけでなく、例えばインナービューティやクリニックなど、アンチエイジングをテーマとする事業ポートフォリオを広く組んでいきたいと考えております。人生100年といわれるこれからの時代、アンチエイジングというテーマが廃れる可能性はまずないのではと考えています。
また、今どきのアンチエイジングは、もはや中高年だけをターゲットにするものではありません。今は、20代もアンチエイジングへの関心が非常に高く、その意識の高さには大変驚かされます。DUOのCMも、当初からご出演いただいているKinKi Kidsのお二人に加え、直近のCMには、20代のKing & Princeの岸優太さんを起用し、30代~40代が中心であった顧客のターゲット層を、より若い世代に広げていく取り組みを行っております。
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