Leader's Voice
経営者として、人として、ワクワクする好奇心を大切に
プロフィール
松浦 清(まつうら・きよし)
慶応義塾大学卒業後、大手生命保険会社に入社。その後、米コロンビア大学でMBAを取得し、コンサルティング会社を経て、伊ラグジュアリーブランド等の日本法人を立ち上げる。30代で投資ファンドの社長などを歴任後、2009年にプレミアアンチエイジング株式会社を設立。デュオ ザ クレンジングバームを中心としたDUOブランドのEC販売で急成長し、19年に新ブランドCANADEL(カナデル)、20年にはsitrana(シトラナ)とimmuno(イミュノ)を発売。同年10月に東証マザーズ上場を果たす。現在、中国本土を中心とした海外への展開を推進中。
自身の海外経験が反映された、海外と日本の良さを組み合わせた企業文化
当社の特徴の一つに、少数精鋭であるということが挙げられます。わずか100人ほどの従業員が、一人当たりおよそ年間2億円を売り上げている計算になるのですから、文字通りの少数精鋭です。これを保つために、私たちが徹底しているのが「餅は餅屋」。専門的なことは、その分野が得意な人に任せるということです。会社そのものも、マーケティングと商品企画のコア業務に特化し、それ以外の、製造、物流、コールセンターなどの業務の大部分は外部の専門企業に委託しています。
一緒に仕事をする仲間への厚い信頼がなければ、こうした関係は成り立ちません。当社の企業文化になじみ、互いを信頼し合って仕事を進めていくことができるか。自分自身の目で確かめるために私は今でも必ず、最終面接に立ち会うようにしています。また採用時には、「モチベーション」「人柄」「プロフェッショナル」の3点を必ず見ることにしているのですが、これは自分自身の海外での経験がベースとなっています。
まず「モチベーション」ですが、これは能動性がないと出てきません。MBAのクラスでは、自分を含めた日本人はなかなか発言せず、文化の違いにショックを受けました。能動的な学び方に、私たちは慣れていなかったのです。グローバル社会では、受け身でいては前には進めませんので、モチベーションに直結する能動性は極めて重要であると考えます。
次に「人柄」について。海外の企業は個人主義が中心になりがちですが、私たちは日本の会社として、和の心やチームワークを大切にしています。これは日本人の強みを仕事に生かす要素として重視しています。
最後に、「プロフェッショナル」、つまり専門性についてです。当社のように急成長している企業では、ゼロから人を育てる時間的な余裕はほとんどありません。とにかく即戦力が必要ですので、プロフェッショナルな人材を中途採用し、社内の専門家として仕事を任せています。これはあきらかに世界標準の発想で、一流のプロ揃いだった、MBAコースのクラスメートの姿とも重なります。
このように当社が求める人物像については、グローバルな要素と、日本ならではの要素がミックスしています。私が海外経験から学んだことも、当社の企業カルチャーとしてしっかりと根付いていることを感じます。
知的好奇心がリーダーの二つの目線を育む
リーダーとして私が気をつけているのは、二つの「目線」をもつことです。一つは「物事を俯瞰する目線」。全体を大きく眺め、判断する、経営者としての目線ですね。もう一つは「人に合わせる目線」です。自由で率直な社内コミュニケーションには、個々の社員の立ち位置を理解して、そこに目線を合わせて話すことが大事です。
この二つの目線を育てるのは、「知的好奇心」ではないかと私は思っています。世間の人たちは、どんなことを考えて生きているのだろう。どんな音楽や映画が流行っていて、どんな本が読まれているのだろう。こうした知的好奇心は、その人の視野を広げ、物を見る視点を増やしてくれると考えます。
私は、休日には意識的に外に出て、さまざまな人と会うようにしています。未知の分野の人と話すのは、とても新鮮です。違う視点に気づかされたり、思いがけない発想に出合ったり、いつもよい刺激を受けています。
失敗を糧として、より大きな成果を目指そう
私もこれまで、節目、節目で、つまずいたり、転んだりしてきました。社会人になり、さまざまな仕事に携わるようになってからも、どこか納得いかないと、感じることもありました。だからこそ、もっと満足できる仕事がしたいという強い思いが生まれ、今日まで歩んできています。
何が幸福で何が不幸かは、後になってみないと分からない。「人間万事塞翁が馬」とは、そういう意味のことわざで、私の人生そのものです。失敗したと思っても、その経験を糧に、将来、より大きな成果を上げることもできます。そうやって今の自分がここにいる。プレミアアンチエイジングという会社が大きく育っていることが何よりの証です。
現代の若者は、世の中の役に立つ仕事をしたいといったことを、心から真面目に考えている人が多くいます。その一方で、今の若者は、どこか小さくまとまってしまっているようにも見えます。人生は始まったばかりなのに、早々と自分の限界を決めてはいませんか? チャレンジする前に、あっさりと夢を諦めてはいませんか? 私たちの時代は、今の皆さんより幼稚でしたが、夢をもってどんどん海外に出て行く元気だけはありました。
若い時代の留学経験は、いろいろな国の友と出会い、多様な文化を知るだけでも、世界が大きく広がります。MBAなど、社会人になってからの留学では、自覚や目的がはっきりしていて、キャリアに直結する成果が得られます。留学に限らず、世界に目を向けて、稚拙でもいいから大きい夢を描いてほしいと思います。
この先、私がまた何か新しいビジネスに挑戦するとしたら、この会社を始めたときと同じように、「事業の題材は何でもOK」と言うでしょう。可能性は好奇心から生まれてきます。知っていることをなぞるより、知らないことを新しく掘り下げていくほうが、ずっと面白い。だから私は、どんな分野でも「ワクワクするなあ、楽しいなあ!」と思える仕事が好きなのです。
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